夫婦脳 (黒川伊保子著 新潮文庫)
このブログを始めた頃に描いた黒川女史の書籍です。興味深い事項が多数ありました。50代の私としては勇気づけられる部分もありました。
『・・・そもそも男と女は、ものの見方が違うのである。女性は、ものの表面を舐めるように見る癖があり、男性は空間全体をまばらに眺める癖がある。
・・女は、それが何であれ、着目点に共感してほしい生き物。
・・・フェロモンには役割がある。異性には、遺伝子情報(免疫抗体の型)を匂いで知らせているのだ。動物たちは、なんと、生殖行為に至る前に、互いの遺伝子の生殖相性を、確認しているのである。
・・・ヒトのメスの生殖サイクルは、妊娠、授乳期間があるので約3年。したがって、女性は、恋に落ちて3年間だけ、相手の男性に「あばたもえくぼ」状態になり、3年以内に生殖に至らないと、急に相手のあら捜しを始めるようになる。恋の終わりに、女たちは「彼は変わった」というのだけど、変わったのは、たいてい女の脳の方なのだ。
・・・右脳(感じる領域)と左脳(言語機能局在側)の連携が良く、感じたことが即ことばになる女性脳。だから、女たちは、感じたことを感じるままにどんどんことばにしていくのである。逆に言えば、脳に溢れることばを口から出さないとストレスが溜まる。
・・・人間の骨髄液は7年で入れ替わる。毎日少しずつ入れ替わるのだが、まるまる入れ替わるのに7年かかる。すなわち、満7年以上前の細胞は残っていないのである。
・・・男性脳には、鈍感力がある。目の前の人の表情変化になんか心を惑わされずに、強い集中力を、長く継続する力だ。
・・・女性脳には、「長い文脈」を一気に把握する才能がある。・・だから、女性は、年を取って、経験の数が増えるほど、とっさの判断に揺るがなくなる。見た目よりも、押の強さで、女の年齢は知れるのだ。
・・・「全体を見通せて、かつ、今自分が全体の中のどの位置にいるのか」をつかめないと、男性脳は疲弊する。すなわち、男性脳は、ゴールが見えない事象に対する耐性が、女に比べて著しく低いのだ。
・・・「彼女にキレられたとき、どう対処したらいい?」・・対処法はただひとつ。「君を傷つけているの?申し訳ないことをしたね」と、その傷に優しく触れて、真摯に癒すことだ。
・・・女性の対話は、男性のそれとは、目的が違うのである。女たちは、感じたことを語り合い、共感することによってコニュニティの核を作ると共に、互いに感じたことが似ていることを確認しあって、自分の感性が群れからかけ離れていないことに安堵する。計測機器のゼロ点調整のみたいなものである。
・・・男女雇用機会均等法以後、この国の職業婦人から消えたのは、この覚悟だったのではあるまいか。・・覚悟をした方が自分の心が清々しくなるので、生きることが楽になる
・・・脳裏に過去の知識を総動員し、今の状況に対応する知恵をダイナミックに創出する女性脳は、状況の変化にびくともしない。逆に、予定を細かく決められると、「対応の最適化」がしにくくなるので、しんどいのである。・・女性脳の真骨頂は、臨機応変さにある。
・・・女性脳は、客観評価には、それほどの価値をおいてはいない。・・女性脳は、気持ちに触れてもらうと、自分自身を認めてもらったような気がする
・・・脳科学から言えば、結婚30年を越える頃には、見るのも嫌だった夫に、徐々にいとおしさが戻ってくるはずである。結婚35年目ともなると、今までにない一体感を経験するはずだ。
・・・ヒトの脳には、感性の7年周期があり、その4倍の28年間で、正反対の感性に向かう。この28年という単位で世の中を見ると、大衆感性のトレンドが見えてきてとても面白い。
・・・人生で一番頭が良いのはいつか、ご存じだろうか。実は、50代の半ば以降なのだ。ヒトの脳のありようからみれば、人生のピークは、意外にも遅くにやってくる。50代半ば、人の脳は、連想記憶力を最大にする。これは、ものごとの本質や人の脂質を見抜く力である。・・単純記憶力で生きているうちは、人生の基礎工事をしているに過ぎない。・・単純記憶力が翳りを見せ始める20代後半、脳はやっと狂ったような情報収集を止め、クールダウンする。すると、脳の持主は、周囲が見え、社会的自我が立つ。・・混沌の30代の終盤、40歳直前になると、誰の脳にも、めでたく”物忘れ”が始まる。これが、意外にも脳の大事な進化なのである。脳は、単純記憶力を連想記憶力にシフトしていくにあたり、余分な記憶をリリースする。
・・・女性たちのフェロモンセンサーの感度のピークは25歳といわれる。女性は、視覚や味覚など、他の感覚器の感度も25歳にピークを迎える。理由は、20代が最も出産に適した年齢だからだ。
・・・女性は、客観的評価ができないのではなく、客観的評価に興味がないので、それに付き合うのにうんざりするのである。・・組織に「いい隙」がなければ、ちゃんとした品格ある大人の女性が、のびやかに活躍することはかなわない。逆に言えば、そういう女性が存在するならば、その組織には、「いい隙」がある、ということになる。
・・・ヒトの脳の感性とは、まことに度し難い。主観と客観がより合わさるようにして、自己実現感をつくっている。それは、他人から見たら何でもない誇りに支えられるかと思えば、人もうらやむ境遇にいても、虚しかったりする。
・・・熟年離婚は、ボディブローのように後から効いてくる。たしかに、離婚した直後は、せいせいして重しが取れたような気持がするだろう。しかし、やがて、圧倒的な敗北感が襲ってくる。なぜなら、熟年離婚とは、長い人生時期を否定する行為だからだ。
・・・妻の脳は、「たとえ夫が逆側を指さしても、私はオレンジのバッグが買いたいのだろうか?」という自問の命題に挑戦しているのである。無意識に、だけど。・・夫が、自分の決めた側を指さしたら、かえって意気消沈してしまうのが、妻という生き物なのである。
・・・女の恋には、浮気というのは案外少なく、「深い確信」→「嫌気」→「次の深い確信」と
・・・健全な脳は、健全な睡眠が作るといっても過言ではない。
・・・この夏、あなたも、爽やかな印象を残したいのなら、Sのことばを駆使してみよう。
・・・一流のリーダーとは、実に自然で、気持ちのいい存在であるに違いない。あるべきところに物事を納め、流れに逆らわず、かといって流されない。その極意は、流れを先に読み、次の流れを自ら創り出すことにある。実のところ、世の中の、本当に脳の働きがいい人は、「頭がいい」だなんて褒められてはいない。たいていは、「運がいい」と言われているのである。「流れを先に読み、次の流れを創っている」ことに、一般の人は気づかないからね。ダンスの名手のように自然なので。
・・・年をとると、身体は動かなくなるけれど、意識のコントロールは豊かになる。この一体感は、昔は到底わからなかった。・・リーダーが、全責任を負う覚悟で「主たる背骨」をまっとうする一方で、パートナーは、彼の一部になる覚悟で、彼の背骨を、自分の背骨だと知覚する。ダンスの至上のパートナーシップというのは、どうもそういうことらしい。』
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