2017年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
フォト
無料ブログはココログ

« 2017年3月 | トップページ | 2017年5月 »

2017年4月

2017年4月21日 (金)

最貧困女子 (鈴木大介 幻冬舎新書)

自分の知らない世界について、かなり知ることができました。悲しいものでしたが、事実を知っておかなければならないと思いました。

『・・・僕なりの考察では、人は低所得に加えて「三つの無縁」「三つの障害」から貧困に陥ると考えている。三つの無縁とは、「家族の無縁・地域の無縁・制度の無縁」だ。・・三つの障害については、「精神障害・発達障害・知的障害」と考える。・・これらの障害は「三つの無縁」の原因ともなっている。
・・・頑張ると言っていた翌日に頑張れなくなるのが貧困だ。
・・・「地元を捨てたら負け」「上京したら負け」という感覚もある。永崎さんが強調するのは、上京による「婚期逃し」のリスクだ。・・せっかく上京しても、余計貧乏になったみたいな子も多いし、特に女の場合、上京したら100%婚期逃しますよね。
・・・永崎さんのような層が拡大すればするほど、同じ所得層にあるにもかかわらず貧困状態にある小島さんのようなじょせは、無理解と批判のターゲットになってしまうのだ。「同じ月収10万円で、きちんとやれている人がいるのに、やれない人間には努力や工夫が足りないのではないか」・・年越し派遣村などを率いた湯浅誠さんが「貧困と貧乏は違う」と発言していたことがある。貧乏とは、単に低所得であること。低所得であっても、家族や地域との関係性が良好で、助け合いつつワイワイとやっていれば、決して不幸せではない。一方で貧困とは、低所得は当然のこととして、家族・地域・友人などあらゆる人間関係を失い、もう一歩も踏み出せないほど精神的に困窮している状態。貧乏で幸せな人間はいても、貧困で幸せな人はいない。貧乏と貧困は別物である。そんな言葉だったと思う。
・・・彼女らは女性の集団が苦手で、実際、女性集団から排除されがちなパーソナリティだたのだ。当然女友達も少なく、子供の頃から地域や学校生活の中で孤立してきたエピソードをもつ者が多かった。第4の共通点は、非常に強い恋愛依存体質だ。
・・・「出会い系のシングルマザーたち」の中で、僕は彼女らの陥っている状態を「隠れ破綻」と表現した。彼女らはすでに経済的にも精神的にも破綻してしまっているのだが、わずかばかりの金を出会い系サイトを介した売春で稼ぐことで、必死のその破たんを隠している状態にあった。・・結果的に彼女たちは自らの手で自らの窮状や苦しみを覆い隠し、不可視にしてしまっていたのだ。
・・・「夕食を作る美味しそうな匂いのする住宅街を一人ぼっちで歩いて、寂しくてつらかった」こんな昭和の漫画や映画みたいなエピソードは、ぼくの取材してきた虐待歴のある少年少女らに共通するいわゆる「あるある」体験だ。
・・・「大人」は頼れない。「大人」は何もしてくれない。この感情が実は、その後の人生をも左右するものになってしまう。
・・・彼女らが共有するのは、貧しさよりも「寂しさ」ということだった。ひとり親世帯がこれほどまでに増え、共稼ぎ世帯が当たり前となった昨今では、「家に帰ったも誰もいないし、食事の用意ができていない」という状況は、もはや一般的なものとなってきた。子供たちにとって、寂しさはもう当たり前のものだ。
・・・少女本人はどんな学童保育だったらよかったのかを聞くと、回答は明快だった。「小学校終わるじゃん?そうしたら放課後に友達と遊んで、それで夕方が夜になって腹が減ったら学童に行って食事して、ゲームしたりテレビ見たりして、その後にでも親が迎えに来てくれればよかったと思う。あと親が切れてる(虐待する)とき、夜遅くとかでも行ったら入れてくれて、泊めてくれるんだったら最高だった。実際(小学)3年の時とか、親に家から追い出されて、学童行ったのね。閉まってるでしょ?開いていたら良かったって、いまでも思う。」
・・・彼女たちもまた貧困状態から脱出できているとは言えない。それどころか、一度は抜けたはずの売春ワークに再び舞い戻ってきてしまう事例があまりにも多いのだ。その理由が、彼女らの異様に高い「恋愛自爆率」だ。彼女らは恋愛に救いを求め、恋愛でつまずき、恋愛でひとたび抜け出した貧困の中に舞い戻る。
・・・いわゆる「試し行動」。少女からすれば、初めて我がままを言える相手に出会えたので、我がままを爆発させたい!という感情もあるが、それ以上に裏切られ続けてきた人生の中で「この人は本当に自分を救える人なのか、偽善じゃないのか、どこまで私のわがままに耐えられるのか」という気持ちもある。・・語りつくされた感のある「試し行動」だが、彼女たちのそれは猛烈に安っぽく、衝動的で、面倒くさい。・・理解者を加害者に変えるほど、彼女らの抱えた痛みは大きく、長引く。
・・・これも書くことは躊躇われるが、僕が取材してきた子供時代に虐待や育児放棄などを経験してきたセックスワーカーのもつ傾向のひとつに「二股恋愛」「浮気恋愛」があった。もちろんすべてがそうではないし、愛した男一筋一直線な取材対象者もいたが、一般と比較してその傾向は顕著だったように思う。』

