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2019年10月31日 (木)

正しい「未来予測」のための武器になる数学アタマの作り方 (高橋洋一著 マガジンハウス)

思い込みなどではなく、正しいデータに基づき、論理的に考えることの大切さを改めて強く思いました。騙されずにしっかりと自分の考えを持てるように努力を続けたいと思います。

『エリート意識が強く、「俺たちは日本の国家財政の専門家だ」と豪語していたが、私に言わせれば、会計、財政、経済の専門家にすらなれない素人たちの集まりだった。

・・・世界で会計の原理原則は、「知っていて当たり前の常識」だ。・・会計の知識をもって財務関係の書類を見ると本当のカネの流れがわかる。カネと権力は繋がっているから、カネの流れがわかれば、権力関係も見えてくる。・・会計を勉強すれば、たちまち、東大法学部や経済学部卒の人間より賢くなれるという現実さえある。

・・・おさえておかなければいけないのは「債権とは資産のことである」ということである。

・・・厳密には、帳簿価格より一定以上実質価格が低い場合の債権を不良債権と呼んでいる。帳簿価格と実質価格の差は損になる可能性があり、その差額を一般的に「不良債権損失額」という。「不良債権額」と「不良債権損失額」の違いに要注意だ。

・・・会計で使う言葉は、財政状況を表現することに特化した「記述言語」である。コンピューター・プログラムで使う言語と同じで、一つ一つに明確な定義がしてある言語だ。

・・・資産に変えるということは、単なるお金を「収益を生むお金にする」ということだ。これが「現金」と「資産」の違いである。

・・・重要なのは「負債と資産のバランス」である。

・・・「グロスで見る」とは、「BSの負債額だけを見る」、あるいは「BSの資産額だけを見る」という意味である。・・しかし、それでは企業の財政状況は正確にはつかめない。・・BSにおいては、「純資産」を見るということが「ネットで見る」ということだ。

・・・政府のBSを読むうえでまず知っておく必要があるのは、「企業は負債よりも資産が多い方が安泰だが、政府のBSの場合は資産よりも負債の方がちょっと大きいくらいでも健全だ」ということである。つまり政府には「利益剰余金」は存在しない。政府のBSの「純資産」は多くの場合マイナスである。これは世界のどの国も同じことだ。

・・・財務書類を読みこなすには、数字を正しい単位で声に出して読むのがコツである。

・・・「お金」は、会計的に言えば「日銀が発行する債務証券」

・・・政府と中央銀行のBSを連結したものは「統合BS」と呼ばれている。統合BSで政府の財務状況を見るのは世界の常識だ。

・・・「償還費には税金が使われるから、国債発行額が増えれば増税につながる」という批判をよく聞くが、これはミスリーディングである。国債の償還は、借換債で対応することが原則だ。・・政府の借金が一向に減っていかないのは、償還期日が来るたびに借り換えているからである。実質的に政府は借金を返していない。返していないところで税金が使われるはずはない。それでも、経済成長していけば、経済規模との関係で見れば、実質的な借金残高は減少するので問題ない。

・・・一言でいえば、経済とは「需要と供給」の話である。それだけと考えてよい。・・難しい理論をいくつも勉強するより、需要曲線と供給曲線の関係について「深く狭く」理解する方が、はるかにメリットがある。

・・・大切なのはある商品の値段が上がったという現象一つについても、「それがどういう背景で起こったのか」を考えることだ。これが「政治を通じて世の中を読む」ということである。

・・・ミクロ経済学は個人や一つの商品・会社・業界など個別の案件の経済について考える学問である。一方、社会全体の経済活動を考えるのがマクロ経済学だ。・・個人の動きと全体の動きは、いつもイコールであるとは限らない。そこで、経済学ではマクロとミクロに分けて考える。

・・・「総需要と総供給が世の中全体の物価を決める」というのがマクロ経済だ。・・一般物価は、すべての個別物価の平均値のようなもので、特定の商品一つの動向でとらわれるものではない。・・個別物価が下がってもデフレとは言えず、個別物価が上がってもインフレとは言えない。インフレもデフレも、「総需要」と「総供給」によって決まる「一般物価」の話である。

・・・「金融政策」と「財政政策」は、ともにどちらも「総需要曲線、総供給曲線をどう動かすか」という話だ。・・「総供給量」は、世の中のあらゆるモノやサービスの供給量を指している。・・総需要は、「消費+投資+政府需要+輸出-輸入」と内訳されるのである。総需要の中の「消費」とは、所得の中からモノやサービスを買うことを指す。「投資」とは所得から消費を引いた残りの貯蓄、つまり預金や株式投資などを指す。「成否受容」とは政府が行う公共投資などのことである。

