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2020年5月11日 (月)

愚直に考え抜く (岡田光信著 ダイヤモンド社)

スペースデブリ除去をビジネスにしようと会社を立ち上げ、10年も経たないうちに実現させようとしている会社社長の著作です。仕事を進めていく上で、毎日意識しておくべきことが多数書かれていました。

『・・・本項を書いている今は、創業から6年がたったところで、アストロスケールは何もない状態から次のように進化した。 ・自社工場とスペースデブリ除去に必要な独自技術 ・世界初「スペースデブリ除去」のビジネスモデルの構築 ・世界中の法規制づくりに参画 ・150億円をこえる資金調達 ・日米英シンガポールの世界4拠点展開と国際的な経営陣 ・宇宙機関や専門企業などから集まった、優秀なエンジニア陣 ・何より、課題にぶつかっても「必ず解ける」と信じる社内文化の構築

・・・社会人になってからの成長とは、自分で形成していくものとなる。時間軸の設定が各人に委ねられる。夢と現実のギャップをただ傍観して時間が過ぎるばかりでは、ギャップが埋まらぬまま死を迎えるだけである。

・・・自分を超え続けるために、私がいつも念頭においている方程式が2つある。・・ 課題方程式:(課題)=(あるべき姿)-(現実) 

実現方程式:(実現)=(思考)×(行動)

・・・人生を最大限実現しようと考えるのなら、次を満たす必要がある。

Max(実現)=Max(思考)×Max(行動)・・この思考と行動には、規律と型が必要である。

・・・結局、未来は予想しても意味がない。未来は予測するものではなく、自分の意志で作り出すものだ。世界はその総和で成り立っている。

・・・「あるべき姿」に答えはない。あなたの自由だ。オリジナルでよい。誰かから指図されるものでもなく、誰かから教わるものでもない。

・・・あるべき姿を一旦考えたら、それをもう一段高いレベルに持っていくことで、発想の自由度が上がる。

・・・最も難易度が高く、多額の資本と多くの高度な人材を必要とする「あるべき姿」を設定したが、そのおかげで、私には大きなワクワク感が湧いた。

・・・赤ん坊の判断基準は、「快/不快」だ。それが少年になって「善/悪」を学び、大人になると「損/得」を学ぶ。大人は、そうした三つの基準をミックスして生きている。

・・・調査も分析も、役に立つのは、課題方程式でいう「現実」を理解する部分である。しかし、「あるべき姿」を考えるのに調査と分析を使用すると、思考は止まり、予測というオリジナリティに欠けたものに陥ってしまう。

・・・彼は今でも、毎月、何を実現すべきか鏡に向かって問うているという。声に出して言う。そしてその実現のために、自分は何をしなければならないのか、また言葉にする。何度も言葉にすることで、そしてそれを鏡の中の自分に向かって言うことで「crystal clear」な状態にしているとのことだった。マーク・ベニオフともあろう人が、今なお、その基本中の基本を徹底していることに感銘を受けた。・・「あるべき姿」が明確になれば、それと現実のギャップが「課題」である。課題を特定することもまたひとつの難作業である。・・声に出すことで、雑念が飛ぶ。脳に響かせることで、明確に「あるべき姿」と「課題」だけが浮き彫りになる。

・・・日本では、新規事業というと若者に押し付け、若者に期待するといって自らは逃げる傾向がある。・・スタートが遅すぎることはない。20代や30代には若者なりの速さがあるが、ミドルにはミドル、シニアにはシニアなりの深みのある覚悟やスキル、ネットワークがある。

・・・他方で、私は哲学と文学も読むようにお伝えしている。社会をどうデザインするのかを夢想するヒントはそこにあるからだ。また、自分が判断に迷ったとき、その拠り所はそこにあるからだ。

・・・「彼ら(ダメな経営者)はアイデアを出せば作業の9割は完成だと考える。それを伝えたら社員が実現してくれると思う。しかし、すごいアイデアから優れた製品を生み出すには、大変な職人技の積み重ねが必要だ。・・」・・大きな課題を解くには多くの人を巻き込む必要がある。でも誰かひとりは常に全体像を把握していなければならない。それは、他ならぬ「あるべき姿」を定めたあなたである。

