一見過激なタイトルですが、読んでみると納得させられる内容でした。
『日本は、世界の中でも独特な場所に位置している。世界の二つの大国と、奇妙な朝鮮半島の隣にあるからだ。・・日本にとってはほぼ利益のない朝鮮半島において、北朝鮮が、暴力的な独裁制でありながら、使用可能な核兵力まで獲得しつつある一方で、韓国は約5000万の人口規模で世界第11位の経済規模を誇りながら、小国としての務めさえ果たしていない。・・ベトナムは、日米にとって非公式だが強力な同盟国となりうるし、フィリピン、インドネシア、マレーシア連邦なども、潜在的な同盟国である。
・・・「戦争の目的は平和をもたらすことにある」ということだ。戦争は、人々にその過程で疲弊をもたらすために行われるのである。・・戦争が終わるのは、そのような資源や資産がつき、人材が枯渇し、国庫が空になった時なのだ。そこで初めて平和が訪れると、人々は、家や工場を立て直し、仕事を再開し、再び畑を耕す。
・・・なんと今日に至るまで、ボスニア・ヘルツェゴビナでは、いかなる「戦後復興」も行われていないのである。・・なぜか。「戦争が終わっていない」からだ。まだ「平和」ではなく、「戦争が凍結された状態」なのだ。「凍結されている」ということは、「まだ終わっていない」ということなのである。「邪悪な介入」のもう一つの形態は、難民支援だ。
・・・私は論文「戦争にチャンスを与えよ」を書いたのである。そこで主張したのは、「戦争には目的がある。その目的は平和をもたらすことだ。人間は人間であるがゆえに、平和をもたらすには、戦争による喪失や疲弊が必要になる」ということだ。外部の介入によってこの自然なプロセスを途中で止めてしまえば、平和は決して訪れなくなってしまうのである。・・外部の介入によって戦争を凍結すれば、かえって戦争が長引いてしまう。これが私の論文の主張であり、これは難民問題でも同様だ。・・介入してもよいのは、和平合意と難民移住などに関する責任をすべて引き受ける覚悟がある場合だけである。みずからの外交力によって和平合意を実現できないようなら、紛争に介入してはならない。
・・・もちろん、カダフィは、素晴らしいリーダーではなかった。それでも、無政府状態よりははるかにましだ。「介入のために戦争を開始すること」と「戦争を止めるために介入すること」は、同じ程度に避けるべきことなのである。
・・・戦略とは「生物」である。戦略は存在するものであり、それは戦争の結果を決定するものであるが、その働きは、普遍的で、どの時代のどの地域のどの文化にもあてはある。・・そして戦争には、紛争を何らかの形で終わらせることによって、平和をもたらす、という目的がある。
・・・国際的な軍事指揮では、参加国部隊の行動の質を維持するのが特に難しい(最低限のレベルのパフォーマンスにまで落ちる可能性がある)
・・・NGO活動の多くは、結果的に活動的な戦闘員を供給しているのである。・・NGOが彼らの支援のために介入することによって、敵側がけってき的な勝利を収めて戦争を終わらせる、というプロセスを構造的に妨害してしまうのである。・・このようなNGOは、「戦いの緩和」という彼らの表向きの目標などは実現できず、かえって戦争を長期化させてしまっているだけだ。・・今日では、あまりに多くの戦争が「終わることのない紛争」となってしまった。その理由は、外部からの介入によって、「決定的な勝利」と「戦争による疲弊」という二つの終戦要因が阻止されるからだ。
・・・ただ、これだけは答える。私が見たところ、安倍総理はまれに見る戦略家だ。
・・・「日本が尖閣についてどう考えているか」は、中国には全く関係がない・・問題になるのは、ただ「中国が尖閣をどう見ているのか」であり、「中国が尖閣で何をやってくるのか」だけである。・・中国の外交部(外務省に相当)は、私が知るほかのどの国の外務省とも異なる性質を持っている。外交部が集めた情報は、けっして 「中央」には到達しない。各国で集められた情報は、北京の外交部には届くが、そのボスである習近平には届いていないのだ。
