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2017年9月28日 (木)

新聞記事から(消費税が争点?北に嘲笑される 編集委員 田村秀男) (産経新聞 29.9.27 朝刊)

他に指摘している人は見かけませんが、傾聴すべき意見だと思います。

『10月22日に実施予定の衆院選の最大の争点が「消費税増税」になりそうだとは、なんとも面妖だ。安倍晋三首相の解散理由は緊迫する北朝鮮情勢など国難への対応で、まさにその通りだが、危機の根源は慢性デフレに伴う国内の停滞にある。対照的に経済規模を膨張させてきた中国は国際社会で日本を圧している。

 経済小国北朝鮮はその中国の経済支援の下で、核・ミサイル開発にいそしんできた。日本は早急に脱デフレを実現し、防衛を含む国力を回復させるべきなのだ。なのに、デフレの元凶である消費税増税をめぐって各党が街頭で口角泡を飛ばすとは、かの国のロケットマンに嘲笑されよう。

 北朝鮮問題とは、拡大中国に対する萎縮日本という構図の一コマである。グラフはそれを端的に物語る。中国の名目国内総生産(GDP)は2010年に日本を抜いて以来、差を広げている。貿易総額の9割が中国相手の北朝鮮はこの間、中国から入るモノやカネを大幅に増やしてきた。

 日本の方はアベノミクスがもたらす円安・株高でいったん消費者や企業の心理は好転したが、14年4月の消費税率8%への引き上げの結果、デフレ圧力が再燃。企業は国内での設備投資や賃上げを渋る。企業が使わないまま手元で寝かせる利益剰余金は年間で20兆円以上も増え続けている。

 対照的に、2%の消費税増税によって家計から徴収する5兆円余りの税増収のうち2兆円を使うという安倍首相や、全額を回すという民進党の前原誠司代表の教育無償化・負担軽減の論戦に何の意味があるのだろうか。国政新党を立ち上げる東京都の小池百合子知事は消費税凍結を主張するが、選挙戦術の域を越える真っ当な危機認識があるのか、と問いたいところだ。

 故三島由紀夫は47年前、「無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残る」と産経新聞(当時は「サンケイ新聞」)紙上で警告した。今や「極東の経済大国」の存在感すら薄れている。9月上旬、訪米した横田めぐみさんら北朝鮮による拉致被害者の家族会は、トランプ政権、議会や国連などの関係者から「日本はいったい何をしているのか」と一様に聞き返されたという。

 北朝鮮問題について、トランプ大統領は米国を一貫して支持する安倍首相と良好な信頼関係を保っているが、他方では中国の習近平政権による対北抑制策に強く期待している。習氏は小出しながら北との貿易・金融取引を制限して米国からの報復をかわし、10月後半の共産党大会で権力基盤を固める。ユーラシア全域を中華圏に取り込む一帯一路構想推進により、対外膨張の加速をもくろむ。

 半島危機が今後どうなろうと、アジアや日本にとって中国の脅威はやまない。安全保障では対米依存、国内は増税でデフレ容認、経済停滞は無視、防衛力もGDPの1%でよい、というなら、今回の衆院選は米国の失望を買うだけだろう。』

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