2017年4月15日 (土)

米中戦争 そのとき日本は (渡部悦和著 講談社現代新書)

たいへん参考になるところの多い書でした。

『・・・「トゥキュディデスの罠」・・これは古代ギリシャの歴史家トゥキュディデスが唱えた、「新たな覇権国の台頭と、対する既存の覇権国の懸念や対抗心が戦争を不可避にする」という仮説である。

・・・「距離の過酷さ(The Tyranny of Distance)」とは、「作戦地域までの距離」が作戦にいかに大きな影響を与えるかを表現した言葉で、もともとは「オーストラリアの歴史や独自性は、欧州からの地理的遠さと密接な関係がある」という、ジェフリー・ブレイニーの著書”The Tyranny of Distance)で使われた言葉だ。
・・・多くの専門家は「脅威=能力×意思」という公式で表現する。この場合の意思とは「他国を侵略する意思」だ。だが、私はこの公式は不正確だと思う。より正確には、「脅威=能力×意思+距離」、つまり、対象国の間の距離を変数として挿入すべきだと考えるからだ。
・・・現在はエア・シー・バトルの名称がJAM-GC(国際公共財への接近及び機動のための統合構想)に変更され、引き続き統合参謀本部第7部で検討されている。
・・・アジア太平洋正面におけるミサイル分野では中国軍が優位にある。中国軍はミサイル及び航空機によるアウト・レンジ戦法(敵の射程外から火力を発揮しこれを撃破する戦法)を採用し、米軍ほかの兵器の射程外から火力を発揮しようとしているのだ。中国軍は現段階においては、戦力に勝る米軍と本格的な戦争をしようとは考えていない。しかし、中国は現時点において米国以外の国(日本など)に対する短期限定作戦を想定しているし、近い将来において米軍と戦力が拮抗すれば、米軍に対する短期限定作戦も想定する---これが私の見解である。
・・・軍隊の作戦領域(ドメイン)が拡大している。従来は陸、海、空の三つのドメインが基本であったが、技術の進歩によって「宇宙」「サイバー空間」という新しい二つのドメインが加わった。米軍は、これら5つのドメインンのうち、「複数にまたがる=クロス・ドメイン作戦」(CDO)の相乗効果を重視している。・・米軍は各ドメインの作戦を統合することでの相乗効果を強調している。陸上戦力は、もはや陸での作戦のみを考えていては失格で、海・空・宇宙・サイバー空間での作戦をいかに活用し、相乗効果を発揮するかを考えなければならない。海・空の戦力も同様である。・・クロス・ドメイン作戦に次いで重要な作戦が「ハイブリッド戦」である。・・本書では正規軍と非正規軍(民兵、反政府グループなど)の混用、物理的破壊手段(軍事力)と非物理的破壊手段(謀略、情報操作などを活用した情報戦)の混用など、ハイブリッドな手段を活用した作戦をハイブリッド戦と定義する。
・・・いまやウクライナは、ロシアにとって最先端の技術や新たな戦い方を試すための実験場と化している。そこではサイバー戦、電子戦、情報戦、正規戦や非正規戦がミックスされたハイブリッド戦が続けられている。
・・・「超限戦」は、中国人民解放軍の喬良・王湘穂という二人の大佐が1999年に発表した概念・・文字通り、「限界を超えた戦争」であり、あらゆる制約や境界(作戦空間、軍事と非軍事、正規と非正規、国際法、倫理など)を超越し、あらゆる手段を駆使する、まさに「制約のない戦争」である。・・倫理や法の支配さえも無視するきわめて厄介な戦争観である。
・・・キル・チェインとは、ほぼリアルタイムで目標を発見、捕捉、追跡、ターゲティング(目標指示)、交戦(射撃)、射撃の効果を判定する---という一連のプロセスを指す。
・・・中国軍は、改めて米軍との実力の差を認識し、その差を埋めるべく翌年から大幅な国防費の増大に乗り出したのである。そのため、1996年から2015年の間に、中国の国防費は620%の大幅な上昇を遂げた。軍事力の整備に際し重視したが、「情報化」と「非接触戦争」だ。
