嶽神伝 鬼哭(上) (長谷川卓著 講談社文庫)
休みに入り、どんどん読み進めています。
見事な男たちの生き方です。
『・・・この時代、男の身長は、157、8センチメートルであった。ちなみに、豊臣秀吉は150から160センチメートル、徳川家康は156から160センチメートル、織田信長は165から170センチメートル くらいだと言われている。・・義元の176センチメートルに至っては、かなり背が高いことになる。
・・・「余程出来た者でないと、己が腕が上がると、周りの者を見下すようになる。一軍の大将になる者や、一国を統べる者には何が肝要か。人を打ち負かす力ではなく、人を使う力ではないか」
・・・無坂も、十を数える頃には、己の腹回りほどの太さの木なら斧で割っていた。その呼吸で鹿の首を刎ね、骨を断つのだ。すべてが生きてゆくことに繋がっているのだと知り、だからこそ日々の些事もおろそかにしないようになる。
・・・常市が言い、弥蔵とともに深く頭を垂れた。「死ぬのだぞ。弥蔵、其の方、死ぬには若いが良いのか」 「人は、いつか死にます。それが多少早いか遅いかに過ぎません。手前は己に恥じずに死ねますゆえ本望でございます。ただ、死ぬに際し、ひとつだけお願いがございます」 「申してみよ」 「これからは、里の戦を山に持ち込まぬよう、お願い申し上げます」・・「殺しても殺さぬでも、悔いは残る。ならば、人として、武士(もののふ)として、潔くありたいではないか。殺すと悔いが残る。それを一生引き摺るは苦しい」
・・・それはどこからきたのであろうの。山を慈しみ、山を敬い、山のために尽くすことを当然と思う。あの者の有り様からではないか。無坂と二ツ。あのふたりと同じように、弥蔵もまた私欲という桎梏の外にいるのであろうな。』
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