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2019年2月

2019年2月 7日 (木)

日経新聞と財務省はアホだらけ (高橋洋一・田村秀男共著 産経セレクト)

刺激的な題名ですが、たいへん興味深い内容でした。内容からいえば「財務省」ではなく、「日銀」の方が「アホ」という感じでした。財務省は決して「アホ」ではなく、省益を追求するために極めてしたたかで、国民からすると「ずる賢い」というイメージです。しかし、田村氏が述べているように、経済は安全保障を構成する極めて重要な分野です。本当にしっかりしてもらいたいものです。

・・・2%のインフレ目標であるが、白川氏は、それを金融政策だけで達成するのは困難、と総裁時代からしきりに述べていた。しかし達成できなかったのは、2014年4月からの消費税増税が原因である。・・消費増税がなければ、14年年内にも2%達成は確実であった。しかし、消費増税により長期的な消費低迷に入り、それとともにインフレ率上昇にもブレーキがかかり、今日に至っている。

・・・世界の常識は「金融政策が雇用政策」である

・・・インフレ目標2%の理由は簡単だ。最低の失業率を目指しても、

ある下限(経済学ではNAIRU、インフレを加速しない失業率という)以下にはならずに、インフレ率ばかり高くなってしまう。そうした下限の失業率(これは日本では2%台半ばから前半)を達成するために最小のインフレ率が2%程度になっているからだ。

・・・ほんのちょっとの話を針小棒大に書くから、日経は読まない方がいいよ(笑)。

・・・アジア開発銀行(ADB)は日本とアメリカ、実質、日本が後ろ盾になっています。すると日本の調達コストみたいなものでベース金利は決まるわけです。後ろ盾になっているところをみながら金融は決まります。AIIBは日本やアメリカに参加してもらえなかったから、中国が後ろ盾だということがすぐわかる。中国の国際市場における調達コストは日本の調達コストよりかなり高い。中国はあまり信用されていないからです。

・・・日本の財務官量は中国にとって金づるというわけか、北京にいけば大歓待を受ける。事なかれ主義に陥るわけですね。

・・・新聞の見出しを信用してはいけない(笑)。小さく書いてある方を中心に読むのが正解なのです。

・・・私自身はどうするかというと、ネットを見るだけではなく、そもそもの発表文を見る。原資料をたどる。一般の人もそういう風にした方がいい。新聞なんか読まないで原資料を見た方が早いよ(笑)。

・・・中国の株式市場なんて、とても先進国のような市場ではないですよ。中国共産党がコントロールしていますからね。でも、そんなことは誰も言わない。

・・・議会はトランプ以上に中国に対して強硬策をとっています。ですからこの米中の問題は単なるトランプ政権の話でもトランプ個人の話でもなく、アメリカそのものの意思だと見た方がいい。

・・・トランプはモノの取引と資本の取引をパラレルに考えています。WTOの話はモノだけ。それだけを報じているとお話にならないのです。WTOの話をするのは、モノしか見えていない人ですからね。トランプから見ると、実は最後はOECDに加盟しろという話になります。それは中国は変動相場制にしなければならないので無理ですよね。アメリカはそこまで見切ってこの貿易戦争を仕掛けていると思います。

・・・読む順番も重要です。読む順番は日経を読んでから産経を読んだ方がいいかもしれません。産経を読んで日経を読むと、後のものが印象に残りますから。

・・・一般的に企業担当の日経の記者は、自社の広報誌ぐらいに思われているのではないかという感じをうけましたね。

・・・土光敏夫氏、佐波正一氏がそうでしたね。会って話をするときは、日本経済はどうなるか、国家としての政策の何が正しいか、経済成長についてがテーマになった。議論のレベルが違いましたね。マクロ経済の動向についてよく聞かれましたよ。きちんとした意見交換を好む人が経営者だったわけです。土光さんに至っては、よく手元に左翼寄りの雑誌を置いていました。聞くと、「オレは反対側の記事を読みながら心の中で対話するんだ」とね。

・・・金融政策は「学」が必要な分野だけど、みんな学がなくても平気で書く。日経の金融政策の記事をほとんどトンチンカン。・・それはなぜかというと、金融機関のエコノミストから話を聞いているからなんですよ。エコノミストは商売でそれをやっているんだから金融政策なんて関係ない。自分の商売にかかわる話だけをしているんです。「金融機関」の金融と「金融政策」の金融は日本語で言うと同じ漢字を書きますね。・・英語で書くとこの二つは全然違いますよ。「金融政策」は英語だと「マネタリー・ポリシー」。「金融機関」は「ファイナンシャル・インスティテューション」で違う言葉を使います。