・・・中国の潜水艦は、米軍が保有する音響監視システム(SOSUS)などの、広域にわたる潜水艦探知網によってその位置を常に監視されているが、逆に中国海軍はSOSUSのような水中センサーをごく一部しか整備していない。
・・・米国防省の年次報告書は、「中国の『後発制人』は建前に過ぎず、中国は朝鮮戦争において先制攻撃を行ったし、インド・ソ連・ベトナムとの国境紛争においても先制攻撃を行ってきた」と指摘している。
・・・「中国の軍事戦略」は、重大な4つの領域として海、宇宙、サイバー空間、核戦力を列挙している。
・・・戦略サイバー戦は、政府及び非政府システムなど、軍事的なシステムではない戦略的なシステムを攻撃することで、敵政府の戦闘を継続する意思や能力に影響を与えようとするものである。・・有事においてサイバー戦と電子戦は密接不可分な関係にあり、戦時においてはサイバー・電子戦として一体的に実施される。中国軍の電子戦能力は米軍に比較して劣っているが、サイバー・電子戦の重要性を認識している。
・・・SC-19以外では、高高度の衛星、例えば米国の全地球測位システム(GPS)を破壊する能力をもつDN-2を保有し、米国のみならず我が国にとっても脅威となっている。
・・・高周波兵器を開発中であり、5~10年後には実戦配備が可能となると予測する。高周波兵器とは文字通り高周波によって人工衛星の電子部品をオーバーヒート、またはショートさせることで損壊・破壊する兵器である。
・・・WU-14は、弾道ミサイルの弾頭(通常弾頭のみならず核弾頭も搭載可能)として発射されたのち、準宇宙をマッハ10で滑空し、目標に近づくと相手のミサイル防衛手段が対処できない。特異な軌道をして目標に到達し、これを破壊する能力を持つ。・・WU-14が使える兵器として配備されれば、日本と米国が採用するSM-3ミサイルや、PAC2/3ミサイルを駆使したBMD(弾道ミサイル防衛)では対処できず、その能力をさらに向上させる必要がある。
・・・実際の前方展開戦略においては、米国は同盟国や友好国とのネットワークを築くことで戦力投射能力の不利を補っている。とくに同盟国である日本、オーストラリア、韓国、フィリピン、タイの存在は大きい。
・・・米国の重要な目標は、中国の迅速な勝利を拒否することである。
・・・その論文な中で彼は、第一列島線を構成する国々(日本、台湾、フィリピン、インドネシア)とベトナム、シンガポールなどの国々の自国防衛を連接することで成立する「列島防衛」を提言しており・・・
・・・トーマス氏によれば、日米は戦争勃発の前後、役割を分担することになる。日本が担うのはPOSOW(準軍事組織による、戦争には至らない作戦)や「忍び寄る侵略」なる、日本的に言えば「グレーゾーン事態」に対処しつつ、南西諸島における対中国A2/ADを実施することである。・・日米が共同で行わなければならないこともある。「基地など重要施設の強靭性強化」と「ネットワーク戦」の実施だ。
・・・中国軍に対する作戦目標をどこに設定するかは、何をもって戦争終結とするかを決めることにもつながるため、極めて重要となる。この点に関してトーマス氏は、「撃破すべき第一の目標は中国海軍(つまり中国海軍の主要艦艇)」で、「第二が空軍(の航空機)」と断言していた。中国の海軍力に打撃を与えれば、中国本土への打撃を行う必要性が低下し、戦争のエスカレーションの抑制につながるからだという。
・・・CSBAの予測では、高出力レーザー兵器は5年以内、高出力マイクロ波兵器は5~10年で実戦配備可能であるという。電磁レールガンも10年以内で実戦配備可能になると思われる。
・・・ASBの成功を、技術面・兵器面でサポートする戦略に「相殺戦略(Offset Strategy)がある。これは「自陣営が優位な技術分野をさらに質的に発展させることで、ライバル国(中国やロシアなど)の量的優位性を相殺(オフセット)しようとする戦略」であり、要は相手の量に対して質で勝負しようというものである。・・「国防イノベーション構想(DII)」と密接な関係がある。・・米国が長期にわたって維持すべき五つの技術的優越分野として、「無人機作戦」「長距離航空作戦」「ステルス航空作戦」「水中作戦」「複合システム・エンジニアリングと統合」が想定されている。
