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2019年1月23日 (水)

中国に勝つ日本の大戦略 -プーチン流現実主義が日本を救う- (北野幸伯著 育鵬社)

知り合いから勧められ読んでみました。約1年前に出されたものですが、誠に示唆に富んだ素晴らしい著作です。私が何となく感じていたことなどもわかりやすく説明してくれています。

『・・・同年(2009年)12月、小沢一郎幹事長は、大使節団を率いて中国を訪問。小沢氏は、胡錦涛国家主席との会談時、「私は、人民解放軍の野戦軍司令官です」といい、アメリカ政府と日本国民を仰天させました。要するに、小沢さんは、「私はあなたの手下です!」と宣言した。

・・・この事件で、私たちは、重要な教訓を得ることができます。2010年9月、アメリカが日本を守ったということ。といっても、「尖閣は日米安保の適用対象である」という声明を出しただけですが。それでも中国をおとなしくさせるのには十分だった。

・・・オバマは、「これからは戦略の中心を、中東からアジアにシフトさせる」と宣言した・・「シェール革命」で中東の重要性が薄れてきたこと・・アメリカは、2015年時点で「世界一の産油、産ガス超大国」になっています。

・・・年間予算120億ドルということは、一ドル100円換算で一兆2000億円。中国は、こんな大金をプロパガンダに投じている。

・・・安倍首相は習近平主席が控室に入ってきたとたん、まっしぐらに駆け寄って行って握手を求めた。・・「アメリカと仲良くするためには、ここまでしなければいけないのか・・・」一国民として情けない感じですが。しかし、「ここまでできる」安倍首相は、立派だろうと思います。なんといっても、世界中で自分(安倍総理)の悪口を言いふらしている人物に、走って握手を求めるのですから。

・・・アメリカ大統領が2013年8月に、「戦争する!」と宣言し、翌月に「やっぱりやめる!」と前言を撤回した。これは、「オバマ最大の失敗」と言われています。オバマが、「史上最弱の大統領」と批判されるのは、主にシリア戦争ドタキャンのせいなのです。・・さて、シリア戦争ドタキャンは、アメリカ、欧州、ロシアのパワーバランスを大きく変えました。変化の一つ目は、イギリスがアメリカを裏切ったこと。

・・・二つ目の変化は、アメリカとロシアの関係が、決定的に悪化したことです。

・・・アメリカには、「G8は我が国を頂点とする組織で、その他の国々は部下だ」という意識がある。

・・・「クリミア併合」という歴史的大事件、靖国参拝で孤立していた安倍総理を救いました。アメリカは、日本を「対ロシア制裁網」に加えなければならなくなった。

・・・なぜ中国は、米欧日を敵に回すリスクをとって、ロシア側についたのでしょうか?中国がロシアを取り込むことに成功すれば、自国の欠点を克服し、世界最強になれるからです。

・・・AIIB事件の本質は、「同盟国がアメリカのいうことを聞かなかったこと」です。

・・・毛沢東と周恩来の、「中国は、絶対超大国にならない!」宣言です。これを、アメリカは、つい最近まで愚直に信じてきました。100万回繰り返される、「中国は超大国にならない」「平和的台頭」という言葉。これらの言葉が、アメリカを油断させ、中国が同国の覇権を脅かす大国になることを許したのです。

・・・1972年の時点で、米中関係は、「事実上の同盟関係になった」とキッシンジャーが断言している。

・・・ピルズベリー氏は、アメリカが鄧小平の時代、どれだけとんでもない支援をしたか、詳細に記しています。彼によると、鄧は、経済発展に直接関わり合いのあるものだけでなく、それこそ「すべてのもの」をアメリカから受け取る(あるいは奪う)ことに成功した。

・・・世界銀行は普段、「なんでもかんでも民営化しろ!」なのに、中国に限っては、正反対のアドバイスをしています。「国家が貿易を牛耳れ!」と。ちなみに、ソ連崩壊後ロシアは、IMFや世界銀行のアドバイスを聞き、大々的な民営化を行いました。結果、新生ロシアのGDPは、1992~98年で43%も減少した。一方、世界銀行、中国には、「本当に経済出来る提言」をしたのでしょう。

・・・ビル・クリントンは、大統領に就任した1993年1月当時、反中だったそうです。・・なんとアメリカ政府内に「強力な親中派グループを組織し、「反中政策」を転換させることにしたのです。

・・・アメリカが中国を助ける本質的動機はこれまで「ソ連に対抗するため」でした。ところが、もはやソ連はいない。「クリントン・クーデター」後、アメリカは、中国を「大儲けできる国」と見なすようになった。米中関係は、「対ソ同盟」から、「金儲け同盟」に移行しました。

・・・問題は、2003年に開始されたイラク戦争です。・・これが、「アメリカの没落を加速させた」ことが分かっています・・グリーンスパンさんに言わせると、「イラク戦争の動機が石油利権だったこと」は「誰もが知っている事実」(!)なのだそうです。