・・・日経新聞は上から下までの情報を全部カバーしようとするから専門知識がない。

・・・政府には、「目標の独立性」はあるけれど、「手段の独立性」はなくて、中央銀行は「目標の独立性」はなく「手段の独立性」はある・・日銀と日経新聞は「独立性」を一緒くたにして、手段と目標の二つに分けないできています。その上で「独立性」が日銀に完璧にあるというロジックなんですよ。それを手段と目標の二つに分けてしまうと、日経新聞が今まで言っていた「日銀がオールマイティの独立性を持っている」という論理が崩れるんです

・・・日銀の独立性は「司法の独立」とは違います。司法の独立性は憲法の下で三権分立がある。日銀の独立性は子会社の独立性と同じなのです。

・・・イギリスの中央銀行であるイングランド銀行は世界標準の法改正をしていたので、本来であればそれを踏まえなければならなかったのです。その調査をしていない。だから改正された日銀法はオールマイティな感じで、完全な独立性があり、目標の独立性まで中央銀行だけが持っているような条文になって、失敗です。大蔵省銀行局にしてみれば、スキャンダルを逃れたいがために改正したんですよ。

・・・日銀を含めた統合政府という連結のバランスシートを財務省にいるときに私が作ったでしょう。あれで会計上、子会社であることは明瞭ですから、日銀官僚は嫌がるのですよ。・・でも会計上、法的には日銀は完全な子会社だから。

・・・それにしても目標に対する日銀の危機意識、問題意識が非常に薄いね。そう、薄いんだよ。特にリーマン・ショックの後、白川氏が総裁でしたが、アメリカもヨーロッパも量的緩和をがんがんやっているのに、日銀だけは絞ったのですからね。それで超円高になった。東日本大震災のときもそうなんですよ。我関せずのいうのが日銀の路線。それは財務省が悪いんです。日銀は子会社として虐げられて、意見を言うなとされてきた。もちろん、そもそも言わないんだけど。

・・・受け身の最たるものが「日銀理論」。これは超受け身です。・・「日銀理論」とは何かといえば、「実はマネーのコントロールは日銀ができません」というものです。・・「マネーは経済によって決まってきて、日銀はそれに対して受け身でやっているんです」という理論なの。

・・・金融政策をきちんとやっていると実は財政政策がよく効くのです。金融政策が不十分だと、財政政策をやっても効かないという理論があります。金融緩和をしないで財政政策だけをしても効かないわけです。・・アメリカではこんなのは当たり前・・常識的な話だから、日本の金融政策に何が足りないかと聞かれたときに、バーナンキが最初にこう言ったんです。「原因はプアー・マネタリー・ポリシー」。

・・・でも黒田総裁は馬鹿じゃないから、前の白川総裁のようなミスはしない。50~60点で合格すれすれかちょっと不合格か、というところで動いているのだと思います。

・・・内需がデフレ圧力にさらされ、外需に依存する現状からみれば、増税を急ぐのは自殺行為同然です。

・・・新しい元号になる5月まで、つまり4月に消費税をやめる可能性はまだあります。安倍総理は参議院選挙も見通しながら様々なことを考えていると思いますよ。

・・・大平氏はもともと大蔵官僚だったから、消費税をやりたかった。それが遺言のようにずっと残っている。大平氏が亡くなったときに、省是になったんですよ。親財務省の政治家は実は多いんです。言うことを聞いてくれたらメリットを与えますよと財務省は簡単に言えるからで、それでほとんどの政治家が落ちる。自民党の中で落ちないのは党人派の人だけです。・・政治家で準備ができていてしっかりしている人は落ちない。でもあまり準備ができていない人は落ちるんです。

・・・菅直人氏が決定的だったのは、また語学ができないこと。すると当時はG8ですが、G8に行ったときは、もう落ちるしかないんですよ。・・通訳をする財務省の官僚がベタに張り付いた。

・・・民主党政権で一番ひどかったのは藤井裕久氏。この方は、大蔵省OBで、コテコテの「ザ・財務書」みたいな人です。そこはある意味でブレない。役人のときと全く同じです。彼が最初に財務大臣になったときの副大臣が野田氏でした。そして藤井氏は財務省にこう言ったんです。「野田君を連れてきたから、ちゃんと染上げてくれ」。財務省色に見事に染まったね。