・・・レールガン全体の開発は、今後10年以内には完成し、実戦配備されたことになると予想されている。・・第一段階の目標である32メガ・ジュールの砲口エネルギーを達成したという。このエネルギーだと弾体の射程は160㎞となる。第2段階では、1分間に10発の発射速度を達成し、発射に伴い発生する熱を管理する技術の開発を目指すという。・・レールガンと、指向性エネルギー兵器である固体レーダー(SSL:Solid State Laser)兵器である旨、説明してくれた。実戦配備の時期はSSLとHPMが5年以内、レールガンが5年から10年とCSBAでは見積もっている。・・一発当たりのコストの比較では、レールガンが3万5000ドル(ミサイルのコストの20~60分の1)、化学レーザーが1000ドル、SSLとHPMにいたってはわずか10ドルである。
・・・中国の特殊作戦部隊が空(空挺作戦、ヘリボーン作戦)や海から侵入し、破壊活動や重要目標の奪取に従事しつつ、ミサイルや航空機の火力発揮を容易にするためのセンサーの役割を果たすことになろう。この人間センサーの活用は、米軍もイラク戦争などで多用した基本的戦術である。
・・・我が国における宇宙とサイバードメインでの作戦能力の向上が急務である。
・・・中国は常套作戦としてのPOSOWを遂行し、米国の決定的な介入を避けながら、目的を達成しようと考える。準軍事組織による作戦の特徴は、①軍事組織である中国軍の直接攻撃はないが、中国軍は準軍事組織の背後に存在し、いつでも加勢できる状態にある。②非軍事組織または準軍事組織が作戦を実行する。
・・・中国は、あらかじめ潜入させている工作員などを活用し、紛争開始前後に沖縄をはじめとして日本のいたるところで破壊活動を実施、日本は混とんとした状況にある。
・・・機雷は大量生鮮が比較的簡単で、高価な艦艇よりはるかに安価である。対潜戦と同じく、中国海軍は対機雷戦にも弱く、この弱点を衝くべきである。
・・・戦争を抑止するためには日本が強い存在であることが大前提となる。戦争の抑止は力の均衡が必須の条件である。
・・・習近平主席の軍改革の目的は「戦って勝つ」軍隊の創設だった。戦う相手は日本であり、勝つ相手も日本である。戦って勝つためには手段を選ばない超限戦を実行する。超限戦では国際法も民主主義国家も論理も無視する。こういう手ごわい相手が中国であることをまず認識すべきである。
・・・この専守防衛というキャッチフレーズのために、国際的なスタンダードの安全保障論議がいかに阻害されてたことか。集団的自衛権の議論、他国に脅威を与えない自衛力という議論、長距離攻撃能力(策源地攻撃能力)に関する議論、宇宙の軍事利用に関する議論など、枚挙にいとまがない。例えば、「他国に脅威を与えない自衛力」にこだわれば抑止戦略は成立しない。
・・・国防省の事業からスピンオフした技術が米国の強さを支えている。例えば、インターネット、航空宇宙技術、人工知能(AI)、自動運転車、無人機システムなど枚挙にいとまがない。国防産業が米国経済の主柱であり成長産業である。・・最近の技術は軍民共用のデュアル技術が多くなり、単純に軍事アレルギーを引きずっていては世界の技術の発展から取り残されてしまう。
・・・グローバルに展開する武器を連接し、リアルタイム情報に基づいて迅速かつ効率的に火力打撃を実施するためには、強靭なC4ISRが不可欠である。
・・・・「米中戦争は、両国の経済を傷つけるが、中国経済が被る損害は破滅的で長く続き、その損害は、1年間続く戦争の場合、GDPの25%から35%の減少になる。一方、米国のGDPは5%から10%の減少になる。長期かつ厳しい戦争は、中国経済を弱体化し、苦労して手にいれた経済発展を停止させ、広範囲な苦難と混乱を引き起こす」』