・・・私は、戦略的な方向性として、日本の自衛隊を「自衛隊」のままにしておくべきだと考える。つまり、専守防衛の方向性で、このまま将来も進んでいくのが、基本的には最も正しいと思っている。ただし一つ問題がある。中国だ。・・今後、日本の自衛隊は、より迅速に作戦行動を行えるように体制を整えることが重要になってくる。そのために日本の自衛隊に必要なのは、「訓練」ではなくて「演習」なのである。・・「演習」で学ばなければならないのは、失敗した状態、つまり物質や人員が足りない状態の中でも任務を実行するメンタリティ(精神性)だ。・・残念ながら自衛隊の規模は、日本のような大きな島国を守るには小さすぎる。それらを解決するためには「改革」が必要である。
・・・「中国封じ込め同盟」への貢献という意味で、アメリカの日本への期待は高まるはずだ。
・・・北方領同に関していえば、私は決して楽観的ではない。プーチン氏は、「ロシア帝国」を修復するまでは領土拡大を続ける、と考えている・・それはもちろん、どれだけ経済制裁を科されても、クリミア半島を維持し続ける、ということも含んでいる。・・プーチン氏が自国民に発しているメッセージは、以下のようなものだ。「・・あなたがたは、世界最大の領土を持つ帝国の人間であり、これは誰に与えられたものではなく、戦争に勝つことによってロシア人自身が獲得したのである。前任者はロシアの帝国の多くを失ったが、私(プーチン)は絶対に領土を失うことはない。むしろ取り返すつもりである。だからその代わりにロシア人は耐えなければならない。帝国の人間として耐え忍んでほしい」
・・・世界一の人口を抱え、世界第二位のGDPを持つにもかかわらず、アフリカの小さいな独裁国家のように不安定なのが、中国の本質だ。彼らは、2000年代の16年間に、「平和的台頭」という協調路線から、「対外強硬路線」、「選択的攻撃」と、三度も対外政策を大きく変えている。・・こうした「不安定」な国を隣に抱えているのは、非常に骨の折れることだ。
・・・中国の第二の特徴は、社会は急速に変化しているのに対して、独裁制はそれほど変わっていない、という点にある。・・現在、北京政府は、イデオロギーの継続的な減退とともに、経済の急成長や国民の収入の上昇を望めない事態に直面している。これは習近平の仕事が日ごとに難しくなってきていることを意味している。・・ここに第三の問題が加わる。権力を最大限集中化させるために、習近平が胡錦涛の信奉者の粛清を決心したことだ。
・・・「核心的リーダー」とは、「決してリタイアしない人物」のことだ。・・毛沢東や鄧小平のような存在だ。政治的任務を終えた後でも、「引退」はせず、終身的リーダーとして生きる、ということである。
・・・さらに厄介な問題がある。中国は、隣国を完全に見誤る伝統を持っている点だ。2014年に起きたベトナム沖の海底油田をめぐる事件が、その典型である。・・中国外交には、組織的欠陥がある。・・政策を実質的に決定する部門が、国外の理解や自国が置かれている情勢についての認識を欠いてしまうのである。そのために、対外政策において、不安定さと無能さを露呈してしまうのだ。
日本がEEZ内での中国漁船の操業を許している、という状態自体が、中国に「あいまいさ」を伝えているからである。こうした「あいまいさ」こそ、日本側は避けるべきなのだ。・・「あいまいな態度の日本」と「隣国すら誤解する中国」というのは、最悪の組み合わせと言える。というのも、日本の「あいまいさ」が、中国の「誤解」の余地をさらに大きくしてしまうからだ。これこそが、現在の日中間に存在する決定的な問題なのである。・・日本は、武装した人員を常駐させるべきである。名目は、「環境保護」など何でも構わない。「海底保護調査団」でも、「サンゴ礁・漁業保護調査団」でもよい。しかし、必ず武装させておくことが重要である。こうして日本は、「あいまいさ」を排除できるからだ。
・・・クレムリン周辺の人々は「ノヴォロシア」という概念を今日に復活させようとしている、ということだった。・・ウクライナの一部を切り取って、「ノヴォロシア」という共和国として独立させ、ロシア連邦に組み込む、という考えだ。
