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2021年3月31日 (水)

リーダーを目指す人の心得 (コリン・パウエル/トニー・コルツ著 井口耕二訳 飛鳥新社)

菅総理の愛読書ということで読み始め、ずいぶん前に読み終えたのですが、書き残したい部分が多くて掲示が遅くなってしまいました。菅総理と同様に何度も読み返したい本です。

『・・・こうなる場合もあるし、ならない場合もある。どちらでもいいだろう。これは心構えの問題であって予測ではないからだ。私は、状況がどれほど厳しい時も自信を失わず、楽観的な姿勢を保つよう心掛けてきた。
・・・誰でも怒る。怒りは当たり前でまっとうな感情だ。・・ただ、怒ったままはよくないと私は思う。
・・・私は、難しい判断を迫られると必ず、状況の評価から入る。・・これが軍における標準的な手続きだからだ。その上で、事実に基づく直感を信じて決断し、間違いなく実行する。自分が選んだ選択肢にありったけの力とエネルギーをつぎ込むのだ。あとは、深く息を吸ってうまくいくように希望しつつ待つ
・・・有名なこのマザーグースは、ごく小さな問題が重大事を引き起こす様をうたったものだ。最終的な成否を左右するのは、たくさんの小さなことだ。リーダーは小さなことまで感じられなければならない―――小さなことが起こる組織の最深部がどうなっているのかまで感じられなければならない。
・・・リーダーは、報告書や幹部の言葉だけでなく、現場の本当の姿を知らなければならないのだ。
・・・大切なのは気持ちを表す行動だ。勲章やストップオプション、昇進、ボーナス、昇給なども悪くない。だが、直接触れなければ部下の心を動かすことはできない。電子メールをばらまくようなやり方ではなく、優しい一言をかける、背中をぽんと叩く、「よくやった」とほめるといったことを一対一でしなければならない。
・・・功績は皆で分け合い、非難はひとりで背負う。そして、おかしくなった理由を探し、そっと直す。「自分の行為の原因を自分以外に求めたとき、それは理由ではなく言い訳になる」―――深刻な問題を抱えた子供たちの学校を運営している心理療法士の言葉だ。
・・・私は、「冷静ゾーン」を作り、あわてず急ぐように心掛けている。冷静ゾーンとは、感情的な領域の一部で、私が常に保とうと心掛けている部分だ。冷静沈着であれば秩序が維持される。可能性をきちんと全部検討することができる。秩序が乱れることがあっても立て直しがきく。さらには、怒鳴り合いをせずにすむ。
・・・「戦いの熱気」に包まれている場所では、冷静さと同じように親切心も部下の安心と信頼につながる。親切心は、尊敬しあうという形で自分と他人をつないでくれる。
・・・目的とはビジョンの終着点である。
・・・「我々の仕事は、明日の朝、このすばらしいビルに世界各地から多くの人が訪れたとき、ビルがピカピカに光るほどきれいで美しい状態であるようにすることです」ゴミ袋を引きずるという仕事ではあるが、作業員はその目的をきちんと理解しているのだ。だから、自分はゴミの運搬人に過ぎないなどとは思わない。自分たちがしているのは欠くことのできない仕事だとわかっており、その目的は、80階も上にいるビル経営陣の目的と一体化している。・・チーム全員がその目的を信じて仕事に突き進まなければ、経営陣の目的が達成されることはない。・・こまごました仕事の向こう側に自分たちの目的があると理解させるのだ。
・・・いい部隊は、高い水準を満足しようと常に頑張っている。
・・・恐れに対する準備を整え、直面したら恐れをコントロールしよう。恐れにコントロールされてはならない。恐れにコントロールされる人物にリーダーの資格はない。
・・・大昔から兵士というものがそうであったように。ましてリーダーは、恐れているそぶりを見せてもいけない。恐れにコントロールされるわけにはいかないのだ。・・否定の鎧なら身にまとうのも簡単だ・・・しかも、正しい場合もある。彼らが言うようなことが現実という場合もあるのだ。もちろん、逆であることの方が多い。反対ばかりする人の言葉は様々な意見のひとつとして参考にとどめるべきだ。耳を傾けるべき人から意見を聞き、最後は、恐れをおさえて直感に従うのである。
