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2018年7月 4日 (水)

自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由 (伊藤祐靖著 新潮社)

自衛隊に不満があって辞めた人がそれらの不満ばかりを記したものかと思って読み始めました。確かに不満は書かれていましたが、依然愛着も持っていることが感じられる著作でした。

『・・・「他人が真似できない量の科学的なトレーニングをこなした奴が勝つ」という極めてシンプルな法則通りのことをすれば、本当に試合に勝てるようになるのだ。中でも私の人生を大きく変えたのは、「他人が真似できない量をこなす」という部分だった。それは苦しい練習に耐えるとか、痛みをがまんするとかの話ではない。レベルが上がっていけば、そんなことは至極当然、誰もがやっているからである。勝負がつくのはそこではない。勝負というものは、どれだけ多くのものをあきらめたのか、いったい何を捨ててきたのか、で決まる。なぜなら、どんな人でも一日は平等に24時間しかないからである。
・・・今は予科練っていうと立派なところだと思っている人が多いけど、「よたれん」って呼ばれて元不良の巣みたいなもんだった
・・・彼は敵ではない。我々、幹部候補生を育てようとしている兄貴分なのだ。くだらないことを考えていないで、兄貴分を信じてみようと心に決めた。・・青鬼の我々後輩に対する愛情を感じ、私は救われた。彼がいなければ幹部候補生学校を中途離脱していたかもしれない。
・・・私の命を守ってくれたコミュニケーション能力とは、警戒心とか、社交性とかではない。外国語能力とかでもない。それは、余裕である。そのままの自分をさらせる余裕、自慢でなければ、自虐でもない。ただ等身大の自分をさらす能力だ。
・・・作戦が行われる期間の2倍は平気でなければならない。・・一瞬でも苦痛を感じたり、何かを我慢したりしているとすれば、そこでの戦闘には絶対に勝てない。戦闘にならないんだよ。だって、いるだけでストレスを感じてしまうなら、戦闘になったとたん、肉体が死んでしまう前に、その環境ストレスとコンバットストレスがメンタル殺しちまうからな。
・・・いかなる環境下に置かれたとしても一瞬たりとも苦痛を感じないようになるための訓練、現代社会の利便性を捨てきってそのありがたみさえも忘れるための訓練を自ら実行しなければならない立場になった
・・・中年以降の典型的な自衛官とは、目指していると思っていることと、実際に目指していることの間に大きなギャップのある人のこと。加えて、それに気づいているのか、気づいていないのか微妙な人たちを指す。
・・・自衛隊は米軍の思想と習慣を参考にしながら(模倣しながら)、帝国陸海軍の伝統も残そうとしている。いいとこ取りという考え方もできるが、優柔不断、どっちつかずのノンポリシーと見ることもできる。
・・・任務達成のためにすべてのことを諦めることが軍人らしさだ。任務達成のためには保身に走る心や遵法精神や、道徳心も、すべてかなぐり捨てなければならない。何の見返りもなく、任務達成を目指す。これが軍人らしさだ。
・・・こういう無茶な話は、自衛隊ではよくあることである。何人もの業務を1人が行わなければならない。どう考えたって無理なのに、なぜかいつもできてしまう。それは、形だけを整えるからである。
・・・「はだかの王様」とは、何をしても祭り上げられ、間違いを指摘されることなく扱われるものである。私には、なる条件が十分に備わっていた。・・私が「はだかの王様」にならないためには、階級、年齢に基づく上位者という概念を自分の中から外さなければならないし、上位者として扱われないようにしなければならない。
・・・多くの師匠やその人たちを紹介してくれる軍人との人間関係を築くには時間がかかる。自分で休暇をとって、飛行機に乗り、彼らの家に行き、一緒に食べたり飲んだりしながら、お互いの人間性を理解しあわなけばならないからである。そういうつながりは一緒に過ごした時間が長くなればなるほど太くなり、広がっていく。
・・・”いくさごと”で一番大切なことは、異国の20歳も年下の女性から教えられた。それは私がずっと探し求めていたもので、一つのことに本気になる。一つのことを真面目に考えるという姿勢そのものだった。そして、それを習得した瞬間に思い出したのは、父親の言葉だった。「暗殺なんか、簡単だよ。殺すと決めたのなら、それだけすればいい。周囲を巻き込みたくないとか、自分が生きていたとか、ひどいのになると捕まりたくないとかな、二つも三つも欲しがるか難しくなるんだ」』

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