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2019年11月 3日 (日)

キレる! (中野信子著 小学館eBooks)

「キレる」ことに関する脳の働きなどや、実際の対処要領について、いろいろと役に立ちそうな内容でした。覚えておきたいと思いました。

『・・・キレるという行為は、上手に使うことで、人間関係において自分の居場所をつくり、成功するためには欠かせないコミュニケーションスキルであると言えます。

・・・いい人には二種類います。まず、いい人として他人から信頼される、つまり“尊敬できるいい人”。もう一つは、いい人として搾取される人、つまり、“都合のいい人”です。・・本当に困った時には役に立たないのでむしろ軽蔑されてしまいます。・・都合のいい人”と“尊敬できるいい人”は、どのような組織・会社に属しているかによって、どちらの“いい人”が得をするのかは変わってきます。

・・・“得するキレ方”は、自分の感情を素直に受け止め、できるだけストレスが小さくなるようなタイミングを逃さずにキレます。伝えたいことを伝えたいタイミングで、過不足ない熱量で表現できるのです。・・“損するキレ方”をするひとは、怒りの感情を怒りに任せて衝動的な言動をとるため、周囲の人も巻き込み、相手だけでなく、多くの人に嫌な思いをさせ、最後には自分も後味の悪い思いをして取り返しのつかないことになってしまいます。もっと残念なのは、肝心の相手には自分の本えにゃ物事の本質が伝わらず、逆に相手を優位に立たせてしまうような場合です。

・・・ダメなキレ方をしやすい人が知り合いにいる場合の最善策は、極力近くに寄らないことです。

・・・慣れていなくても、自分の怒りをキレるという形で、はっきりと相手に示す必要があります。相手に悪意をもって不利益を与える人は、反撃してこない人を探し、その人を狙って攻撃し続けるからです。・・キレなければならないときに、慣れている人と慣れていない人では、慣れている人の方が圧倒的に強いのです。

・・・”よいキレ方“と”悪いキレ方”があるとすれば、”よいキレ方”は正当な怒り、相手に強くこちらの気持ちや意思を伝えるためのものであり、“悪いキレ方”は、自分本位の身勝手な怒りを相手にぶつけ散らすことです。

・・・言い返さないでいると、それが洗脳やマインドコントロールの入り口になってしまうこともあります。DVの人間関係もまさにそれです。・・洗脳されそうになったら、最初のうちにキレることで、周囲に容易ならざる相手であることを知らしめる必要があります。

・・・日本人の“キレ”下手は、教育にも原因があるかもしれません。学校で「すぐにキレたらいけない」と教えられ、その背景として、日本では「いい人は起こらない人」というイメージが強くあります。

・・・怒りの原因として主に考えられる脳内物質は、ノルアドレナリンやアドレナリンです。・・ノルアドレナリンは、ストレスに反応し、神経を興奮させる神経伝達物質で、やる気を出させるホルモンですが、同じく怒りや興奮を感じさせる物質でもあり、“闘うホルモン”ともいわれています。・・ノルアドレナリンによる興奮状態になるとともに、扁桃体の反応で相手に対する恐れや不快さを感じる。それらが脳が“怒っている”という状態です。・・ノルアドレナリンの働きによって、脳が覚醒し、集中力、注意力、判断力が高まります。さらに、筋肉に酸素や栄養を送るために血圧や心拍数が上昇します。・・ノルアドレナリンが分泌されると、同時にアドレナリンも分泌されます。ノルアドレナリンが主に神経に作用するのに対し、アドレナリンは主に筋肉に作用する

・・・今の社会では、キレている人の姿を見て周りの人は不快になります。しかし、人間の歴史では、上手にキレる人が武勲を上げ、のし上がっていく時代の方が長かったわけです。闘わない人よりも、うまく闘える人が選ばれてきたという歴史がある

・・・アドレナリンは運動機能を高めますが、その持続効果が短いという特徴があります。・・アドレナリンは別名ストレスホルモンともいわれ、分泌されている間は血圧が上がり心拍数が増えます。つまり、身体の負担が増え、それが長期に及ぶと突然倒れたり高血圧になったりします。

・・・時間が経っても怒りが収まらず、キレ続けるような場合は、脳内で怒りの感情を抑制するブレーキの領域である前頭前野がしっかり働いていない状態だと考えられます。前頭前野は大脳の前方部分の領域で、理性や思考、感情、意欲など最もヒトらしい部分を司る部位です。他の動物の脳と比べてもヒトが最も発達している部位でもあります。