2017年4月 5日 (水)

ブッダが教えた本当のやさしさ (アルボムッレ・スマナサーラ長老著 日本テーラワーダ仏教協会)

これまでにもこの著者の本は読んできましたが、少し違う視点からの記述もありました。

『・・・やさしいか、やさしくないかは、「相手が私の好む態度をとったかどうか」で、決まるのです。
・・・結局、世間のやさしさは、エゴなのです。自分に都合がよければやさしくて、都合が悪ければやさしくない、そういうことです。それだけのことなのに、私たちは、「やさしいから、良い」「やさしくないから、悪い」と信じて疑ったことがありません。
・・・生命は外から命を注いでもらわないと、死んでしまうのです。・・人間には、いろんな「刺激」が必要なのです。眼から耳から鼻から舌から身体から入ってくる刺激が必要なのです。その刺激は、他の生命からもらわないとうまくいきません。・・やさしさは、私たちの命を支えるために必要な刺激なのです。「自分に心地よい刺激を与えてくれる人」は、とてもやさしい。・・「やさしさ」という刺激は、私たちの「命」なのです。
・・・「生命は成り立っている」のです。無数の生命の協力によって、今ここにいる自分という生命が成り立っているのです。他の生命もまた、他の生命によって成り立っているのです。自分は、独立して存在しているのではありません。生命のネットワークのなかの一項目です。一つの中継点です。生命のネットワークの一員である一個の生命は、他の生命と正しい関係を維持しなければなりません。そこで成り立つ相互的な関係が「正しいやさしさ」であり、「生命の法則」でもあるのです。
・・・「やさしくいる」ということは、そんなに難しいことではないのです。我を張らず、余計なことを考えないで、自然の流れに沿って生きていれば、その人はやさしいのです。・・それぞれが自分の仕事をすればよい、それだけの話なのです。そこに「欲しい」という欲が割り込むと、ネットワークがダメージを受けます。・・本当のやさしさは、エゴの無い「生命」という次元なので、必要以上を求めません。「欲しい」というところまではいかないのです。
・・・因果法則をわきまえた立場で言うべきは、「威張るものではないよ」「エゴ、自我を捨てなさい」ということです。これは生命のネットワークの成り立ちを正しく理解した言葉です。
・・・固定的に「これはこの人がすべき仕事だ」ということは、ありません。どうやって能率、効率をよくするのかを考えて、そのときに上手にできる人がさっと動くだけでよいのです。それはいつでも、ものすごく自然に出てきます。・・仏教が言いたいのは、「生命の法則を理解して、自然に生きなさい。よけいなことを考えるなよ」ということです。これだけで人間が救われる道を示しているのです。・・「仕事はあるけど、疲れたから休んじゃえ」というならエゴです。「疲れて上手に仕事ができなくて、このまま続けても迷惑がかかるから休もう」というなら、自分中心でないから自然です。
・・・「やさしさ」というのは、ごく自然に生きることです。自己中心にものを考えないことです。「自我がない」ということが、「やさしい」ということなのです。・・私たちも時と場合に応じて、母親になったり、父親になったり、子供になったり、社員になったり、お詫び係になったりと、いろいろな仮の役割を果たさなければなりません。そのときは正しくその役割を果たせばよいのです。・・エゴを捨てて、ネットワークで自然に出てくる義務を果たすなら、ネットワークはあなたに必要なものをぜんぶ用意してくれます。満たされた生きていられます。
・・・生命のネットワークでは、生命を殺してはいけない。いじめてはいけない、侮辱してはいけないのです。自分を含めたあらゆる生命がネットワークの部品なのだから、当然のことです。
・・・こちらのエゴがないと、エゴでなぐられてもなんともないのです。・・ただ、エゴのない人に対しているときはエゴが発病しないので、安らぎを感じて穏やかに気持ちよく接するのです。・・エゴのない人に対しては、世界の態度が好意的だということです。・・テロリストには、「君が私を侮辱しても、私は君を侮辱しませんよ」というのが正しいやり方なのです。
・・・すべての生命に友情を広げることが、正しいやさしさの第一段階なのです。・・「一切生命が友情を期待するのは当たり前だ」と思うようになったら、メッターの心は間性です。やさしさの第一段階は完成です。・・友情の次に見えてくるのが、「抜苦(悲)カルナー」なのです。
・・・「困ったな」という人がいたら、助けてあげるのは当たり前です。それはネットワークの仕事です。カルナーが身につくと、生命のことをより深く理解できるようになります。
・・・ムディター(喜)は、幸福な人々を見て「ああ、とてもよかった」と思う気持ちです。他人の喜びを自分の喜びのように持ってくるのです。すごく心が広くなっていて、無数にいる他人の成功を我がことのように喜べるのです。
・・・一切の生命を平等な気持ちで見て、「不幸な生命もいて、幸福な生命もいて、不幸でも幸福でもない生命もいて、それぞれが自分の生き方で頑張っているのだ」と、平等な心をつくるのです。その心が「捨 ウペッカー」です。・・「愛」というのは使ってはいけない単語です。そうではなくて慈(メッター)・悲(カルナー)・喜(ムディター)・捨(ウペッカー)という四つの感情が正しいのです。この感情が、生命に対する基本的な法則の実践になります。これが本来のやさしさ、自然に素直に生きるために育てるべきやさしさなのです。』

« 2017年3月 | トップページ | 2017年5月 »