・・・CIAは、アメリカの政府機関の中で最も仕事のできない機関だ。CIAの人員は、言語や文化を学ぶのに忙しく、インテリジェンスの肝心なところで失敗を繰り返してきた。米国民全員が知っていることだが、アメリカは、外交や軍事と比べて、インテリジェンスがはるかに不得意なのである。
・・・国際問題に関するロシアの対処法は、古典的なやり方にのっとっている。大国は、いきなり部隊を動かしたりはしない。まずその発する言葉に大きな意味を持たせるものである。この点、中国は異なる。・・中国のように、「尖閣だ、尖閣だ」と叫んでおきながら何もしないようなことは、ロシアは決してしない。ロシア人は、言葉に重みのないリーダーを軽蔑するからだ。
・・・フィリピン国内には、二つの要因がうごめいている。第一は、フィリピンがアメリカの植民地であったという歴史に起因する・・第二は、フィリピンの支配層やエリート層の多くが、人種的には中華系で、裕福である上に、中国とも深い関係を持っており、フィリピンという国にそれほど忠誠を誓っているわけではない、という点だ。・・要するに、フィリピンには、「政治的なまとまり」というものがない。そのため、ベトナムのようには行動できないのだ。
・・・フィリピンは、「反中同盟」からすでに脱落した、ということである。しかし、フィリピンの脱落は、「反中同盟」にとって必ずしもネガティブなことを意味しない。というのも、日本、インド、ベトナム、それにインドネシアやマレーシアの部分的な参加による「反中同盟」は、フィリピンを含めた「反中同盟」よりも、はるかに強力だからだ。
・・・人々は、平時には、脅威を深刻なものとして考えられないものだ。平時に平和に暮らしていれば、誰かの脅威に晒されていても、空は青いし、何かが起こっているようには思えない。・・平時には、誰も備えを必要と感じない。むしろ戦争に備えること自体が問題になる。・・そこから戦争がはじまるのだ。
・・・北朝鮮の軍事関連の技術者を侮ってはならない。彼らは、他国の技術の5倍以上の生産性を有している、と答えるからだ。たとえば、イランは、核開発に北朝鮮の5倍もの時間をかけながら、一発の核兵器に必要な核物質さえ作り出せていない。人工衛星の技術もない。要するに、北朝鮮の軍事開発力は、きわめて危険な域に達しており、真剣に対処する必要があるのだ。
・・・北朝鮮のミサイルは、侵入の警告があれば即座に発射されるシステム(LOW)になっているかもしれない、という点だ。このシステムでは、アメリカの航空機やミサイルが侵入してくれば、北朝鮮側の兵士が自動的に発射ボタンを押すことになる。LOWとは、レーダーからの警告に即座に反応することを意味する。
・・・人間というのは、平時にあると、その状態がいつまでも続くと勘違いをする。これは無理もないことだが、だからこそ、戦争が発生する。
・・・戦略の規律が教えるのは、「『まあ大丈夫だろう』という選択肢には頼るな」ということだ。なぜなら、それに頼ってしまうことで、平和が戦争を生み出してしまうからである。
・・・日本には「降伏」、「先制攻撃」、「抑止」、「防衛」という四つの選択肢がある。ところが、現実には、そのどれも選択していないのである。
・・・すべての軍事行動には、そこを超えると失敗する「限界点」がある。いかなる勝利も、過剰拡大によって敗北につながるのだ・・大国は、中規模国は、打倒できるが、小国は打倒できない。小国は、常に同盟国を持っているからだ。小国は、規模が小さいゆえに脅威を与えない。だからこそ、別の大国が手を差し伸べるのである。・・戦略のパラドキシカル・ロジックは、紛争が発生するところで、必ず発動する。そして優れた戦略家なら、そのパラドキシカル・ロジックを正面切って克服できるのだ。
