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2020年1月17日 (金)

嶽神伝 死地 (長谷川卓著 講談社文庫)

この作品は、前作に続き、七つ家も話です。還暦を過ぎた二ツの大活躍を楽しむとともに、滅びゆく北条に仕える風魔の消えゆく姿の寂しさが、このシリーズが終盤に近付いてきた寂しさも強く感じさせてくれています。

『・・・戦場を見渡せる高台に上れない時は、足軽の姿で戦場を駆け、戦の流れを読むのである。敵でも味方でも、兵に出会った時は、―――おらの殿様はどこだァ? と叫びながら走っていれば、失笑させるにとどまることが多かった。

・・・―――猿を喰うてはならぬのか。 ―――儂らは喰わぬ。猿を喰うは外道だけじゃ。 猿は山では馳走だった。だからと言って里の者を殴り飛ばしても、どうなるものでもなかった。

・・・「治部、それでは天下は取れぬ。天下は、死地に身を置いてこそ取れるものぞ。よう、覚えておけ」

・・・「治部、よう覚えておけ。賢い者は己より出来のよい者を近づけ、愚かな者はそれを煙たがり、遠ざける。そこから国は傾くのだぞ」

・・・曼陀羅華は、茄子科朝鮮朝顔属の植物で、江戸期に外科医の花岡青洲が麻酔薬に使ったものである。一般的に、江戸期に入って中国から日本に渡ったとされているが、青洲が手術を手掛ける280年も前、大永年間に幻庵は父早雲の命令で、京の陰陽師から曼陀羅華を譲り受けていた。権力者たちは、常に新しい毒薬を求めていたのである。烏頭は、附子とも狼殺しとも言われる毒草鳥兜のことで、特にその根に毒があり、嘗めると舌に痺れが走るので、他の独と判別し易かった。

・・・一対一の果し合いではなく、まとまって戦う時は、倒せる時に素早く倒すのが鉄則だった。時が掛かれば、何が起こるか分からない。

・・・小説は生き物です。読み返すたびに、加筆したい箇所、削除したい箇所が出てきます。』 

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