・・・財務省はそういう流れを読んでいます。政権交代で与党が弱くなるのを知っているんですよ。だからいろんなことを仕組む。それも組織でやるから強いんです。軍隊みたいな組織ですし、軍隊より規律が取れていますよ。

・・・「消費税を社会保障目的税としている国はない」が正しい認識で、これは1990年代までは大蔵省の主張でした。

・・・社会保障を保険原理で運営するというのが世界の流れです。・・消費税を社会保障目的税とする先進国はないわけですが、それは、まず財源は保険料にするが、保険料を払えない人の分を所得税の累進部分で補填するという保険原理があるからです。つまり原則は保険料だが、一部は金持ちの所得税から保険料を払えない人の分をとってくる。社会保障の財源は保険料+所得税が基本なわけです。だから消費税の社会保障目的税化は他の国にはないんです。

・・・消費税は国税ではなく、地方税とすべきなんですよ。消費税は一般財源ですが、国が取るか地方が取るかという問題が生じますからね。だから交付税をやめて地方税にした方がいいんです。地方分権が進んだ国では、国ではなく地方の財源とみなすことも多いんです・・地方の行政は生活に関係する身の回りのことが多いので、消費税の方が向いているんです。景気に関係なく安定財源になる。・・5兆円くらいの交付税は地域差を埋めるために必要だけど、16兆円も払うことない。

・・・政権運営をするときに、いろんな予想外のことが起こるわけです。だから他国の真似をするのが常識。真似をすると予想外のことが起きても、真似をした国ではすでに経験済みだから処方箋は分かりやすい。・・政策論でオリジナリティなんて必要ありません。エネルギーをたくさん使うことはやらないに限ります。

・・・経団連は、消費税には賛成し、それと引き換えに法人税を減税してほしいという方針に出たわけ。財務省もとりあえず消費増税の味方を増やすためにやむを得ないとして、消費増税と法人減税のバーター論に乗った。官僚と民僚が取引をしたということですね。

・・・国際競争力のために法人税を下げている国なんかありませんよ。・・法人税をなぜ下げるかにはきちんとしたロジックがあります。法人税と所得税は裏腹なのです。・・経済理論の方がわかりやすいからそれで説明しますね。経済理論では、所得税が完全に取れるなら法人税はゼロ。なぜかというと、所得税が完全に取れるなら、役員報酬、資産課税、賃金報酬から全部取れる。法人はあってないようなもの。

・・・世界の流れは相続税は下げる。法人税は下げるとなっています。相続税ゼロの国は結構多いのです。・・法人税を世界的な流れで下げているのは国際競争力とは関係ないのですよ。日本も個人所得をもう少し捕捉できるはずだけれども、それを少し置いておいたために、法人税を下げなかったとのいうのが実態。そうしたら他国が法人税を下げているから大変になっているという話です。財務省はここを言わないで経団連との間で消費税とバーターしたわけです。・・国民は不勉強で騙されているのです。

・・・財務省の場合は人事院に人を派遣しているから、実は面接にやってきた人の成績を知っているんだよ。他の省庁ではそういうことはないですよ。財務省しか知らないんだけどね。だから財務省が成績の良い人をとるのは間違いない。

・・・数学に先生はいなにのです。自分の頭だけ。だから数学科を大蔵省がとってはいけないし、とらないのです。自分で考える能力があると、それを組織のために曲げることは一切ないですからね。そういうのを大蔵省に入れるとたいへんだから

・・・早稲田のOBは日経のなかでぜんぜん結束がない。「俺が俺が」や足の引っ張り合いがあったりしたね。むしろ慶応大学はものすごく結束が固い。

・・・(IMFの)レポートは、日本の負債額は年金債務を除くと、国内総生産(GDP)の287%に相当するけれども、それは日銀など政府機関が半分以上を保有している。だから資産と差し引きした「純資産」はほぼプラスマイナスゼロだというものです。・・つまり、事実上、財政再建は完了しているということですね。消費増税の根拠がなくなります。そうです。

・・・新聞社は株式の譲渡制限によって商法の基本がなりたたない。そこからメディア支配ができあがっているのです。・・そういう新聞が偉そうに訓を垂れるなと言いたい

・・・日経は本当に言行不一致が多い。・・そもそも日経の記者が企業に天下るのはどうかと思いますよ。・・日経の記者ならやせ我慢してでも取材対象への天下りはしないのが本当なのではと思います。言論の商売ならそうでしょう。

・・・基本的なカルチャーとして企業担当記者は、国民のため読者のためでなく、その企業のために一生懸命に書くという感じはあります。しかも企業に取り入るタイプの記者の方が、社内の世渡りもうまく、出世する感じもあります。