・・・「ベストを尽くせ。ベストさえ尽くせば結果は問わない。だが、ベストを尽くさないのはいかん」―――それが両親の方針だった。
・・・上司に対してベストを尽くすとは、自分に対する上司の望みを必ず歓迎したり受け入れたりすることとは異なる。上司と自分で優先順位が大きく異なる場合もあるからだ。・・求められた仕事をできるかぎり早く、きっちりとすませるように心掛ける。早く満足してもらえば、上官からこうるさく言われることもなくなり、自分が優先したい仕事ができるようになるからだ。まず、王が求めるものを献上すべしということだ。
・・・私はいつも、プロ意識にあふれた最高水準の職場環境にしようと心掛けてきた。どうしてもやらなければならない仕事があるときは、ぶっ通しで働くことを部下に要求する。だが、そこまでの必要がないときは普通の時間で仕事をやめ、まともな時間に帰宅して子供と遊ぶ、家族や友人との時間を楽しむ、小説を読む、仕事を忘れる、いろいろなことを夢想して楽しむ、リフレッシュするなどすべきだと思う。・・給与は仕事の質に対して払われるもので、仕事時間に対して払われるものではないはずだ。
・・・私はいつもひたむきに働いてきたし、部下にもそういう働き方を期待してきた。しかし、仕事のための仕事は作らないようにしてきたつもりだ。
・・・私は、若い陸軍士官が必ず教えられる戒めを忘れないようにしている―――「歩けるなら走るな。座れるなら立つな。横になれるなら座るな。眠れるなら起きているな」
・・・「ついでや礼儀として親切にするのではだめ。心の底からの強い想いをもって親切にしなさい。見返りは求めないこと。親切とは、好意的な態度をとるということだけのことではない。親切とは、敬意と気遣いをされるべき人間なのだと相手を認めることなのだ。
・・・組織に属する人は一人ひとりに価値があり、その価値を認められたいと思っている―――それだけのことだ。人間というのは、承認と励ましを必要とする。毎晩、私の執務室を掃除してくれる人は、大統領や将軍、政府閣僚と同じ人間である。
・・・親切な人間といくじなしや軟弱者とは違う。親切とは弱さを示すものではなく、自信を示すものだ。親切で思いやりがあると皆に思われていれば、厳しい決断をしても受けいれてもらいやすい。なぜそういうことをしているのか、理解してもらえるからだ。
・・・問題は生きているだけでもいろいろと起きるし、責任ある立場になれほど増えもする。問題に遭遇したら、じっとこらえ、また動き出す。とらえられてはならない。問題解決こそリーダーがすることだと考え、私は生きてきた。問題を解決しなくなったら、あるいは、問題にきちんと対処できなくなったら、もう人の上には立てなくなったということだろう。・・部下にも、問題解決の姿勢が浸透するよう努力すべきだ。
・・・問題は解決しなければならない。管理ではだめなのだ。隠してもだめ、小さく見せかけてもだめ、迂回してもだめ、やわらげてもだめ、他人のせいにしてもだめである。実効のある修正をおこなわなければならない。兵士をごまかすことはできない。・・いい部下は、リーダーに気配りされていると思えばいい仕事もするし、リーダーを大事にもしてくれる。
・・・最近の国務長官は、他国のトップや高官と会談するために飛び回っている時間が長すぎる。国務長官は外交政策の助言を大統領に与えるのが一番の仕事であり、移動大使のトップではない。・・もちろん、必要な場合、短期的にワシントンを離れることにはなんの問題もない。ただ、不在はなるべく短くすべきだし、他の方法がとれる場合には不在にすべきではない。
・・・「指揮官は戦場のどこにいるべきか?」模範解答は次のとおり。「影響力が大きくなるところで、判断が行われるところのちかく」―――言い換えると、自分の成否を分ける場所である。・・たとえば、リーダーの姿が見られる、その声が聞けるというのは部下にとって大事なので、経営幹部は工場の現場までこまめに足を運ぶべきである。ただし、長居をしてはならない。
