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2018年1月 7日 (日)

洞察力 弱者が強者に勝つ70の極意 (宮本慎也著  ダイヤモンド社)

プロ野球に入った当初、ここまで活躍できるとは予想されなかった著者が、正しい努力により輝かしい成果を収めることができた、その理由を知ることができ、参考になりました。

『・・・一方で、実際にチームという組織を動かす点でいえば、やはり現場にいた方が勉強になる。
・・・「チームはエースと4番だけでは成り立たない。目立たない脇役でも、適材適所で働けば貴重な存在になる。主役になれない選手は「脇役の一流」を目指せばいい」初めてのキャンプで言われた際には、身震いしたのを覚えている。
・・・数字で評価される主役とは異なり、脇役の評価はどれだけ首脳陣からの信頼を得られるかで決まる。
・・・だが、組織の中で脇役が主役になれるかというと、そうではない。主役には主役なりの、脇役には脇役なりの役割というものがあるからだ。
・・・自己分析が何よりも重要なのは、一般社会でも同じだろう。どんな人間でも自分がかわいく、実際よりも高く自己評価してしまう。それでは自分の役割を正しく理解することはできない。一方で自己評価が謙虚過ぎれば、実際の能力よりも低いところから始めなければならず、力を発揮することはできない。
・・・PL学園では、人が嫌がることにも率先して取り組む重要性を教えられた。基本にあるのは人間としての成長が野球にも必要な目配り、気配りに通じるという考え方だった。
・・・私が見てきた印象では、勝負強いとされる打者は、腹が据わっていると感じさせる選手が多い。・・好機に成果を残す大前提として、技術は必須である。そのうえで、持っている技術を重圧がかかる場面でも発揮するには、勇気と経験による割り切りが必要になる。
・・・もちろん、努力が報われるとは限らない。シーズンが終わってからの3か月間にどれだけ計画的にトレーニングをしたとしても、翌シーズンんで良い成績を残せる保証はない。ただ、やらなければ絶対に良い結果は出ない。
・・・気力を維持することは特別な才能の一つだと感じている。若々しい気力を保ちながら、子供ほど年の離れた選手と共に汗をかき、息の長い現役生活を続けた。これはもう、「あっぱれ」としか言いようがない。
・・・注意してみなければ気づかないような細かな仕草にこそ、人の本質があらわれる。
・・・優勝経験がある中日の選手たちは、自分たちがやるべきことを明確に理解していた。優勝するために必要なことが、経験で分かっていたというべきだろうか。結果を先に考えるより、今すべき自分の仕事に集中することができていた。だから、緊張状態でも普段通りのプレーができた。
・・・棋士の羽生善治さんが著書で次のように書いている。良いパフォーマンスを出せる精神状態というのは、一番はリラックスして楽しんでいるときで、二番は重圧を感じて緊張しているときだと。重圧がかかる状態というのは、能力が引き出されるときでもあるという。そして、重圧を感じる中でよいパフォーマンスを出すには、やはり練習量が重要だとも書かれていた。極限状況の中では練習量が心のよりどころになるのは、どんな世界でも同じのようだ。
・・・結果はコントロールできないが、どう準備するかは自分でコントロールすることができる。準備を整理することで、打てなかったらどうしようと結果を考える思考の隙間が少なくなっていった。
・・・大きな目標ばかりを設定しても、苦しくなって妥協する部分が出てきてしまう。一方で小さな目標だけでは、スケールの小さな選手で終わってしまう。
・・・わずかな目配り、気配りの積み重ねがプロフェッショナルの仕事では大きな差を生む。
・・・物事を決断する時に一つの物差しにしていたのは、自分の損得は考えないということだった。
・・・野村克也監督は「変化を恐れないのが一流」と話されているが、私は、「変化」とは「勝負」を懸けることだと思っている。安全を確保しては本当の意味で変化することはできない。丁か半かの勝負を懸けなければ、大きな成果を得ることはできない。・・周りを見渡してみると、実績のない人ほど過去の小さな成功体験から離れられないように感じる。・・ただ、忘れてならないのは、変化の前には自己分析が必要ということだ。自分の力量がどれほどあり、何が不足しているのか。現状を分析できていなければ、変化しようにも回り道になってしまう。
