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2021年6月19日 (土)

健康長寿の“賢食”術 (家森幸男著 NHKテキスト)

4月に出張があり、新幹線の中でたまたま聞いたラジオ番組が面白そうで、テキストを買って読みました。私ももうすぐ55歳になりますが、今後は美味しいものを求めるよりも、この本に書いてある、身体によいものを積極的に摂って、健康で暮らしていきたいと思います。

『・・・魚に多い硫黄を含むアミノ酸のタウリンの摂取量に差があることを発見できました。タウリンが脳卒中予防に大きな役割を果たしていたのです。

・・・和食のような塩分の多い食事を摂ると血圧が上がるだけでなく血栓も起こりやすくなる、脂肪の多い欧米タイプの食事だとさらに血栓が起りやすくなる、ということがわかったのです。

・・・焼いたり茹でたり、蒸し焼きにするという料理法は、コレストロールや脂肪分の摂取量を抑える肉の食べ方です。脂肪の抜けた肉に、果物で作った酸っぱいツケマリをつけて美味しく食べるのが習慣だったのです。

・・・ジャワ村が日本と大きく違う点は、野菜や果物の豊富な摂取量です。野菜、果物に多いカリウムには、食塩のナトリウムを尿に追い出す作用もあり、塩分過剰で脳卒中が多い日本人に比べて、明らかにナト/カリ比(ナトリウムのカリウムに対する比率)が低いことがわかりました。・・脂肪の多い肉を、焼いたり茹でたり、蒸し焼きにしてコレステロールや脂肪を少なくする「賢い食べ方」をしていたからだと考えられます。

・・・高齢者は一般的にはワクチンを打っても抗体価が上がりにくいのですが、・・カスピ海ヨーグルト群では、より強い抗体価の上昇が確認できました。・・汚―グルトと一緒に食べ物を口にすると、血糖値がゆっくり上昇する

・・・ブドウには大豆のイソフラボンと同様、女性ホルモン様の作用がある・・コーカサスの長寿の原因として、①豊富な野菜・果物の摂取、②脂肪の少ない肉の摂取、③魚の常食、④ヨーグルトなど乳製品の習慣的摂取、⑤ブドウ成分の摂取、が考えられました。

・・・バルモア教授の研究は、社会心理学的な側面から、長寿の具体的な要因を初めて明らかにするという貴重なものでした。それによると、男性では、①健康の自己評価で、自分が健康と思えること ②仕事に満足していること ③いわゆる、“生活の知恵”で、問題解決の能力があること 女性では、①健康上の満足があること ②結婚してよかったと思えること ③身体の機能のよいこと のそれぞれ3つの要因が揃うと、男性ではおよそ16年、女性では23年も平均余命より長く生きられるという予測が成立するということでした。

・・・回教徒の女性は、習慣的にほとんど自宅で暮らす運動量の少ない生活を送っており、甘いものの間食も多かった

・・・貧しいながらもバランスの良い栄養摂取と、日常の労働のおかげで、生活習慣病が少ない・・マサイの若者は戦士になる前に、二人組で二年ほど、武者修行のように世の中を見て歩く伝統があるらしいのです。

・・・マサイは当時、なんと食塩を持っていなかったのです。主に摂っているミルクの中のナトリウムは、食塩に換算して、一日たった2.5グラムでした。食塩を平均3グラム以下しか摂っていないマサイの血圧は、本当に低いことが証明されました。

・・・マサイがいつも持ち歩いている瓢箪には、牛のミルクを発酵させたヨーグルトが入っています。・・毎日、4~5リットルぐらいのヨーグルトを飲んでいる・・なぜヨーグルトが重要かというと、血管の壁の細胞の中のナトリウムを外に出してカリウムを取り入れる、このポンプの働きを助けているのが、ヨーグルトに多く含まれているマグネシウムだからです。ポンプが上手く働けば、ナトリウムが細胞の中に溜まらないので、血圧も上がりません。

・・・マサイは暑いところに住んでいますが、熱中症にもかかりません。なぜならば熱中症は血中の水分が失われて起こりますが、実はこのポンプは血液からいったん尿として出てしまった水分を再び腎臓で血液の中に汲み戻すためにも働くからです。・・朝一番の牛のミルクの中には、前日に食べた草のビタミンCがたくさん入っている。そして血中には鉄分も多い。これは女性にとって大変大事な栄養素なので、午前中はまず、女性、そして発育盛りの子どもたちが飲むのです。