・・・組織を構成する人を球体として表してみよう。ピラミッド最下層に並ぶ球はごく小さいが、成長する力を持っている。ピラミッド外は、組織が生きる環境である。・・組織のリーダーになる方法はふたつにひとつしかない。ピラミッドの底辺からたたきあげてくるか、外から迎えられるかだ。軍隊では、ピラミッド内のたたき上げしか道がない。・・階級が上がれば上がるほど、外の世界に対応し、協力して物事を進めなければならなくなる・・環境の理解と対応ができないリーダーはピラミッドの壁を越えて成長することができず、ピラミッド内の階層も上にゆけなくなる。・・頂点に立つと、時間の殆どを外部環境への対応に振り向けることになる。同盟国との関係、国際組織との協力、ホワイトハウスなどだ。・・ピラミッドの頂点は、必ずしも居心地がいい場所ではない。矛盾する要求や圧力が入り乱れ、胃が痛くなるような決断をしなければならない。間違えれば大変なことになる。目立つため、標的にされやすい。・・基本的に外を向いて仕事をしなければならないわけだが、同時に、ピラミッドの最下層のそのまた隅っこまで視野に入れておかなければならないのだ。
・・・人間の成功とは階級や役職で決まるものではなく、どれほどの貢献をしているのかによって決まるものだと私は思う。
・・・人を昇進させるにあたり実績も大事だが、少なくともそれと同じくらい重要なのが、1段階上で首尾を上げる能力があるか否かである。これは難しい判断だが、経験を積み、時間をかければ、多少なりともいい判断が行える。
・・・これは軍でも民間でも同じだが、潜在能力の評価は主観的になりがちで、逸話的な表現が使われることさえある。
・・・最初に、どのようなポジションにおいても安定して優れた実績を残している者を探す。勉強を続けて知的に成長する者、次のレベルの準備をしている者、今の仕事が限界でない者を探す。野心でぎらついているのとは違う意味で意欲的な者だ。・・性格や倫理観がしっかりしている者、度胸が据わっている者、誠実で無私の心を持っている者、そして、上のレベルに上がってもそのままでいられる者を探す。・・同輩から尊敬や信任を寄せられている者を探す。昇進させれば、同輩が部下になるのだから。・・次の段階に対応できない人は意外に多い。・・彼らは現状に満足しており、それ以上の責任は担い切れない。その責任に見合う行動をとる勇気は自分にはないとわかっているのだ。そのような人物を昇任させても悲惨な結果しか生まれない。逆に、潜在能力に気付けない場合もある。組織にはさまざまな種類の幹部ポストがあり、あるポストで能力が発揮できない人物がほかのポストでは目の覚めるような成果をあげることもある。
・・・新しい組織に着任したら、信じてはならない確たる証拠がない限り、まずは、そこにいる人を信じるべきだと私は考えている。こちらが信頼すれば、相手も信頼を返してくれる。互いの信頼は時間がたつほど深くなっていく。・・部下はリーダーを信頼するがゆえについてくるのだ。リーダーを信じているから、自分たちがしなければならないことを信じているからついてくるのだ。だからリーダーは、常に、チーム内に信頼関係を築くことを念頭に動かなければならない。
・・・服従だけでも仕事は済ませられるかもしれないが、やる気を引き出すのは難しいだろう。服従から仕事に対する誇りやいい仕事をしようという気概が生まれるとは考えにくい。このような感情が生まれるには、優れたチームの一員だと部下が感じる必要がある。そしてそのためには、チームメンバーがリーダーを尊敬していなければならないし、また、自分たちがリーダーに尊敬されているとも感じていなければならない。・・部下が求めるのは無私なリーダーであって、利己的なリーダーではない。またリーダーたるもの無視でなければならず、利己的であってはならない。