例えば、あなたが100ドルの収入のうち5ドルを貯めて、それを投資に回す、というのは、「一般常識の世界」ではよくあることあ。これはこれで、極めて正しい選択となる。ところが、「戦略の世界」、要するに大規模戦争のような「戦略の世界」ではいくら「戦術レベル」で大成功を収めたり、戦闘で目覚ましい勝利を収めたり、作戦に成功して「戦域レベル」で相手国領土を占領できたとしても、「大戦略」のレベルですべてが覆ることがあるのだ。最終的な結果は、最上位の「大戦略」のレベルで決まるからである。・・「戦略の世界では「成果を積み重ねることができない」。これが、戦略の第一のポイントだ。戦争に直面して戦略を考えるときに、最初にやるべきは、「常識を窓から投げ捨てる」ことなのである。・・「戦略の世界では矛盾や逆説だけが効果を発揮する」ということである。理解が容易な「線的なロジック」は、常に失敗するからだ。・・「戦略の世界」では、敵が存在する。この敵が、あなたを待ち換えているのだ。すると、「直線で最短距離を行く」のは、最悪の選択となる。う回路だったり、曲がりくねって運の方が良いのだ。・・「戦略の世界」では、・・常に奇襲が狙われるのだ。奇襲を受けた側は、まったく準備ができていない状態で寝首をかかれることになる。
・・・「戦略の世界」では、勝利が敗北につながるように、敗北も勝利につながる。・・「戦略の世界」では、すべてが常に移り変わるのである。
・・・「戦略」において、「常識」は敵であり、「通常の人間的な感覚」は敵であり、唯一の味方は「紛争の冷徹なロジック」なのである。そして、「紛争の冷徹なロジック」が最も重要になってくるのは、主に外交のレベルにおいてだ。
・・・実際にイギリス人は、アメリカ人のひどい仕打ちを繰り返し受けた。しかしイギリスは、それに黙って耐えたのである。これが「忍耐力」だ。・・フランスは、100年以上争った相手だ。そして当時も、アフリカ、インドシナ半島、マダガスカルなど、およそ17件の植民地・領土係争案件を抱えていた。ところが、イギリスrは、交渉ですべてを素早く解決したのである。しかもイギリスは、すべての案件で譲歩した。フランスの完全勝利だ。これによって初めて、大英帝国とフランス帝国の協力関係が構築されたのである。
・・・なぜイギリスは、最終的に勝利できたのだろうか。それは、彼らが「戦略」を冷酷な視点でとらえることができたからである。要するに同盟関係は、自国の軍事力より重要なのだ。
・・・しかし、「戦略」の観点で言えば、外務省が権力を保持していることは、極めて重要あ。そうでないと、「戦略」のレベルで、すべてが覆ってしまうからである。
・・・「戦略の世界」では、「規律」が物を言う。ここで言う「規律」とは、「戦略のロジックを出し抜くことはできない」という認識能力のことだ。・・イギリスは、強力な「規律」を持ち、「戦略」にそれが不可欠であることを知っていた。「大戦略」のためには、特に極めて不快なことも受け容れる必要があることを知っていたのである。
・・・なぜイギリスのエリートたちは、こうした政策をとりえたのだろうか。それは、英国の貴族の土地の管理を通して、金と権力をよく理解していたからだ。・・ラグビーやウォールゲームといったスポーツを通じて、貴族は暴力というものを学ぶ。
・・・「ルトワックさん、お宅の息子さんは、まだ英語がうまくしゃべれないようですし、どこまで授業についてこれるかわかりませんが、それでも彼は大丈夫です。彼は自分の世話を自分でできるからです」・・ミラノの学校では退学処分になり、イギリスの寄宿学校ではむしろ評価されたことだ。告げ口をせず、独力で問題を解決しようとしたからだ。この文化がイギリスをイギリスたらしめている。彼らは、「暴力」「戦争」「平和」、そして「同盟」が何たるかを理解しているのだ。・・暴力のポジティブな側面を理解し、暴力の存在から目を背けない。これが、イギリスの強みなのだ。
・・・「戦略のパラドックス」だ。なぜこうなるかと言えば、戦略においては、常に「他者」が存在するからだ。・・奇襲の目的は、一時的に敵の反応を奪うことにある。・・それが有効なのは、敵の反応を奪うことで、「パラドキシカル・ロジック」の発動を抑えられるからだ。