・・・国際金融資本家は、資本の流れを妨げる国境を嫌います。さらに、自分の都合で国内のルールをコロコロ変える独裁者を基本的に嫌います。国際金融資本家たちは、資本の移動を制限する国境がなく、全世界が同じ法律でわかりやすく、資本家を弾圧する独裁者がいない世界を夢見ている。

・・・現在の国際法では、「戦争をしていいケース」が二つだけあります。一つは、「他国が攻めて来た」とき。これは、「自衛権の行使」ということで、戦争が認められます。もう一つは、「国連安保理が認めた」とき。

・・・人は誰でも、「私が見るように、他の人も見ている」と思いがち。しかし、日本から見た中国と、アメリカから見た中国が全然違うことを知っておく必要があります。

・・・ロシアのまわりの「勢力圏」で、どんどん革命がおこり、「親米反ロ政権」が生まれていく。「このままではいずれロシアでも革命が起きる!」こういう危機感を持ったプーチンは、中国との(事実上の)同盟を決意します。

・・・大戦略の重要なポイントは、「味方を増やすこと」と「敵を孤立させること」です。

・・・親ロシアの代表は、ティラーソン国務長官です。彼は、エクソンモービルCEOとして、ロシアと関わってきた。ロシア政府から「友好勲章」を受け取っています。もう一人の新ロ派は、マイケル・フリン大統領補佐官です。

・・・キャリー・グレイシー氏はこう書いています。〈中国では民間企業にさえ共産党の末端組織が存在しており、国家の戦略的利益になると政府の命令に従うよう求められる〉。

・・・「親中民主党」「反中共和党」という一般的な定義は、必ずしも当てはまらない。・・中国は、アメリカで、強力なロビー勢力になっている。それで、反中大統領が登場しても、短期間で懐柔することができる。

・・・私は1990年、モスクワに留学しました。1991年12月にソ連は崩壊したので、共産主義時代最末期です。来てみて最初に驚いたのは、ソ連人が皆、親日だったこと。

・・・私は、「日本は善い国なのか?悪い国なのか?」という論争の他に、とても重要な議論が必要だと感じています。それは、「勝敗論」です。意味は、「日本は善い国なのか?悪い国なのか?」ではなく、「日本は、第2次大戦でなぜ負けたのか?」を分析することです。そのうえで、「日本は、どうすれば勝てたのか」を考える。

・・・日本が、ロシアに勝てたのは、もちろん日本人が必死で戦ったから。しかし、他にも理由はあります。たとえば、当時の覇権国イギリスと、同盟関係にあったこと。さらに、アメリカは資金面で、巨額のサポートをしてくれました。・・ところで、なぜアメリカは、日本を助けたのか?「満州利権に入り込みたかったから」です。・・アメリカは、「日本に多額の資金を援助し、ロシアに勝ったら満州利権に入り込める!」というもくろみだった。しかし、日本は「満州の利権にアメリカは入れないよ!」と拒否したのです。アメリカは激怒しました。・・日本は、日露戦争時多額の資金援助と和平の仲介をしてくれたアメリカの恩に報いなかった。そして、アメリカの国益を尊重しなかった。その結果アメリカは激怒し、「対日本戦略」(日本との戦争に勝つためのプラン)を策定した。

・・・日本が、アメリカを満州利権に入れなかったことは、日米関係を悪化させただけでなく、日英関係にも悪影響を及ぼすようになっていったのです。

・・・などなど、最大限のサポートをしてくれたのです。そんなイギリスですが、日露戦争から10年目、史上最大の危機に直面します。そう、第1次世界大戦が勃発したのです。日本は、地中海に艦隊を派遣し、大いに貢献しました。しかし日本は、陸軍派兵の要求を拒否し続けた。イギリスは、同盟国日本の冷淡さに、心底失望します。・・第1次大戦中、駐日大使だったウィリアム・C・グリーン氏は、いいます。〈戦争が勃発しわれわれが手一杯の時、我が同盟国がいかに失望したかを語る必要はないであろう。任期中に加藤高明、本野一郎、後藤新平、石井菊次郎の4人の外務大臣に接したが、イギリスの協力要請に対する対応は常に同一態度、すなわち、直ちに拒否するか、後ほど回答すると述べて拒否するか、未だ考慮中と述べて時間切れを待って拒否するかのいずれかであった〉・・当時の日本政府には、「同盟国イギリスを助けよう」という気持ちは「まったくなかった」ようです。外務次官ニコルソンさんは、いいます。〈私は日英同盟を全然信用していない。日本は最小のリスクと負担で最大の利益を引き出そうとしている〉

・・・第一次大戦の結果、イギリスは「日英同盟破棄」を決意します。そればかりではありません。大戦時イギリスを救ってくれたアメリカと急速に接近していった。米英はこのときから、「日本をいつか叩きつぶしてやる!」と決意し、「ゆっくりと殺していく」ことにしたのです。

・・・「おまえ(アメリカ)が俺(日本)のために死ぬのは当然だ。だが、俺(日本)は、おまえ(アメリカ)のために、決して死なない。なぜなら、俺(日本)は『平和主義者』だからだ」こういう論理は、果たして「尊い」のでしょうか?