・・・ボールを相手の胸に向かって投げる。キャッチボールというのは守備の基本動作である。兼任コーチとして指導する中で痛感したのは、ボールを投げられない選手はいくら守備の技術を練習しても上達しにくいということだった。それならば、守備の技術練習に入る前にとことんキャッチボールをさせた方が良い。最近ではそう考えるようにさえなった。
・・・転機が訪れたときに、好機に転換することができるか。訪れた転機をつかむためには、地道な練習を積み重ねるしかない。
・・・変化を受け入れ、新しい場所でどう成果を残していけるか。変化を続けられた者だけが生き残ることができる。
・・・日本人と積極的にコミュニケーションを取ったり、配球を研究したり、日本の野球に慣れようとする選手は成功することが多い。逆に「俺はこれでやってきたのだから」と自分のスタイルにこだわる選手は、結果が残せずに一年で帰国してしまう。
・・・どんな仕事であっても優れた成績を残すと周囲がチヤホヤし、厳しいことを言ってくれる人は少なくなる。環境に甘んじてしまっては、成長は止まってしまう。
・・・人間が勝てないものの一つに、年齢があるという。どんな天才でも平等に年齢を重ねるし、体力はいつか衰えてきてしまう。
・・・一つの球団の支配下登録選手は最大70人(育成選手を除く)と決まっている。誰かが入団すれば、一方で誰かが退団しなければならない。・・一つの基準になっているのはチームにおける年齢のバランスといえるだろう。・・(プロ野球の平均選手寿命は約9年で、平均引退年齢は約29歳とされている)。「高卒は5年目、大卒、社会人は3年目」。入団してから一軍に上がるまでの猶予期間として、球界でよく使われてきた言葉だ。
・・・現役時代、二軍暮らしが長い選手と話していた時に、こんなことを感じていた。戦力外を免れることができても「来年こそ頑張ろう」と本気で前を向ける選手は少ない。ほとんどの選手は「助かった。あと一年やれる」と胸をなで下ろすだけだった。まずは自分が組織の中でどの立場にいるのかを感じることだ。その感性がなくなれば、戦力外を通告されて初めて自分に足りなかったものに気付くことになってしまう。
・・・成功した投手に共通しているのは、登板時には信じられないほどの集中力を見せるということだった。
・・・チームに新しい選手が入ってきたときには、少し癖がある性格の方が期待できたものだ。少しぐらい生意気で「やんちゃ」と感じる性格の方が、選手として大成する可能性を秘めていると思うからだ。
・・・失敗は誰でもするもの。進んでしようとする人間はいない。だが、それを誰かや環境のせいにして逃げていたら、また同じことを繰り返してしまう。失敗の原因を考えて、次への対策を見つけることが反省である。
・・・合理性ばかりを求めていると、弊害が出るケースが多い。19年間の現役生活を経験した中で、一つ言えることがある。物事の結果をコントロールすることはできないが、プロセスはコントロールすることができるということである。・・相手がある以上、結果に至るまでの準備までしか、自分ではコントロールすることができない。言い換えれば、大切なのは結果ではなく、どういった準備をしたかというプロセスだともいえる。どんな世界にも通じる部分があるのではないだろうか。・・この一見無駄に見えることが、必ずしも無益だとは限らない。失敗を重ねる中で、当時の考え方は正しくなかったのだと反省したり、アプローチの仕方をかえてみようという新しい発想が生まれることもある。結局は無駄なことを経験してきたからこそ、次からは無駄を省けるようになる。無駄なことが、無駄だと気付くことができる。無駄を重ねることが、本当の力を身につけることにつながると思うのである。
・・・間近で見ていて、「本番に弱い選手」に共通していると感じるのは、試合に通じる練習をしていないということだった。
・・・努力と結果は必ずしも結び付くわけではない。なぜなのだろうか。よくよく観察すると、それは正しい努力をしているのか、それとも間違った努力をつづけているのかということなのである。
・・・マイナス思考自体は悪いことではないと思っている。・・マイナス思考を積み重ねて最後にプラス思考に変えるのは、準備として正しい順番だといえる。・・マイナス思考を積み重ねることで、最後には「あれだけ厳しい練習をこなしたのだから」とプラス思考に変えられるのである。
・・・「体」「技」の順番に鍛えていけば自ずと「心」も強くなっていく。そうして「体・技・心」がそろうのである。
・・・プロ野球の世界では、素質がありながら、集中力が持続しないために定位置をつかめない選手もいる。そういった選手は、おしなべて好不調の波が激しいものだ。