・・・いかに戦術的勝利を重ねようとも、その勝利を完全に相殺してしまう、より高次の戦略が存在する。それが「同盟」だ。私の見るところ、戦国日本で、このことを最も理解していたのは徳川家康だった。そもそも、国の運命を左右するような大戦略レベルにおいて重要なのは、まず人口と経済力、そして国民の団結力である。・・適切な同盟相手を選び、戦術レベルでの敗北に耐え続ければ、100回戦闘に敗れても、戦争に勝つことができる。
・・・信長の真の卓越性は、このハイレベルの「規律」を必要とする作戦を計画し、実行したことなのだ。
・・・「作戦」よりも「同盟」の方が、戦略としては上位に位置する。ここでも参考となるのは、徳川家康のケースだ。彼のような人物でさえ、城を明け渡したり、戦闘で負けたり、裏切り者がでたり、と非英雄的なことをも耐え忍ぶ必要があった。ところが、その「規律」こそ、戦略に必要なのだ。
・・・現状以上のアメリカを望めないなら、現実のアメリカと付き合うしかない、ということだ。この「規律」こそ、大戦略で必要となるのである。・・もう一つ忘れてならないのは、「同盟」という戦略は、しばしば不快で苦難を伴うものでもある、ということだ。
・・・当時のヨーロッパの人々の思想にとって、根本的な位置を占めていた書物がある。「オヂュッセイア」と「イーリアス」の二冊だ。・・今日のひょーろっぱでは、クレフェルトのいう「生命の法則」が拒否されている。「生命の法則」とは、端的にいえば「男は戦いを好み、女は戦士を好む」というものだ。もちろん、この法則をあざ笑う人もいるだろう。ところが、この法則が拒否されている国で、少子化が起きているのだ。戦いを嫌う国では、子供があまり生まれていないのである。
・・・イスラム教を「アクシデント的に生まれた宗教」と尚氏のには理由がある。・・要するに、その当時には強力な敵となる帝国が周囲にいなかたために、イスラム教は急速に広まったのである。
・・・ヨーロッパが成功していたのは、ヨーロッパが戦場であった時代だ。「戦争のないヨーロッパ」は、「ガソリンの入っていない車」のようなものなのかもしれない。いずれにせよ、ヨーロッパのダイナミズムが戦争によってもたらされてきたことは明白だ。・・ヨーロッパ人は、「イーリアス」をもはや読んでいない。ところが、アメリカ人はまだ読んでいる。そして中国人たちも読み始めた。ここ五年間で、五つの版が出版されているほどだ。
・・・ロシアもヨーロッパの国の一つであるが、ここで、この国の三つの特徴を指摘しておきたい。第一は、「戦略は上手だが、それ以外はすべて下手だ」という点だ。・・ところが、彼らは、経済がまるで分っていない。これが第二の特徴だ。・・「大きな規模(スケール」で考えることができる」ということが、ロシアの第三の特徴だ。・・空間だけではなく時間的にも大きなスケールで考えることができる。空間的にも、時間的にも大きな視野を持っているのだ。西ヨーロッパの人々には残念ながら、そのような能力は備わっていない。
・・・ヨーロッパの活力は、常にその多元性から生じていた。フランス、ドイツ、イタリア、ポルトガルといった、それぞれ独自な国家同士が鎬を削っていたからこそ、ヨーロッパは活力に溢れていたのである。
・・・結論を射よう。ヨーロッパの将来は、財政要因や経済要因で決定されるものではない。それを決定するのは文化だ。ところが、ヨーロッパの人々は、もはや「イーリアス」を読んでいないのである。
・・・政治の混乱状態が続くと、たとえば、元大阪市長の橋下徹やドナルド・トランプのような現象が起こってくる。このような人物が登場してくる背景として、行政府と議会が相いれない状態にある、ということが言える。そして、国内政治の混乱故にこそ、アメリカの対外政策もマヒするのである。
・・・家康は、「戦略」にとって重要なことをすべて体現していた。それは、武田信玄の「風林火山」という言葉で示されるものとは、すべて正反対のものである。たとえば、林のように静かに動かしてはならない。外交によって「同盟」を築くためには、すべての人々と話をする必要があるからだ。「同盟」を形成するには常に語る必要があるし、時間がかかるのである。