・・・解決に向けた思考が幻想や空想となり、泡のように消えるのを避ける最良の手段は、思考の型をつくり、思考したことを書き留めることである。

・・・課題にぶつかって行動を起こせないときは次の2つのパターンしかない。 ・子課題がまだ大粒すぎて次の一歩が踏み出せない ・子課題を十分な粒度に高めてみたが、課題設定の切れ味が悪くピンと来ない

・・・課題を短期、中期、長期と分けて、それぞれに具体的な時間軸を入れることで、今日取り組むべき課題と、しばらくは頭の中においておくだけでよい課題に分かれる。

・・・粒度を高めると、行動に移すことができる。迷いがなくなる。大きな解決はできなくても、小さな前進はできる。大きなことを成し遂げた人は、大量の小さな前進によってできている。

・・・論理や優先順位を確認するには、倒置法が便利だ。・・必ず「こそが」をつけるので、「コソガ法」と呼んでいる。・・「コソガ法」は論理と優先順位の「ウソ発見器」である。

・・・一つの参考書は、4回やると決めていた。1回目にかかった時間を1とする。2回目は分からなかった場所だけやればよいので、かかる時間は1/2になる。3回目を1/4、4回目を1/8でやる・・物事を完全にマスターするのに、最初にやった時間の2倍はかからない、ということになる。・・新しい物事を学習するのにひるむことも、恐れることもなくなるだろう。それがたとえ宇宙物理学であっても、だ。

・・・人間には、自分の判断がいつも正しいと思う正常性バイアスがかかっている。だから常に孤考力によって、自分の思考に広がりと客観性を持たせる必要がある。

・・・一次情報に接しなければならない。自分自身で、本物を見る、本場で感じる、本人に聞く。そうして初めて一次情報は手に入る。

・・・人は横着であり、思い込みという習性がある。ひとつの行動をとってその結果がすべてだとします。横着にならないように孤考力必要であり、・・ある課題に対する解決オプションを全部書ききってしまうのは、横着さや思い込みの激しさを避けるための予防である。

・・・世界は良く働いている。最も働いているのは、アメリカのエリートたちじゃないだろうか。ワシントンDCに出張すると、朝7時から夜12時までずっとスケジュールが埋まる。・・私は、自分には爆発的な体力があると思っていた。精神的にも肉体的にもタフな方だと思っていた。しかし、世界中のリーダーたちには体力で負ける。彼らの生きるエネルギー量は圧倒的だと言った方が良いかもしれない。他方で、人には睡眠が不可欠だ。たっぷりと睡眠時間をとれば、翌日の生産性は圧倒的に上がる。だから工夫が必要だ。寝る前に、5分10分あるだろう。細分化したアクションを何でもいいから、ひとつでも2つでも、出来る限り進めておくとよい。寝ている間に何かが進むかもしれない。

・・・世界中でさまざまな世代に講演しているが、中高生への講演が一番緊張する。偉そうなそぶり、上滑りな言葉は一瞬で見抜かれ、たちまちに興味を失わせる。人の協力を得たいのなら、表現に誠実さを極め、感情は素直に表現した方がいい。

・・・相手が合意しないのであれば、何かが引っ掛かっている。その問題を一緒に考える。・・相手の課題を場合分けして、課題を整理してあげる。解決法を広げてみて、どれがよいか一緒に検討する。・・そうすることで、課題認識がずれていたものが合意に至ったことは多々ある。

・・・ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したのに、さだまさしが受賞できないのは詞が日本語だからである。仕事の処理速度の実感値でいくと、英語は日本語の3倍速だ。世界の情報の9割以上が英語である。・・仕事の言語として世界で選ばれたのは英語である。・・英語で動けば、より大きく、より速く動くことができる。「あるべき姿」に近づくために必要であるならば迷わず選ぶべきである。

・・・しかし日本のその量的で平均的なものには「型」があり、ひとりひとりが型を極めたときには、それは型でなくなり、強い個性となる。夢想力が加わると、大きな革新の力となる。』

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