・・・以前、原辰徳さんの著書の中で、東海大学などで監督を務めた父親の原貢さんから「悩み事や考え事は、布団の中で考えてはいけない。暗い中で、良い案は浮かばない。電気をつけて部屋を明るくし、いすに座って考えなさい」と助言されたという話を読んだことがある。
・・・自分で考えることを学ばなければ、変化していくことができない
・・・必要以上の重圧を感じることは、行動を制限することにもつながりかねない。
・・・スカウトの世界では「担当した選手が(入団時の)契約金を年棒で稼げるようになったら成功」といわれているそうだ。
・・・プレーヤー全員が同じ志を持てないのだとしたら、指導者が同じ方向を向く「役割」を与えればいい。たとえ個人が違う方向を向いてしまったとしても、「役割」を限定することでチームとしてのベクトルを同じ方向に向けることはできる。
・・・可能性があるうちは、「脇役」ではなく、チームの「主役」を目指してほしい・・小学生のように可能性が広がっているうちは全員がホームランバッター、エースといったチームの主役を目指した方がいい。いつかは、他者と比較する中で自分は「脇役」に徹しなければならないと気付くときが来る。それまでは、周囲が可能性を限定することはないのである。
・・・部下を指導する場面では、かける言葉には細心の注意を払わなければならない。・・そんな中で一つだけ言えることがあるとすれば、最後は選手本人に選ばせなければならないということである。
・・・結果を考えて逃げ道を作ってしまうと、本当の意味で前進することはできない。自分ではまっすぐに進んでいると信じていても、実際には斜めに進んでしまっていることもある。アプローチの仕方を間違えば、目的地から遠ざかってしまう。
・・・勝負の世界である以上、等しくチャンスを与えることが目標ではない。あくまでチームの勝利が目標だからだ。ここでコーチが考えなければならないのが、他の選手からの文句が出ない状況を作ることだ。・・特別扱いをするときには力関係を明確にした上で、明らかに上と思われる選手を選ばなければいけない。・・特別扱いには他の選手から不満が出てもおかしくはなかった。だから何よりも心がけたのは、山田には他の選手以上に厳しく接することだった。・・特定の選手にチャンスを多く与えるからには、周囲に「あいつなら仕方がない」と思わせる状況を作らなければならない。コーチには周囲を納得させるだけの理由と厳しさが必要になる。そのバランスを見誤ると、組織は崩壊してしまうだろう。
・・・選手の側もコーチを観察している。コーチに情熱があるかないかは、敏感に感じ取っている。情熱をもって指導してくれるコーチに対しては、選手も答えようとするものだ。
・・・部下に任せて、万が一の場合には責任を取る。星野さんの下で貴重な経験ができた。
・・・決断力があるかどうかは、能力の一つということができる。決断の遅い人間というのは、周囲に迷惑をかけてしまうことになるからだ。
・・・私自身、何か相談を受けた際には相談者の利益よりも、物事を大局的に考えて助言するように心掛けている。・・相談者の利益を優先すれば、結果的に不利益となることもある。
・・・部下を叱るタイミングは、いつがベストなのだろうか。私が心掛けていたのが、なるべく指導するべきプレーが出たその瞬間、その場で注意をするということだった。
・・・わざわざ若手を委縮させる必要はないが、委縮した中でも力を出せるようになることが、本当の実力につながることも多い。
・・・仕事に一生懸命取り組むのは、当たり前のこと。それ以上に何ができるかを考えて努力するのが、本当のプロとしての姿勢ではないのか。
・・・上司は部下の専門分野に強くなければならない。部下から質問を受けた際や、部下が壁にぶつかっているときには、「それは、こうした方が良い。なぜなら、こういった理由があるからだ」と部下が納得する理由とともに解決策を示すことができるのが、本来の上司の姿といえるからだ。
・・・「野村再生工場」と呼ばれることが多かった当時だが、移籍してきた選手たちは周囲にも良い影響を与えていた。チームとは異なった環境でプレーしてきた選手の考え方や言葉は、刺激になることが多かったからだ。
・・・勝負ことにこれをやっていれば大丈夫といった定石はない。そのときの最善の選択肢は何なのか。組織が置かれた状況や時期によっても、答えは変わってくるだろう。その時点でのベストを選択することができるのか。優れた指導者に共通するのは、最善の選択肢を選び続けられるバランス感覚ともいえる。』

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