・・・脂肪の摂り過ぎは何が問題なのでしょうか。脂肪は腸から吸収されるとき、リンパ液に乗って血液に入ります。そして血管に脂肪が沈着して動脈硬化を起こします。これは塩分摂取が多いと、さらに影響が大きくなる。なぜなら、塩分が多いとリンパ液の量が増えて、血液の中に入る脂肪がどんどん血管に沈着するからです。

・・・鳥葬にされることが多いようですが、鷲に食べてもらうために、鳥葬台という大きな石の上で、遺体は切り刻まれます。鷲と共に天に戻る、という思想なのです。

・・・日本や地中海など魚を多く摂る地域では、心筋梗塞の死亡率が低い

・・・魚から栄養を摂れば血液が下がり、おそらく高コレステロール血症も抑えられるだろうことが推測できました。

・・・尿素は、水となじみやすく皮膚の保湿剤として使われますが、腎臓では水と共に食塩の中のナトリウムを尿に出す作用もあるので、塩の害をおさえる役目も果たします。

・・・同じ畑にトウモロコシと大豆を植える“混栽”です。大豆には根瘤バクテリアがおり、空中窒素を固定するので、肥料を自ら作っているようなものです。まず大豆を収穫し、収穫後の大豆の茎や葉は畑に戻すのですが、それらが肥料にもなるという循環型の農耕です。

・・・イソフラボンは、分子構造も女性ホルモンとよく似ており、血圧の上昇を抑える効果がある

・・・心筋梗塞の死亡率が低いと、平均寿命は長くなりますので、現在の日本人の、世界でトップクラスの平均寿命の長さは、大豆食に支えられていると推定できます。

・・・胃癌が少ないのは、食塩の摂取が少ないことと関係します。私たちの世界研究からも、食塩の摂取が多いと胃癌が増えることがわかっていました。・・過剰摂取により胃の粘膜が萎縮し、委縮性胃炎が起こって胃の塩酸分泌が減ると、ピロリ菌がはびこり、胃潰瘍が癌化するからだと考えられます。

・・・骨密度の高い人では尿中のイソフラボンが多く、低い人では少ないという結果になりました。・・豆腐とゴーヤのチャンプル料理は、まさにイソフラボンとゴーヤの抗酸化栄養素という最良の組み合わせです。女性ホルモン様の作用のあるイソフラボンは、骨を壊す破骨細胞の活動を抑え、骨からカルシウムが抜け出るのを防ぎ、骨を丈夫にする効果があります。・・心筋梗塞や乳がん、前立腺癌を予防するのに十分な量は、1日約60グラム程度の大豆からとれるイソフラボン量で、60~70グラム、一般的な納豆のパックなら、1.5パック程度です。

・・・米国の食品医療局(FDA)は、1999年、大豆たんぱく質を1日25グラム摂ると、心筋梗塞の原因となる動脈硬化の予防に効果があるとして、大豆たんぱくの健康表示を承認しました。

・・・ブドウには大豆のイソフラボンと同様に女性ホルモンの作用を持つ、レスベラトロールが多く含まれます。

・・・マグネシウムの摂取が多いと肥満も高コレステロール血症も高血圧も少なく、長寿が期待できることがわかりました。

・・・ウルグイ族が長寿である要因をまとめてみましょう。①野菜、果実が豊富な食生活 ②毎日のように飲む発酵乳、酸乳 ③多くの野菜、果物を入れて煮込み、焼肉と共に食べる主食・ボロ―(炊き込みごはん) ④マグネシウム豊富なカレーズの水

・・・この村は、かつて世界三大長寿地域を紹介して有名になったハーバード大学のアレキサンダー・リーフ博士も訪れました。三大長寿地域には、ほかにコーカサスとフンザ(パキスタン)が挙げられていました。

・・・コレステロール値は私たちの調査では、200mg/㎗を超えると心筋梗塞の死亡率が増え、170mg/㎗未満と低すぎても脳卒中による死亡率が増えることがわかっています。

・・・移住者が増え、肉の消費量が増えると、ラードが容易に手に入るため、これを使ってパンを作るという習慣が始まっていました。さらにそのパンにバターをつけるので、塩分と脂肪の摂取が多くなり、血圧や血清コレステロールが上がったのではないかと思います。・・アンデスの豊かな恵みを生かした、イモやトウモロコシを主食とするような素朴な食生活こそが健康長寿を支えていた

・・・脂肪を食べて美味しいと満足すると、脳波より多くの脂肪を求め、摂取出来ないと満足感が得られなくなります。「足ると知る」という正常な脳の働きが失われてしまうからです。いかにして「足るを知る」脳の状態を保つか、そのためにはどのような食生活がよいのか。これは、世界の長寿地域の崩壊を目の当たりにした私たちが学ばねばならない、最大の課題なのです。