・・・好きだという思いは尊敬から生まれるべきもので、リーダーが部下におもねったり部下の友達のようになろうとするのは間違っている。部下は、甘い上司がいいと思っているわけではないのだ。そこには越えられない一線がなければならない。・・部下と親睦を深めるのはいいが、その際、友達づき合いにならないようにリーダーは気を付けなければならない。奇策であることはいいが、慣れ合ってはならない。部下が自由と勝手をはき違えるようなことは避けなければならない。
・・・最後の一言は忘れられない。「・・恥をかかせるようなことはしません」これなら、隊の運営に問題はないと思ってよさそうだ。・・リーダーにとってこれ以上の誉め言葉はない。最高の成績表だ。
・・・両親が互いに尊敬し、愛に満ちた家庭を築けば、子どもはその環境の価値を理解し、自分が大人になったとき、同じようにしようとするものだ。
・・・なかでも大切なのは、自分がなにかを実現しても、あるいは実現できずに終わっても、その責任は、最終的に自分にあると教えることだ。人生には障害がつきもので、それを乗り越えることも人生なのだから。
・・・ホセはこう答えた。「しくじるなどあり得ない状況だったからです。皆、私を後押ししてくれました。失敗して倒れたら、助け起こしてくれます。信じてもくれました。皆が私についてそのように思うなら、私も、自分について同じように感じるしかありません。こうして、私は家族の歴史を変えることに成功したのです」
・・・「その場で修正しろ」・・小さいまちがいに見て見ぬふりをしたり見落としたりすると、さらに大きな間違いも容認する環境が生まれ、最後は破滅的な間違いにつながってしまう。・・基準が満たされていないとき、それを指摘する倫理的な勇気をリーダーに与えられる・・ミスをしたのにとがめられなかった部下は、リーダーの能力を見くびり、リーダーを侮るようになる。・・優れた基準と尊敬し合う文化は組織内を上から下へ、下から上へと広がるものなのだ。・・説明を添え、明快かつ公正な形で間違いを正せば、相手も怒ったり恨んだりすることなくわかってくれる。・・小さな間違いや不備をその場で直す気骨のないリーダーが、大きなことに対処できる気骨を持てるはずがないだろう。
・・・優れた管理者は優れたリーダーだし、優れたリーダーは優れた管理者である。ただ、偉大なリーダーには、管理者にないなにかがある。優れた管理者は、チームの設計能力を100%引き出す。偉大なリーダーはその先をめざす。・・偉大なリーダーは部下のやる気を引き出すだけでなく、奮い立たせもする。そのようなリーダーのもとで部下は高ぶり、血が騒ぐのだ。
・・・そういう職場のリーダーは弱い者いじめで自信のなさをごまかしているだけで、叱りつけることがリーダーシップだと思い違いをしているのだろう。そのようなやり方で部下の力を引き出せたリーダーなど、私が知る範囲にはいない。「リーダーとは?」―――よく聞かれる質問だ。私の答えはシンプルだ。―――「責任をもって受け持つ勇気のある人物、人々が反応し、この人ならばついていこうと思える人物」
・・・外交官は情報がなければ生きられない。情報は外交世界の通貨だからだ。
・・・兵士には仕事に必要な道具を与えなければならない。それさえしてもらえずに兵士がリーダーを信じるはずもないし、リーダーが掲げる任務や目標に真剣に取り組むはずもない。
・・・組織全体の考え方を変えたければ、トップが率先して変わらなければならない。
・・・事実とは検証された情報で、客観的な現実として提示されたものをいう。・・検証が変化すれば事実も変化する。話の一部に過ぎず、全体ではなかったりもする。検証した結果、情報を持たない事実だとわかる場合もある。検証されているように思われた事実が冷たい日の光にさらされてふっと消える瞬間を、私は、何度も経験している。
・・・総合分析とは細いストロー一本に頼るのではなく、さまざまな情報源を活用して事実を集める仕事だ。
・・・私は、次に示す4ヵ条のルールを設定した。・・ ・わかっていることを言え。 ・わかっていないことを言え。 ・その上で、どう考えるのかを言え。 ・この3つを常に区別しろ。