・・・なぜ私が日経をいやになったかというと、経済を取材する中で担当があまりにも細分化されているからです。縦割り思考なんです。私はまず大きな動きを俯瞰してつかんでいろんな分野を超えて世の中の経済はこういう風に動いているということを自由に書きたかったので、窮屈な日経はもうここまででいいと思ったのです。

・・・メカニカルにつけないと実は現場で処理できないのです。当時の大蔵省など役所の人は定性的にしか評価しようとしないからダメだなと思いましたね。だからバランスシートや財務諸表から計算できるような形にして割り切りました。そうしないと現場の処理は無理です。

・・・単純に言えば「物価を見ろ」ということです。その時の物価はどのくらい高かったのか。インフレ率でいくと3%いきませんでした。その程度だったのです。あとからわかったことですが、インフレ率が3%いかないときはバブルを潰す必要はないんです。このとき高かったのは、ただ単に株価だけ。株価は・・営業特金の法律の抜け穴、そしてこれを許す税法の抜け穴があったから高かったというわけです。

・・・インフレ目標に株価が入っていないんだから、株価で考えたらダメだよと教えてくれました。

・・・大蔵省と日銀の関係は? 微妙な関係です。89年のころ、大蔵省から見ると日銀は出張所みたいなものでした。

・・・公定歩合の上げ下げでは、「金利の下げ」は日銀の負け、「金利の上げ」は日銀の勝ちと、日銀は言っていました。何勝何敗といつも言っていたので大蔵省からすれば笑ってしまいます。勝ち負けなんて最初から決まっている。全部大蔵省の勝ちでしょう。だから日銀が屈折していたのは事実です。

・・・大臣は話す。政治家はおしゃべりだから。政治家とコネを作ってくれよ。課長補佐なんかに聞くなよっていつも言いました。

・・・大蔵省とFRBはわかっている。ワシントンで取材をした私もわかっている。ほぼ同時に情報が入ってきます。かわいそうなのは日銀。日銀だけが知らない。

・・・為替の権限は財務省が全部持っているから。その権限は絶対放さない。絶対に放さないし、一言でも日銀が外に出すことは禁止。「話してはいけない」と言われます。・・要はボタンを押しているのは日銀でも、弾を込めているのや、いつ撃つかの指示をしているのは違う人。公定歩合も同じです。

・・・アメリカと大蔵大臣のどちらに話をするのが先だったかというと、さすがに大臣の方が先だった気がしますが、その程度の感じです。

・・・日経新聞の記事を読んでいると、まるで経済学の教育がまったくできていない学部の新入生が書いたみたいだと感じます。

・・・海外では「東大?」という感じ。世界の大学ランキングでも上位に入っていないから海外の人は知らないわけ。知っているのは日本人だけです。例えば肩書に「Dr(ドクター)」と書いたりしますね。それが何もないと「Mr(ミスター)になるわけ。そうすると全然種類の違う人がいるという印象になります。もちろん学歴だけで人を見ているわけではないですが、最初に目に入るわけです。そのような一定の学歴があって初めて、話ができるという感じになるのは確か。つまり共通言語があると相手に思ってもらえる。そう、それがないと、ローカルの話だと思われてしまうわけです。話しても仕方がないと思われる。国際社会とはそういうものですよ。

・・・かつては、マクロ経済現象であるデフレなのに、個別価格の低下のように歓迎された報道もありましたよね。デフレは、マクロ経済現象であり、それが雇用悪化を伴っているのが最大の問題です。だから日経新聞はいまだにデフレの本質が分かっていないのでしょう。

・・・マスコミは足を使った取材で記事を書くと言いますが、やはりその前に学問の基礎を学んでおくべきだと思いますよ。これについて私がツイートしたら多くの賛同がありました。これはオールドメディアの知識はネットに及んでいないことを示すもので、このような知識不足では見向きもされなくなると思います。

・・・「IMFによれば」「世界銀行によれば」は財務省への取材ですよ。ときどき「米財務省によれば」でも、日本の財務省に聞いているときがある。

・・・向こうはギブ・アンド・テイクだから、アポを取るのは大変ですよ。・・代わりにこちらの情報を向こうは知りたいわけだからね。アポが取れるのは、そういうときと、書かせることに意味がある場合だけだからね。それがないと、アポを取ることすら大変。

・・・日経新聞は今後、専門性や付加価値がないと苦しいと思います。いまやネット時代で、情報が直接、すぐネットに出ますよね。それを直接、読者が見る。それで十分なのです。

