フランス外人部隊 その実体と兵士たちの横顔 (野田力著 角川新書)
想像していた通りの部分と、そうではなく初めて知る部分とが混在していましたが、読んでよかったと思いました。
『・・・戦地に派遣される場合にしても、在籍している間のごく限られた期間だけです。それ以外の時間はどのように過ごしているのかといえば、“鍛錬と我慢の毎日”です。大抵の人のイメージとは程遠いと思います。多くの時間は、掃除などをはじめとした雑用をしているのが現実なのです。
・・・フランス外人部隊は、フランス陸軍に属し、主にフランス国籍を持たない外国人志願者から構成される軍隊です。現在は、百か国以上の国から志願してきた8千人ほどの兵士で構成されています。・・基本的に過去は問われないので、さまざまな事情を持つ人間が集まってくるのは事実です。しかし、面接や試験によって、入隊が許される者は絞られます。現在、その採用倍率は十倍近くになるほどの狭き門になっています。
・・・弾丸がヘルメットを貫こうとした際に軌道が変わり、ヘルメットの内壁をなぞるようになったので、頭蓋骨を撃ち抜くのではなく頭皮をえぐるだけで済んだというのです。出血はおびただしくても脳は守られました。ヘルメットの重要性がわかる話です。
・・・RPGがさく裂した地面には直径1.5m、深さ1mのクレーターができていたそうです。
・・・村に住んでいる人たちは、自分たちの村が戦闘地帯のようになっても、村から離れようとはしません。それくらいその土地に根付いているのでしょう。銃撃戦などが始まれば台風が来たかのように家の中に隠れ、銃撃戦が終われば、家を出て日常に戻ります。
・・・600mほど離れた場所から狙撃されたようでした。ヘルメットのアゴひもは締めていたのに、ひもを固定するマジックテープがはがれてヘルメットが飛んでいったと言います。「まだ痛いです。吐き気はないですが、めまいはします。」と話していました。このときにもあらためてヘルメットの重要性を知りました。頭を狙撃されても、ヘルメットを被っていれば命が助かることもあるのが実証されたのです。
・・・助かるとは考えにくい兵士のためにできる限りのことをやろうとして、他の兵士が犠牲になることは避けなければなりません。そのあたりは難しいところです。ギリギリのところで判断して行動しなければならないのが戦場です。
・・・アフガニスタンでの任務が終わる時には、「もっと、アフガニスタンにいたい」という気持ちにもなっていました。理由はいろいろあります。世界情勢の中でも、“最前線”といえる場所に自分がいて、任務を果たしている充実感が大きかったのもひとつです。これまでの私の人生の中でも、このときほど充実した日々を過ごせた時期はほかにありません。・・心のクーリングダウンを考えて、戦場の任務を終えた兵士たちをリラックスさせるためです。キプロス島ではヨガなどのようなプログラムが用意されていました。そこまでのケアを考えなければならないことをフランス軍や外人部隊は認識しているのです。戦場に足を踏み入れ、戦争を経験するというのはそういうことだと思います。
・・・外人部隊に入ることを考えている人に対して私はよくこう言います。「雑用が9割の日々になるので、行くなら、清掃スタッフになるつもりで行くべきだ。」
・・・今現在の印象としていっても、彼らに限らずフランス人には、困った人がいればすぐに手を差し伸べるような心温かいタイプが多い気がします。
・・・入隊を志願すると、そのときから“本名をはく奪”されるのが外人部隊のルールです。名前だけではなく、生年月日や出身地、親の名前などが変更されて“それまでの自分とは決別”することになるのです。
・・・M・・大量出血の制御
・・A・・気道確保
・・R・・呼吸の管理
・・C・・循環の管理
・・H・・低体温の予防
・・E・・搬送 がMARCHEです。
・・・“見捨てる勇気”も必要なのだということをまず理解しなければいけません。負傷者のいる現場に行くことができ、攻撃を受けない遮蔽物のある場所まで運ぶことができたなら、大量出血の制御から始めていく。そこからMARCHEの優先順位に従い治療を進めていけば、助けられる命は助けられます。
・・・「死生観というほどの立派な心構えはありませんでした。死ぬことを考えていてもしょうがないから、その時々の状況において自分のやるべきことをひとつひとつこなしていこうと思っていたんです」』
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