・・・こういう指摘には勇気がいる。特に、上司が信じていることや一般的な見方に反論する場合、あるいは上から答えを求められていてわからないと言いにくい場合にはそうだ。・・上司に意見する勇気は必要だ。リーダーは、部下がそういう勇気を持つようにしなければならない。
・・・その少し後、廊下でブッチと出会った。並んで歩きながら、なぐさめの言葉をかけたところ、「いいんだ。楽しい話をするために給料をもらってるんじゃないんだから」と、ごく当たり前のように言われた。この言葉は忘れられない。なお、ブッチは、最終的に四つ星の将軍まで上りつめた。
・・・「問題が起きたと知ったら、すぐ私に知らせろ」とスタッフに必ず求める。ワインと違い、悪いニュースが時間とともによくなることはないからだ。問題があると知ることも大事だし、解決策を探すプロセスを始めることはもっと大事だ。・・早い段階で通知されれば、皆で協力し、さまざまな視点から問題の解決を図ることが可能で、手遅れにならずにすむ。
・・・第一報を受けたら、まず、深呼吸を1回する。まずはこれが一番だと経験から思う。
・・・1.彼らは質問を選べる。君は答えを選べる。 2.答えたくない質問には答えなくていい。 3.もちろん、ウソやごまかしはいけない。だが同時に、あまりに率直なのもあけすけなのもよくない。 4.未来に関する仮定の質問には答えないこと 5.上司へ内々に提出した自分の意見を語らないこと 6.読者や視聴者に受け取って欲しいメッセージになるように答えること。本当の聞き手は質問者ではない 7.彼らは彼らの仕事をしている。君は君の仕事をしている。ただし、リスクを負っているのは君だけだ。 8.未来について予測や憶測を語らないこと 9.そこを引用してほしくてわざと使うのでない限り、スラングを使ったり気の利いたジョークを語ったりしないこと 10.内輪の恥をさらさないこと 11.賛成できない前提を含む質問には答えないこと 12.答えたくない質問に無理に答えたり、そういう質問に答えなければならない状況に追い込まれないこと 13.罠にはまった
と思ったら、あいまいな言葉をもぐもつぶやくこと 14.咳払いや足の踏み替えをしないこと 15.答えた後、追いうちの質問が来るのはトラブルを意味する。―――右に旋回する、推力を挙げる、高度をとる、緊急脱出するなどしろ・・取材は30分で充分である。・・食事をしながら、報道を前提とした取材を受けないこと・・何をしゃべろうかと考えて間を空けないこと。すぐにしゃべり始め、しゃべりながら考える。しゃべることを思いつかなければ、質問をくりかえせばいい。
・・・会議は、目の前の問題を深く掘り下げるものにしたいと思う。そのためには、問題の皮をはいで中心にいたるような質問を誰でも自由にできる雰囲気が必要だ。
・・・通信文はできるかぎり良いものに仕上げろ。人間らしいものでなければならない。いかにも官僚が書きましたというような、上げ底でも中身もなく膨らんでいるだけ、形容詞がずらずらと並ぶ大袈裟な戯言にしないこと。話しかけているように書くこと。また一行一行注意深く読まなければならない。
・・・指揮官が最初に考えるのが「実行開始まで、どれだけの時間があるのか」だ。その3分の1を分析と意思決定に使う。残る3分の2は、部下が分析や計画策定に使う時間だ。自分が使える時間は徹底的に使うこと。拙速な決断をしてはならない。
・・・どのような戦いにも、だ。部下に準備を整えさせる―――それが上に立つ者の務めだ・・優勝に向けて努力できるように基準をはっきりさせ、毎月行うとよい。競技会を行わないと、ぼんやりとたるんだ生活になってしまう―――精神的にも肉体的にも。
・・・まず、解決策を検討する場合、何段階か先の副次効果までよく検討しなければならない。また、これで解決できると思う対策に到達したときには、それが本当に解決策なのか、それとも、将来に禍根を残す希望的観測なのか、自問自答しなければならない。
・・・軍曹を身近に置いておけ、だ。つまり、体験から現地のことを熟知しており、ご大層な理論に汚染されていない人間を身の回りに置くのだ。