・・・戦争は可能な限り避けよ。ただし、いかなる時にも戦争が始められるように行動せよ。・・戦争準備の最大の目的は、戦争開始を余儀なくされる確率を減らすことにある。・・敵の情報を心理面も含めて収集せよ。また、敵の行動を継続的に監視せよ。・・攻撃・防御両面で軍事活動を活発に行え。ただし戦闘、特に大規模な戦闘は、よほど有利な状況でない限り避けよ。・・武力行使を最小限に留めることは、説得に応じる可能性のある者を説得する助けになり、説得に応じない者を弱体化させる助けになる。・・消耗戦や他国の占領ではなく、機動(詭動)戦を実施せよ。電撃戦や奇襲で敵をかき乱し、素早く撤退せよ。目的は、敵を壊滅させることではない、なぜなら、彼らは、のちに我々の味方になるかもしれないからだ。・・同盟国を得て、勢力バランスをシフトさせ、戦争を成功裏に集結させられるように努めよ。・・もっとも有用な同盟国は、敵に最も近い国である。彼らは、その敵との戦い方を最も熟知しているからだ。・・政権転覆は、勝利への最も安上がりな方法だ。・・戦争が不可避となった場合には、敵の弱点を衝く手法と戦術を適用せよ。
・・・相手のメンタリティを理解できて初めてその行動が予測できる・・すべての敵は、潜在的な友である。現在の友も、潜在的な敵なのだ。・・正面からぶつかり合うような戦いは避けるべきなのである。なるべく詭動を使うべきであり、迅速な攻撃と撤退を繰り返すのだ。ここでの目的は、「敵の封じ込め」であり、「敵の破壊」ではない。
・・・戦争の目的の一つは、戦争が終わった時点で自らの立場を優位に置くことにある。だからこそ、外交が重要となるのであり、これは戦時のおいても変わらない。・・「常に狙うべきは『調略』である」ということだ。
・・・相手の弱みに徹底的につけこみ、敵が弱体化するまで忍耐強く待つべきである。
・・・「勝利に真に必要なのは、戦争での勝利ではなく、外交と調略である」という戦略的教訓
・・・「構内の政治体制が整うまで大統領の権限は大きく制限される」
・・・もし私が大統領顧問だったら、彼に何を提言するだろうか。その一つは、「プーチンを侮辱するのを止めて交渉する」ということだ。・・そのためには、まずNATOを「統一した勢力」として扱うのを止める必要がある。NATO加盟国の足並みをそろえて統一政策を実施するのは、無理があるからだ。
・・・「ウクライナの国土統一」は「アメリカの国益」ではない。ところが、「アメリカに協力的なプーチン」は、「アメリカの国益」である。私だったら、まずプーチンと交渉する。そして中国問題に集中するようにプーチンに持ち掛けるのだ。
・・・日本の立場は極めて特殊である。・・世界には200近くの国が存在するが、そのなかで、日本は大国以外でトップの位置を占めている。それゆえ、日本は、他の大国同士のバランスを常に気にせざるを得ない立場に置かれている。
・・・中国という国は、大国であるにもかかわらず、恒常化した不確実性のなかで運営されている。国内体制が、政治的、経済的に極めて不安定なのである。
・・・県局がホワイトハウスから連邦議会に移る、ということであり、行政の力が弱体化する、ということだ。習近平はいつでも失脚する可能性があり、アメリカ大統領の権力も弱まる。この二つの要因から、日本は、極めて奇妙な状況に置かれることになる。唯一安定した大国がロシアとなるからだ。
・・・個人的な見解だが、日本は、長年にわたって誤った国連対策を取り続けている。・・日本は、常任理事国入りの戦略として、「誰もよくしないプラン」を追求してきたのである。・・「6席もいりません。ブラジルやドイツはかんけいありません。われわれが欲しているのはたった1席です。これをインドと共同で得ることです。2,3年ごとに交代で日本とインドで席を分け合うのです。』こうなれば、インドはロシアから強い支持を得るだろう。日本もアメリカから強い支持を受けるはずだ。』