・・・松浦氏は、私の書いたものを引用するという連絡がきちんときました。ここをこういう形で書きますのでご了解くださいという丁寧な連絡。しかも国際基準を満たしている。日本でそんなの、ほとんどないんですよ。日本の記者はパクり放題なんです。

・・・日経で出世して上にのぼっていくのと、本当にジャーナリストとしてやっていくのは、まったく価値観が違うということ

・・・「高橋、〇時だから豆をまいてこい」すると豆をぱっとまくわけです。つまり豆とは新聞に提供するネタ。「ハトの豆まき係」というのは広報担当のことで、エサをあげるということです。だいたい新聞の論説委員などで偉ぶっている人がいるでしょう。でも私は論説委員の書く社説のネタも何回も提供したことがありますよ。その人からすれば、取材して裏もとらなくいいのだからラクですよね。

・・・いかに財務省の増税の論理に沿うような社説を書くかを考えるなんて、記者稼業としてもつまらない。まずそれを疑ってみようというのが記者、ジャーナリストですからね。懐疑の精神とよく言いますが、それが日経の記者をはじめ、全国紙の経済記者には残念ながらほとんどなくなっている。日経のなかには全然いないでしょう。日経のカルチャーの中では無理でしょうね。財務官僚らにいかに阿るか、その器用さが評価されるからそうなる。

・・・日経新聞の経済教室(2013年9月4日付)で伊藤元重東大名誉教授が、消費税を上げなかったら国債市場が暴落して大変なことになって打つ手がなくなるとの「テールリスク(確率的に可能性は極めて低いが起きると大災厄になるというリスク)論を展開していました。教授は、翌年4月に予定されている消費税率の8%への引き上げについて、「予定通り来年に消費税率を上げるのか、それとも引き上げ幅を小幅で刻む(あるいは延期する)のかで、それぞれマクロ経済的なリスクがあることは明らかだ」と景気失速の懸念を認めながら、「増税先送りで金利暴騰なら政策対応を困難」とし、増税実施を迫った内容です。その記事の翌日の9月5日、黒田春彦日銀総裁は記者会見で「仮に、そういうリスクが顕在化した場合には、対応が極めて困難であるということです。それに対して、私どもは、予定通り消費税率を引き上げたもとでも、基調的に潜在成長率を上回る成長が続くと思っており、景気が腰折れするとは思っていません。仮に、景気に大きな影響が出るリスクが顕在化したとすれば、それは財政政策でも十分対応できるでしょうし、金融政策でも、2%の「物価安定の目標」の実現に下方リスクが顕在化すれば、当然、それに対して適切な対応を採ります」とフォローした。伊藤氏と黒田氏は申し合わせたのでしょうが、増税の結果はデフレ不況で、日銀のインフレ目標達成のメドは全く立たなくなった。財務省は緊縮財政路線を変えないし、日銀は「適切な対応」をとっていない。しかも、伊藤教授も黒田氏も増税を勧めて日本経済に災厄を引き起こしたことに関して、責任を認めようともしない。私は伊藤教授を評価しません。日本の学者のほとんど、定量的な議論ができないのです。リスクという以上は確率の話なんだから、定量的な議論ができないのであればコメントに値しないレベルでしかありません。・・英語のリスクという言葉には確率計算ができるという意味があるんですから、確率を出してほしいものです。それを出さずに議論をする人の話を聞いても仕方がないと思います。

・・・文系の方は意見を言って議論するのが好きですね。私は時間の無駄と思っていて、計算して、意見の是非は予測した結果で判断すればいいというタイプです。

・・・学会も財務省と同様、健胃です。・・財務省、日経、学会が己の利害に執着して国家と国民を苦しくさせる。

・・・経済メディアとしての失敗を繰り返さないためにはどうするべきか。対談では、「必ずすべてを疑え」と言ったが、それは記者個人の資質、センスにもよる。もっと大きな、経済ジャーナリズムの根幹、あるいは編集哲学といったものがあってよい。それは、経済とは国家安全保障そのもの、という認識ではないだろうか。この認識に欠落こそ日本の国難を招く。米国を見よ。・・経済=安全保障は米国のコンセンサスなのだ。

・・・安全保障観抜きの経済主義が日本の政治、外交を規定していく。・・トランプ政権の対中強硬策について、日経新聞などのメディア多数は「保護主義」だと決めつけ、世界貿易機関(WTO)ルール違反だと批判する。教科書的な自由貿易論の洗脳されてしまい、中国の脅威という恐るべき現実から目をそらすのだ。』

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