・・・「デフレ不況」という言葉は、経済音痴を端的に表している。デフレは物価が下がっていくこと、不況はGDPがマイナスになることで、まったく別の経済現象だ。デフレは「価格」の話であり、不況は「量」の話である。デフレの時に不況になるとは限らないし、不況の時には必ずデフレであるとも限らない。・・物価が下がり続けるデフレの問題点は、雇用の喪失や設備投資減少を引き起こすことにある。

・・・マクロ経済政策で最優先されるのは、「雇用」である。雇用の問題は2点だ。「どれくらい給料がもらえるか」と「どれくらいの人が雇用されているか」である。

・・・国民総所得を雇用者総数と物価指数で割ったものを「実質賃金」という。

・・実質賃金が上がるのは人手不足がさらに進んで経済成長が本格化するときだが、これまでの歴史から、完全にデフレを脱却してからでなければ実質賃金は上がらないだろうと考えられる。デフレ脱却が急務であろう。

・・・GDPとは、わかりやすく簡単に言えば、「みんなの平均給与×総人口」である。したがって、人口が減れば、GDPも減るのは当たり前だ。考えるべきなのは、「予想通り8800万人に人口が減るとすれば、GDPが実際にどれくらい減るのか」ということである。

・・・厚生労働省の発表通り人口が8800万人に減少した場合、それがGDP成長率にもたらす影響は最大で0.7%だ。つまり、人口の増減はマクロ経済指標にはほとんど影響はない。人口の増減と一人当たりのGDPの増減はほとんど関係ないのである。

・・・確かに人口減少の局面では、人口構成の変化を要因として経済にマイナスに作用する「人口オーナス」によるGDPの押し下げ効果が指摘されている。オーナス(onus)とは負荷、重荷といった意味である。しかし、これは回避できる問題である。例えばまだまだ働きたいという高齢者を積極的に登用すればいいし、人工知能(AI)で生産性を上げればいい。

・・・リスクとは、確率計算がしっかりとしてある可能性のことを言う。つまり確率の数値を必ず伴う言葉がリスクである。さらに言えば、本来リスクに「危険か安全か」「良いか悪いか」といった価値的な意味はない。

・・・海外では、政党が獲得する議席数は、その党の得票率の三乗に比例するという「三乗の法則」が知られているが、日本の場合は、最近のデータから見ると「二乗の法則」が当てはまることがわかる。

・・・モデル式をつくるまではたいへんだが、式ができてしまえば、あとはデータを入力するだけである。・・私はデータによる予想が絶対だとは言わない。データのみによる予想の方が、独自取材と称する人為的な要素を入れるよりも当たる打率は高い、というだけだ。データによる予想が大きく外れることもある。例えば支持率が、世論調査をしたタイミングと選挙日とで大きく変われば、データによる予想は外れる。このことを政治の世界では「風が吹いた」などと言うのである。

・・・予想するとは、確率をどう考えるかということだ。マスコミが提供する情報は、確率とは何かをちゃんと理解している人がマスコミには少ないために、予想=思い込みになってしまうケースが多い。

・・・バイアスがあると、確率的な視点でデータをきちんと見ることはできない。

・・・AIは「知恵」はまったく持っていない。人間がつくったプログラム通りに働くだけである。AIが人間より優れているのは大量にかつ高速にデータ処理ができることだけだ。

・・・コンピュータの優れている点は計算能力だ。その能力を生かしやすいのは、定型的な仕事、いわゆるルーティンの仕事である。

・・・年金制度が安定するかどうかは、負担する人数・受け取る人数といった「人数」の問題ではなく、「金額」の問題である。・・日本の公的年金については、資金も負債も、過去から遠い先の将来まですべてを含めてBSを作ることになるということだ。・・将来の「資産」と「負債」は、割引率を使って計算した「現在価値」に直して計算可能な額にすることができるのだ。

・・・国民皆年金を積み立て方式でスタートすることは難しかった。現役世代の保険料を老齢世代の給付にあてる賦課方式にせざるをえなかったのである。最初のうちは、保険料を一円も納めていない人にも給付する。したがって単年でBSをつくれば必ず赤字になる。・・しかし、この制度を長く続けていくとどうなるか。「納めていないのに年金を受け取る人」が減っていくので、赤字がなくなりバランスがとれていくのである。・・日本の公的年金制度は、成熟するにつれて保険料と給付が一致していき、不足分が解消されていく仕組みである。したがって不足額が大きいからといって不安に思う必要はない。・・額の問題ではなく、バランスつまり不足額が増しているのか減っているのかが重要である。・・「年金がこんな額ではやっていけない」などといった個人的な事情は関係ない。負担に応じて給付額が決まる。

・・・医療費の問題は、終末期医療をどうするかに帰着する部分が大きいのだ。尊厳死問題を含め、今後ますます議論になっていくだろう。しかし、そんな議論は実際にはならなかった。そもそも、財政難だから医療費カットという議論は危険である。繰り返すが日本の財政が危ないという前提が間違っているからだ。』

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