・・・アメリカの覇権は衰え、中国にその地位を脅かされるようになっています。日本も、世界とアメリカの変化に対応し、変わっていく必要がある。そうでなければ、イギリスが日本との同盟を破棄したように、アメリカも日米同盟破棄を通告してくるでしょう。それを喜ぶ人もいるでしょうが、喜びは、長く続きません。なぜなら、中国が、「固有の領土である」と主張する尖閣、沖縄を奪いにやってくるからです。

・・・藤原先生ご自身の「リットン報告書」と日本政府の対応についての評価が続きます。<リットン報告書を受諾して、すなわち名を捨てて実を取り、アメリカやイギリスにも満州国の利権の一部譲ってやるくらいのことをしておけば、日本は英米と協力し共産ソ連の南下に対抗できたのです。絶好の機会を逸した上に日本は世界の孤児となったのです。冷徹な計算のない、余りに稚拙な外交には嘆息が出ます。>

・・・「なぜ日本は、先の大戦で負けたのか?」私が出した結論は、「日本は、孤立したから負けたのだ」です。

・・・日本は、中国に対し連戦連勝でしたが、結局最後に敗北しました。中国は、連戦連敗でしたが、結局最後に勝利しました。なぜ、もう皆さんはおわかりですね。中国は、アメリカ、イギリス、ソ連を味方につけていたからです。・・「外的バランシング」(同盟関係増強)を重視した中国は、「内的バランシング」(軍備増強)を重視した日本に勝った。

・・・1.米国との同盟関係をますます強固にしていくこと。 2.ロシアとの友好関係を深化させていくこと。 3.韓国と和解すること。

・・・ジアラ氏は、どういう見解だったのでしょうか?<・・たとえ今後、北朝鮮が核兵器を所有することになっても、アメリカ政府は、日本が自主的な核抑止能力を獲得することを許さない。東アジア地域において、日本だけは核抑止力を所有できない状態にとどめておくことが、アメリカ政府の対日方針だ。この方針は米民主党だけではく、共和党政権も賛成してきた政策だ。>

・・・孤立せずに、「事実上の核保有」を実現する方法があります。「ニュークリア・シェアリング」です。これは、核兵器を持たないベルギー、ドイツ、イタリア、オランダがアメリカと結んでいる条約。・・これらの国々は日常的にアメリカの核を使って訓練しています。

・・・日本政府は、「人民解放軍が尖閣に上陸したら、即日排除する!」と決意し、実行する必要がある。電光石火の早業で尖閣を取り戻した後、アメリカ政府、国連安保理に相談するのです。この順序が逆であってはなりません。人民解放軍が、日本への攻撃をつづければ、米軍は動き、国際社会は「クリミア併合」後の対ロシア同様、経済制裁に動くでしょう。

・・・日本が得られる教訓は、「アメリカに利用されるとロクなことがない」ということ。もし、トランプ・アメリカが、「中国と覇権争奪戦はしない。アジアのことは中国に任せる」となれば、アメリカ抜きで日中戦争になる可能性が出てくる。だから、日本は中国に「動く口実」を与える挑発を慎むべきです。・・日本は、アメリカに利用されロシアと戦うハメになったジョージアやウクライナと同じ道を進まないよう、細心の注意が必要なのです。日本が目指すのは、あくまで「アメリカを中心とする対中国バランシング同盟の構築」です。そのためには、中国を挑発してはいけない。中国批判のレベルは、決してアメリカの対中批判レベルを超えてはいけません。

・・・アメリカと、インドが日本の最重要国家です。次に、・・EUです。・・二つの理由で、大事です。まず、経済規模が大きい。(イギリスを含む)EUは、世界GDPで約23%を占めている。もう一つは、情報戦に強いこと。・・最重要の国々=アメリカ、インド 重要な国々=EU、ロシア、中国の脅威を感じている国々(台湾、ベトナム、フィリピン、オーストラリアなど)

・・・国力でドイツに劣るイギリスが勝利できた要因は二つです。・「外交力」によって、有力な国々を味方につけることができた(そのために、イギリスは大きな譲歩をしている)。 ・外交を導く、確固たる「大戦略」があった。一方、強い経済、強い軍隊があったドイツは、それにあまりにも頼りすぎ、「大戦略」でイギリスに負けたのです。

・・・「歴史は80年ごとに繰り返す」という説があります。ウィリアム・ストラウス、ニール・ハウの著書「フォース・ターニング」(ビジネス社)は、まさに○○「歴史は80年ごとに繰り返す」に関する本です。・・しかし、歴史は、「正確に」繰り返すわけではありません。なぜなら、人間は、「歴史から学ぶことができる」生き物だからです。』

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