・・・睡眠不足であったり、お酒を飲んでいたりする状態では、前頭前野の機能が低下し、判断力が鈍くなり、強い意志が利かなくなってしまうこともあるのです。・・飲酒や睡眠不足のほか、体調不良や麻薬の使用、そして脳の老化現象が挙げられます。・・脳の老化というと、記憶力の低下というイメージがありますが、老化によって記憶を司る“海馬”よりも先に、前頭前野が委縮することがわかっています。・・老化は後頭葉より前頭葉の方が影響を受けやすいということがわかったのです。前頭葉はキレる自分を抑えたり、相手の気持ちを理解したりして、自分の行動を決めるという理性を司る部位です。・・年をとると・・相手に合わせて柔軟に物事を理解するということができなくなるのです。

・・・しかし実は、理性的な行動を促す前頭前野の機能が強すぎる場合も、相手を過剰に攻撃する言動につながることがあります。最も恐ろしいのは「自分には怒る正当な理由がある」と判断した場合です。なぜなら怒りがどんどん加速してしまうからです。

・・・正義感から制裁行動が発動するとき、脳内にはドーパミンが放出され、快感を覚えることがわかっています。・・ドーパミンは“快楽物質”とも呼ばれ、脳内に快感をもたらします。快楽からその行動がやめられなくなり、麻薬やアルコールなどの依存症を引き起こしてしまうことがあります。・・ドーパミンは一度で始めると、前頭葉をはじめ、脳のさまざまな神経を刺激し、快感を届けようとします。ですから、理性が働かなくなります。・・ドーパミンが放出されている怒りからはできるだけ”逃げるが勝ち”です。

・・・テストステロンが増えると、身体だけでなく、精神にも大きな変化が表れます。孤独を好むようになり、親子でべたべたした人間関係をあまり好まなくなります。一人でいることのほうが、心が休まり、自分の部屋で一人の時間を過ごしたがる傾向が強くなります。さらに、攻撃性や支配欲が高まり、自分でも理由がよくわからないまま攻撃衝動が出てくることがあるのです。

・・・前頭前野が最も成熟する時期というのは、30代から60歳ごろです。それまでは、なかなか怒りの衝動が抑えることが難しい時期なのです。

・・・実は女性もテストステロンは分泌されています。一人でいることを好み、「自分よりも優れた人がいることが許せない」と感じるなど、支配欲の強い女性はテストステロンの濃度が高いと言えるかもしれません。

・・・家族への愛情と非暴力は必ずしもイコールではありません。

・・・濃厚な愛情には、ある脳内物質が関わっています。それが“オキシトシン”です。オキシトシンは“愛情ホルモン”と呼ばれ、脳に愛情を感じさせたり、親近感を持たせたりして、人と人との絆をつくるホルモンです。オキシトシンが最も分泌される瞬間は、セックスと分泌の時です。・・さらに、誰かと同じ空間に長い時間一緒にいるというだけでも、オキシトシンの濃度が高まるということがわかっています。・・オキシトシンが増えることで、デメリットもあることがわかっています。愛着が強すぎるあまり、“憎しみ”“妬み”の感情も強まってしまうという側面もあるからです。・・愛情を裏切るような行為や、お互いの信頼を裏切るような人や行為に対して、攻撃して阻止するという行動を促進するのです。・・オキシトシンの濃度が高いとき、私たちの心理には興味深い現象が起こります。“外集団バイアス”と“社会的排除”です。外集団バイアスとは、“自分たち”の集団に含まれず、“自分たち”と異なる人たちを不当に低くみなす認知バイアスのことです。・・社会的排除とは、“自分たち”の中にいながら“自分たち”とは異質な人たちを不当に攻撃したり無視したりして起こる排除のことを言います。この仲間は認めるが、異質なものの存在を認めない、というのがオキシトシンの働きの大きな部分です。

・・・セロトニンは脳内で神経伝達物質として働いていて、“安心ホルモン”とも呼ばれています。・・セロトニンは脳に多くの影響を与えています。セロトニンが多く分泌されているとリラックスして、満ち足りた気持ちになり、セロトニンが少ないと、不安を感じやすくなると言われています。さらに、セロトニンの量が減ると前頭前野の働きが悪くなってしまいます。・・そのため社会性が低下して、理性を保てず衝動的な行動が多くなることもあります。またセロトニンの低下がうつ病につながることもあります。・・セロトニントランスポーターの濃度が低い人、つまり不安になりやすいが普段は真面目でおとなしく、人を信用しやすい人が、相手がズルをしている、自分に不当なことをしていると感じると、自分の時間やお金などコストをかけても相手を懲らしめたい、報復したいと思ってしまう傾向があるということです。