・・・ここに暮らす方々は週2回は魚を食べ、血液検査では魚由来のDHA(ドコサヘキサエン酸)などのオメガ3系多価不飽和脂肪酸が、全脂肪酸の6%近くありました。脂肪酸は体内の細胞の膜などをつくります。この数値が6%を超えると、その集団では心筋梗塞などの死亡率が低いことが、私たちの世界調査から分かっています。

・・・私自身が42日間、毎日5グラムのワカメを食べ続けることにしました。結果は明らかでした。外国で研究することが多く、高脂肪食を摂る機会が多いせいか、コレステロール値が258mg/㎗と高くなっていたのが、184㎎/㎗まで下がることがわかりました。

・・・長寿は遺伝よりも環境の影響が大きい

・・・紫外線を豊富に浴びた房は、ブドウが紫外線から自らを守るために作り出すレスベトロール含有量がより多いとのことでした。

・・・ポリネシアの人々は、タロイモの葉に肉や野菜を包み、たき火の下に埋めて蒸し焼きにし、調味料などは加えずに自然の味を楽しんでいました。・・この自然の調理法では、塩分がなくても野菜やイモの自然の甘みが楽しめ、肉はいつも脂肪を落として食べられます。

・・・日本の高齢者は、一般的に野菜などからの食物戦理の摂取が少なく、毎日の快便がないため、食が細くなりがちです。

・・・ハワイの日系人でとりわけ印象に残ったのは、ピーナツを茹でて食べる習慣でした。・・抗酸化力の強い渋皮ごと茹でて、そのまま食べる習慣があったのです。

・・・認知症を防ぐために積極的にした方がよいと勧められる3条件は、よく学び、よく人と交わり、よく身体を動かすことといわれています。

・・・大豆にはこのようにイソフラボンが肝臓での悪玉LDLコレストロールの処理を高めるほか、大豆たんぱくが胆汁酸と結合しやすく、胆汁酸がコレステロールを吸着して血液中にコレステロールが増えるのを抑えるので、血中コレステロールが下がると考えられています。

・・・日本人に不足していたタンパク質を、日本の伝統食である大豆や魚から摂取すると、脳卒中が予防できそうだということがわかってきました。

・・・心筋梗塞は女性ホルモンによって低下する・・魚についてですが、タウリンは血圧を下げ、コレステロール値も下げる

・・・和食の特色は、海の幸である魚と、山の恵みであるナッツ類の仲間ともいえる、日本では最もよく食べられている大豆とを、バランスよく摂ることにあるとわかりました。・・日本人の世界一の平均寿命は、大豆と魚が支えていると言ってよいと思います。

・・・大豆の摂取の多い人では、血糖値が低く、血糖値を下げる効果のあるインスリンも効きやすく糖尿病になりにくい方々が多いことがわかりました。

・・・多く魚を食べている人は少ない人と比べると、動脈硬化を防ぐ善玉のHDLコレステロールが有意に高く、動脈硬化の予防には魚の摂取が勧められることがわかりました。

・・・神戸は多くの外国人が明治の初めから暮らした地域で、六甲山にはブドウ園があり、伝統的にワインがつくられてきました。

・・・人の味覚は、いったん減塩に慣れると塩味には敏感になるようです。

・・・脳卒中は、寝たきりや認知症につながるリスクも高く、健康寿命を平均寿命より10年も短くする主な原因になっている

・・・栄養学的に見ると、タウリンとマグネシウムは人類進化の過程で最も長く付き合ってきた栄養素です。

・・・「まごわやさしいヨ(孫は優しいよ)」の食べ方です。すなわち「ま」は豆、「ご」はごまなどの種実類、「わ」はわかめなどの海藻、「や」は野菜、「さ」は魚、「し」はシイタケなどのキノコ類、「い」は芋類、「ヨ」はヨーグルトなど塩の入らない乳製品です。これらを賢く食べれば、元気に暮らせるのです。

・・・タウリンとマグネシウムは、昆虫食でも得られます。

・・・香港には中国本土と同様「薬食同源」、つまり「病気の治療も普段の食事も、命を養い健康を維持するためのもので、源は同じ」という考え方があります。

・・・まず病気にならないようにするために、「食」の力、栄養を活用するべきです。・・地域薬局に、地域の人々の栄養のセルフチェック支援の担い手としてサポートをしていただきたいと考えています。』

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