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2017年7月23日 (日)

ルポ 絶望の韓国 (牧野愛博著 文春新書)

朝日新聞ソウル支局長の著作で、私に言わせれば韓国人に甘めの記述だと思いましたが、それなりに参考になりました。

『・・・元議員の知人は語る。「韓国は圧縮成長した。欧州が百年、日本が五十年かけて築いた繁栄を我々は三十年で達成したと息巻いているが、その代わりに社会的な葛藤がたくさん生まれた。地縁や学閥があちこちある。だから、賄賂やコネ、圧力を使った社会不正がまかり通るのだよ」
・・・「韓国では両班文化がまだ息づいているのだよ」 韓国の人々の権力に対する執着を韓国の閣僚経験者の尋ねると、こんな答えが返ってきた。韓国の人々は食事をするときに、お茶碗を手に取らない。お茶碗を置いたまま、箸やスプーンを使って食べる。これも袖の長い韓服を着用した両班(朝鮮時代などでの支配階級)が、袖が汚れない食べ方をしていたことをまねたとされる。元閣僚は語る。「誰でも両班にあこがれる。人生に一度でいいから、両班になってみたいと思う。社会がまだ成熟していないから、発想が単純なのだよ。」
・・・韓国の大統領府や外交部で記者会見に臨むと気づくことがある。かんっくの記者団の質問に共通した特徴がある。質問が長いのだ。彼らは自分の主張をまず延々と語る。そして、最後に、「それであなたはどう考えるか」と聞く。だから記者会見の記録を見ると、圧倒的に質問の方が長かったりもする。
・・・議員になりたい人は後を絶たない。「人生の最後の花道、一度は自分もとあこがれる仕事が国会議員なのだよ」と、韓国政府の知人は語る。議員として活躍する人も多いが、権力のおぼれ、勘違いする連中も数多くいる。
・・・朴槿恵は、もともと歴史認識問題や慰安婦問題に強い関心があったわけではない。彼女にとっての最大の関心事項は、自身の政治権力をあまねく周囲に認めさせることにあった。
・・・慰安婦問題に限らず、日韓歴史認識問題では、韓国の保守勢力は常に進歩・革新勢力から政治攻撃されてきた。過去、歴史認識を巡って数ある日韓合意がなされてきたが、韓国内で唯一、依然批判されていない合意がある。1998年10月、小渕恵三首相と金大中大統領によって発表された共同宣言だ。
・・・「韓国人は、大統領を旧朝鮮王朝の王のような存在と考えている」(韓国政府元高官)という。元高官はその理由について「韓国は朝鮮王朝の後で日本統治を受け、さらに米国主導で大統領制を導入した歴史的な背景がある」と語る。韓国大統領府(青瓦台)の構造は、米国のホワイトハウスとずいぶん違う。ホワイトハウスは大統領の執務室と同じ建物の中に、大統領補佐官らの執務室があり、何かあればすぐに集合できるが、青瓦台の場合は秘書官たちの建物は別棟になっている。大統領府の勤務経験者の一人は「大統領に会いに行くためには、車に乗らないといけない。検問もあるから数分かかる」と語った。
・・・深刻に感じられるのは、韓国の外交官たちが異口同音に語る「国際社会における日本の地位が落ちている」という現状認識だ。口には出さないが、「日本は財政難や政局の混乱に加え、大震災まで起きて元気がない。本当に気の毒だ」という視線を日本に投げかけている。韓国「ジャパンスクールの落日」は、日韓の政治パイプに加えて、官界・外交パイプの先細りという現象を生み出している。
・・・「五年(大統領の任期)ごとに、政策が総入れ替えになる」という韓国政治の宿痾が、せっかくの数少ない朴槿恵政権の成果も押しつぶそうとしている。
・・・韓国の大企業は数の上では1%に満たないが、売り上げは6割以上を占めるとされる。就職難に直面する若者層がこうした社会構造に不満を貯める中で、オーナー一族による非常識な事件も後を絶たない。
・・・韓国では「同じ大学」「同じ学部」の先輩後輩の結びつきは、日本と比べものにならないほど強い。
・・・韓国には最も結束力の強いことで有名な三つの団体がある。「湖南(韓国南西部の全羅道地域を表す言葉)郷友会」「高大(高麗大)校友会」「海兵戦友会」だ。・・海兵隊OBには代々、「街中で後輩の隊員を見つけたら、必ず小遣いをやって元気づける」という不文律があるのだという。
・・・大統領との特殊な「人脈」があるというだけで、何の見識もない一般人が巨大な権力を振り回せたことが、韓国の人々の大きな怒りを買ったのだ。チェのような「コネ」を使うことは、韓国の人々にとっての「あこがれ」でもあるが、その貧弱な経歴と手に入れた権力大きさのあまりのギャップに、韓国の人々は嫉妬に似たような強い嫌悪感を抱いたのだ。
・・・精鋭部隊は、北朝鮮のなけなしの食料や装備を優先的に与えられるうえ、政治学習を徹底的に行うために忠誠心や士気も高い。兵役も10年と長い。韓国軍にも特殊部隊があるし、もちろん能力も優れているが、大半はわずか3年足らずで兵役を終える若い軍人だ。
・・・「核の共同管理」とは、米国が北大西洋条約機構(NATO)加盟国と行っているシステムだ。米はドイツ、イタリヤ、ベルギー、オランダの4か国に航空機搭載型の核爆弾を配備。4か国は警備などに協力しているとされ、核兵器使用について意見を言えるが、最終決定権は米国にある。
・・・韓国にとっての最大の外交課題は北朝鮮だ。韓国外交部を見ても、北朝鮮問題を扱う朝鮮半島平和交渉本部には同部のエリートと呼ばれる人材が集中して集められている。
・・・韓国は1965年の日韓国交正常化に伴い、日本から巨額の支援金を得た。北朝鮮との体制競争に勝たせるため、米国は韓国の安全保障の相当部分を負担するとともに、朴正熙政権の開発独裁路線を認めた。韓国人自身の努力が加わり、「漢江の奇跡」と呼ばれる急速な経済成長を達成した。ソウルを訪れる日本人の多くが、「ちょうど少し前の東京を見ているようだ」と語るように、経済や社会生活分野で、韓国はずっと日本の背中を追いかけてきたともいえる。
・・・韓国では近年、農村部が抱える「嫁不足」の問題から国際結婚が急増。2003年に約4万4千人だった外国人配偶者は、10年5月時点で約13万6千人に急増、このうち外国人妻は約12万人を占めていた。経済的な事情からベトナム出身者が多く、韓国人と結婚したベトナム人女性は当時、約3万2千人と全体の約四分の一を占めていた。
・・・韓国政府によれば、韓国の2013年の武器輸出額は約34億ドル(約4180億円)。10年前の12.8倍に達した。輸出先は米国や中東、東南アジアなど約80か国に上る。
・・・知る人ぞ知る話だが、豪州の仮想敵国はインドネシアだ。
・・・世界は今、米国でも欧州でも日本でも格差社会が広がりつつある。人々には不満やいら立ちが募っている。それをぶつける相手を探すとき、自分たちと関係のない集団がいればとても便利だ。周囲の共感が得られやすいからだ。それが、米国で黒人排斥運動に、欧州で移民排斥運動に、日本では嫌韓運動につながったと、私は思っている。・・今、韓国では日本の「失われた20年」よりも更に深刻な不況が迫りつつある。本書で書いたように、韓国の人々にも不満が溜まっている。・・釜山の少女像を取材したときに見たのは、「怒りのはけ口」を求めている人々の姿だった。

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