・・・これを我々は「30日過ぎればシーツは君のものだ」と表現した。31日に目からあと、食い違いはすべて新任指揮官の責任になるのだ。
・・・このとき活用し、成功の原動力になったツールが、事後に検討会をおこなうアフターアクションレビュー(AAR)という手法である。・・AARが優れているのは、このプロセスが訓練であって評価ではないからだ。・・一番大事なのは任務である。・・検討の目的はただひとつ―――自分たちのパフォーマンスを高めることだ。・・優れた成果をあげている組織は、いずれも、このような評価が必要だと理解している。この鏡を見つめる胆力が上層部にない組織もたくさんある。・・リーダーたるもの、問題を埋めて隠すことがあってはならない。いつか必ず、地上によみがえってくるからだ。・・AARの目的は、関係者を同じテーブルに集めて戦闘を振り返り、なにがまずかったのかなにがよかったのかを学び、もっとうまくやるにはどういう訓練をしたらいいのかを検討することだ。AARからリーダーシップや人事の問題が浮かび上がった場合、通常は、内々のうちに修正する。
・・・トップのリーダーたるもの、組織のピラミッドから外に踏み出し、輝く都市の一番高い丘の上から広い範囲を見渡さなければならないと身をもって示してくださったのもレーガン大統領だった。集団の中で、我々よりも常に一段高い位置におられたのだ。
・・・「准将なら5分で補充できる。だが、馬100頭の補充は難しい」 私は、准将に昇任した日、この言葉が刻まれた額を友人にもらった。・・リーダーとしての私がしなければならない仕事は、馬の世話をすること、馬の力を最大限に引き出すこと、そして、私が望む方向にすべての馬が引くようにすることだ。もうひとつ、私の後に准将へ昇任し、私の後任になってくれる仲間を用意しておくことも大切だ。
・・・必要な間引きをおこなわないと、優れた部下もたるんでゆくのが普通だ。逆に、間引きをきちんとおこなうと、チームを覆っていた暗雲が晴れる。・・能力の低い部下に合わせて組織を再編するなどあってはならない。再訓練するか、異動させるか、あるいは、首にするか、だ。そのほうが、結局は本人のためでもある。もちろん、チームにとっては、短期的にもそのほうがいい。
・・・ただただ一生懸命働き、いつ降りるべきかの決定は陸軍に任せるのだ。どのくらいまで昇進するのか、陸軍はなにも約束してくれない。「仕事に精を出していれば昇進する。終着駅に着いたら教えてやるよ」というわけだ。
・・・必ず、無私の心で尽くすこと。自分本位で仕事をしてはならない。そして、退職記念の金時計やプレートは、にっこりと感謝の心で受け取り、放り出される前にみずから列車を降りる。
・・・重要なのは上首尾な結果を得ることであり、相手や敵をどれほど徹底的にたたけるかではない。「軍事紛争には決定的戦力をもってあたるべし」というのが私の基本的な考え方だ。
・・・パウエル・ドクトリンの基礎には、戦争は避けるべきという前提がある。政治的手段から外交的手段、経済的手段、金融的手段など、あらゆる手段を講じて問題を解決し、大統領の政治目的を達成すべく努力をする。同時に、外交の背後には軍事力が存在し、外交交渉の終点から先は軍事力による対応が始まると相手に理解させておく。外交と軍事の間に明確な区別はない。軍事力投入をちらつかせないと、外交の効果が上がらない場合もある。・・しかし、軍事力意外に政治目的を達成する方法がないと大統領が判断した場合には、軍事力を決定的なやり方で投入しなければならない。政治目的がはっきりしていなければ、必要な戦力も分からないわけだ。どの軍事力をどのように投入するのかは、作戦全体を最初から最後までよくよく検討して判断しなければならない。・・作戦を開始したら、その状況を米国民やその代表者、そして世界にも説明しなければならない。・・後手に回り、軍事力を急いで投入しなければならないこともある。このような場合、決定的であろうがなかろうが、政治目的がはっきりしていようがいまいが、世論の支持があろうかなかろうが、行動しなければならない。給料がもらえるのは、こういう試練に対応するからだ。