・・・同類の上に立ち、支配したがるというのは、霊長類の特徴です。・・誰かを支配し、自分の立場を守るというのは、人間の歴史そのものでもある

・・・初動がものすごく大事です。相手が監督や上司など、自分より明らかに立場が上だとわかっていても、「ここから先は入ったら困ります」というところを、しっかりと示しておかなければならないのです。関係が深まってから突然訴えても、相手はなかなか納得してくれない

・・・「自分の誠意を差し出せば相手は黙ってくれる」と思ったら、それが逆効果のときもあります。何かを言えば、なんでも差し出してくれる人だと思われるだけです。

・・・“系統的脱感作法”とは、不安や恐怖に対する行動療法の一種です。不安を引き起こす刺激に順位をつけて数値化し、弱い刺激から強い刺激へと段階的に繰り返し経験することで、恐怖や不安を克服する方法です。

・・・思春期の男子がイライラする、人や物に当たろうとする、これは攻撃性の強いテストステロンが急激に増えている時期だからかもしれません。10代前半の男子の脳と身体は、闘いたくて仕方がない状態になっているのです。・・自分の中に育ってくる攻撃性や自立したいという気持ちを、上手にコントロールできずに困っているからこそ、さらにイライラしてしまうのです。特に男子に対して、叱ったり説教したりするのは逆効果です。なぜなら言葉で伝えようとしても、その言葉を受け入れることをよしとしない気持ちが育っている時期だからです。・・細かいことに口を出したりしないで、男の子の攻撃したい気持ちが間違った方向にいかないよう、目は離さず、しっかりと見守ることが重要です。

・・・思春期の女の子は、女性ホルモンである“エストロゲン”の分泌が活発になり、異質なものに対する拒否反応を示すようになり、好き嫌いがはっきりしてくることのある時期です。

・・・高級車に乗った時ほど、テストステロン値が上がることが観測されています。・・原因として挙げられるのが、高級車は自分の方が優位だと思いやすい車だからです。より“俺の方が強い”という意識から、テストメール増えていくのです。

・・・あおられるだけでなく、相手が車から降りてきて、車をバンバン叩いて「車から降りろ」などと怒りをあらわにするような状態は、ドーパミンが放出されている状態なので、何を言っても聞く耳を持ちません。理性の利かない“キレている猿”の状態です。こういう状態の人からは逃げるのが一番大事です。一刻も早く警察を呼んで解決はプロに任せましょう。

・・・特に女性は男性に比べてセロトニンが少なく、不安を感じやすく、さらに女性ホルモンであるエストロゲンは、共感を求める性質があります。

・・・脳の老化によって、相手を信頼できなくなるのです。相手を信頼するということは、脳が“計算”して決めています。信用するための解を得る”計算”は、単純なようでいて意外と難しいのです。

・・・脳にはよいことは忘れてしまうのに、悪いことや嫌な経験の記憶は最後まで残ってしまいます。これはヒトの性質として仕方のないことです。よいことは別に覚えていなくても危険でないからです。悪いことは憶えておく必要があります。・・また次にも同じ痛い目に遭うかもしれません。

・・・老化によって前頭葉の委縮が起こってしまうことは事実ですが、その委縮の度合いは個人差があります。90歳近くでもまったく衰えを感じさせない人もいます。その理由として考えられることとしては、脳を鍛えているかどうかです。

・・・セロトニンを分泌させるためには、その材料となるトリプトファンを摂取するため、肉やナッツは積極的に食べさせましょう。・・セロトニンの分泌には食事に加えて、軽い散歩などの運動が重要です。散歩などで身体を動かし、できるだけ外に出ることを促しましょう。

・・・キレやすい脳として考えられるのは、“前頭前野”の働きが不十分な場合です。・・お酒や寝不足などでも、この前頭前野の働きが不十分になりますが、親子関係と生まれ育った状況が、前頭前野の発育に影響することがわかっています。幼少期に養育者との関係が良好でなく、十分な愛情を受けることができないことで、前頭前野の発育に必要なホルモンが不足して、前頭前野が十分に発育できない場合があるという調査報告があるのです。・・オキシトシンには、前頭前野が育つように働きかける役目があるので、愛着の形成によりオキシトシンの分泌が豊富になれば、脳の前頭前野を発達させることになり、”キレにくい”人になります。

・・・落ち込んだ日は、ストレス発散のために肌触りの良い服やパジャマ、寝具など、上質なものを選んでみてはいかがでしょうか。ライブコンサートもおすすめです。ライブでは、CDでは聞こえない、幅広い周波数の音を感じることができます。それらの領域の音圧が刺激として立毛筋に入ると、オキシトシンの分泌を促す効果があります。