・・・敵の首都を落とせば勝利という単純なものではないのだ。占領下というのは、きちんと整った秩序ある場にならない。・・戦争というものは、幸せな解決策になり得ない。ただ、それしか方法がない場合もある。戦争という選択肢を選ぶ前に、可能性のある解決策をすべてしっかり検討しなければならない。戦争を避けて目的を達成するため、あらゆる政治的手段と外交的手段を尽くさなければならない。
・・・リーダーは、思考においても行動においても臨機応変でなければならない。計画が上手くいかない場合やあらたなチャンスが生まれた場合、計画を改変したり、破棄したりできなければならない。また、リーダーたるもの、自分の計画は素晴らしいとうぬぼれたり、あるいはこれだけ努力してきたのだからという思いに目がくらんではならない。実行の最初から最後までじっと注視し、現実に合わせた対策を取らなければならない。
・・・やってしまったことはしかたがない。過去は変えられない。それを抱えたまま、私は生きていかなければならない。・・この件が、私にも私の国連演説にも大きな汚点として残ることはまちがいない。だが、なんといっても一番腹立たしいのは、あの問題に自分が気づけなかった点だ。直感が働かなかったのだ。・・いずれにせよ、いらだちや嘆き、落胆を乗り越えて先に進まなければならない。汚点は汚点として認めるしかない。
・・・失敗はなるべく早く克服すること。また、そこから学ぶこと。・・何がまずかったのか、自分はどういうミスをしたのかがわかったら、それを教訓として前に進む。
・・・リーダーたるもの、問題を解決しなければならない。問題を解決しない人はリーダーではない。・・どこからともなく問題が降ってくることもあるのだ。自分に関心もなければ利害もない。まずどこから手を付けるべきかもわからない。それでもなお、自分が対処しなければならない。そんな問題が。
・・・名声に伴う影響力は有意義な目的に利用すること。自尊心を満足するために使ってはならない。言い換えると、地位は活用して善行を行うべきで、自分の地位によってはならない。いい話も悪い話も、自分について語られる話を鵜呑みにしないこと。公人としての時間に人生を占領されてはならない。狂乱の大衆からはなるべく隠れるべきだ。
・・・具体的な締めの方法は毎回違うが、必ず肯定的な終わり方にする。話を聞いた人々には、元気になって帰って欲しいからだ。
・・・死んだ後に名声を残すことはできる。だが、我々が残すもので本当の価値を持つのは、次世代の子どもたちだ。自分の子どもたち、いや、すべての子どもたちだ。
・・・レーガン大統領は、ジョークのファイルを用意しておられた。
・・・人生もリーダーシップも、自分のこととして語るものではない。いずれも、「我々」のこととして語るべきものだ。
・・・式典の最後にリッコーバー大将がされた話は、いまも忘れられない。「ものごとをなすのは組織ではない。物事をなすのは計画や制度ではない。物事をなせるのは、人だけだ。組織や計画、制度は、人を助けるかじゃまするか、である」私は、このするどい言葉を胸に人生を歩んできた。
・・・必ず強調するのが「どれ程優れた考えでも、それが優れているというだけで成功することはない」だ。優れた考えには、そのために戦う闘士がいなければならない。―――その考えを信じる、実現をめざして努力する、実現をめざして戦う、支持者や闘士を増やす、実現するまで推進する―――そういう人が必要なのだ。・・人生とは、さまざまな出来事の連続だ。人生とは、挑戦し、乗り越えた困難―――あるいは乗り越えられなかった困難―――を意味する。人生とは成功と失敗の連続である。だが、これらすべてを合わせたよりも大きいのが、出会った人々とどのように触れ合ったのか、だ。人生は、すべて人なのだ。・・いまの私があるのは、人生で出会った多くの人々のおかげなのだ。』

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