・・・ポイントは、相手の言葉尻に反応しないことです。・・これは実はカウンセリングの技術です。・・相手の言葉に直接反応すると、売り言葉に買い言葉となって争いに発展します。ですから、これは相手の気持ちに客観的に共感するという技術です。・・売り言葉の理由は必ずあるので、その言葉に反応するのではなく、言葉を発した売る理由に共感して一緒に解決しようという姿勢を見せるか、それができないようであれば、相手にその攻撃の理由を示すことで、相手に自覚させて理性が働くのを待つという方法があります。

・・・いきなりキレるのではなく、余裕を見せつつ、不愉快であるという意思は伝えておくのです。

・・・セロトニンは男性に比べ女性の分泌量が少なく、季節やストレス、食べ物などによって分泌量が変化することがわかっています。特に生理中や生理前のほか、日照時間が短くなる6月や秋にはセロトニンの合成が上手くできず、分泌量が減りやすいのです。

・・・特に心にダメージを受けるのは、自分が軽んじられていると感じるときです。

・・・海外で暮らしていると、ときにキレるということが必要な場面に多々出会います。彼女自身のキレキャラも、訓練して身につけた自分の守り方であり、自分の主張を通すための手段だったのかもしれません。

・・・日本はみんなと仲良くすることがプライオリティの高い文化なので、正々堂々ハンドの優劣で勝敗を決めるのが“正しく”て、駆け引きやはったりで相手にゲームを棄権させるのは“狡い”という思いがあるのかもしれません。騙すようで嫌だというのもあるのでしょう。・・残念ながら現在は、ポーカーに限らず、海外では「日本人=カモ」という概念が定着しているフシがあります。何をされても言い返せずニコニコしているからです。

・・・日本では、もめ事を起こした人をそれだけで「ダメな人だ」と思ってしまう風潮があります。

・・・自分の不利益が見えてきたら、テクニカルに切り返すべきです。さもないと、相手は搾取してもよいターゲットとして見て、さらに攻撃をエスカレートさせてきます。

・・・日本語では論破すると言うと、“誰々を論破する”と、人を目的語にすることが多いのではないでしょうか。しかし、フランス語では、この動詞は“人”を目的語にとる用法の頻度が低いのだと聞いたことがあります。あくまで、“議論の対象物”を目的語として、ある問題点や疑問点についてなど“○○を論破する”という使い方をするのだとか。・・ところが、日本では、“誰々を論破する”という言い方をします。“人”を破る。結局、目的は相手を黙らせること、否定することになり、ともすることになり、ともすると喧嘩になってしまうのです。

・・・あえて空気を読まず、できないことや苦手なことをきっぱり断る。あえていい人にならない。そしてよい結果を出し、自分も相手もよい思いを共有する、WIN-WINの関係の好例だと思います。

・・・任侠の世界で交渉上手な人は、自分たちに非があった場合、とにかく相手に喋らせるのだそうです。あえて相手にありったけの文句を言わせるのです。言わせるだけ言わせて「お前はいつもそうだ」などと人格攻撃が始まったときに、「確かにこちらにも火がありましたけど、そういう言い方はないんじゃないですかね」「そこまで言うってのは、どういうおつもりですか」と反撃するそうです。相手に人格攻撃したことを後ろめたく思わせて、劣勢から優勢の立場にひっくり返すのです。

・・・彼女は誰かにキレるとき、人格ではなく、行動だけを否定するよう心掛けてました。・・最大に称賛の言葉をかけて持ち上げます。相手がいい気分になったところで、ルールを守らないことに対して「あれはないよね~」とさらっと伝えるのです。

・・・相手の話をよく聞き、相手に対する尊敬の念や気遣いを見せつつも、主張は譲らず、いつの間にか自分の主張が通るように相手を巻き込んで言ったそうです。相手のプライドを傷つけることなく、自分たちのやり方の方がお互いに得であると思わせるような言い方をするのです。

・・・“アサーティブ”なコミュニケーションは、相手も自分も大切に扱うのが特徴です。自分の気持ちを正直に、その場にふさわしい表現方法で伝えようとします。・・ポイントは“私は”を主語にして伝えることです。「私は~と思う」と言うことで、自分の感情を素直に表現でき、相手を責めているのではないという姿勢なので相手からのリベンジを避けることができます。・・相手を主語にして言うと、相手は責められていると感じて反発してしまうかもしれません。・・ポイントは約束を破られた直後に言うか、相手の機嫌のよいときに言うこと。』

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