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2016年6月25日 (土)

語学で身を立てる (猪浦道夫著 集英社新書)

アマゾンの書評には必ずしも良いことばかり書いてあった訳ではありませんが、著者は様々な語学を学んでおられるようで、私にとってはいろいろと参考になりました。

『夢を実現するためには、なによりも「強い意志」が必要であること、その強い意志に支えられた集中力が必要であることを話します。
・・文藝翻訳家として仕事をしていくことは、作家の世界で芥川賞や直木賞をとって小説家として名を馳せるというのと同じくらい難しいことです。志としては立派ですが、初めからそうした仕事をじっさいにしようと思うのは無謀な考えです。・・文藝翻訳におけるデビューがこのように難しいのに対して、産業翻訳は、実力さえあれば、そしてそれなりの努力を怠らず、誠実に仕事をこなしている限り、生計を立てることは難しくないとあえていいます。・・もし翻訳者(とりあえずここでは和訳の訳者と考えます)として合格しなかったら、次の三つの理由が考えられます。 ① 語学の素質(センス)に問題がある ② 産業翻訳家としてやっていくのに必要な雑学知識が不足している ③ 日本語の文章表現力が不足している
・・この試験(通訳案内業試験)で最も難しいのは一時の筆記試験です。ここで90%近くがふるい落とされます。辞書なしで90点取れるぐらいでないと、受かる見込みはありません。特に豊富な語彙量と正確な作文力が要求されます。
・・技術関係の通訳をマラソンにたとえると、商談通訳は短距離走に該当します。実際に仕事をするのは一、二時間の場合が多いのですが、事前の予備学習とその場での集中力を要求されます。
・・(芸能・スポーツ関係の通訳)この分野は、一般に収入は、あまりよくないようです。私も二十数年前にそういう仕事を紹介されたことがあります。例えば外国人野球選手の通訳が、その典型的な仕事です。
・・規模の面で中くらいの語学学校は、たいていどこも経営難です。
・・技術的には、教師を目指す人は最低でも次のような勉強をしていく必要があると思います。・・言語学(特に形態論、統辞論、意味論)の基礎的な知識、・音声学の知識と発音の改善、・自分が教える言語で書かれた日本語の入門書を読む、・主要な教科書の研究とさまざまな学習プログラムを自在にアレンジできる力
・・語学力だけでなく、その国の事物に関する知識が深ければ深いほど、よい翻訳が可能になるということです。・・私の経験から言うと、文学部出身の人の翻訳は、比較的文章に癖があって、しばしば意外な思い込みによる間違いを犯していることが多く、優れた産業翻訳家はむしろ法学部や理工学部出身の人に多いように思われます。
・・通訳の場合、意外に思えるかもしれませんが、翻訳家とは方向性の異なる能力が要求されます。・・クライアントの発言を要領よく整理して、できる限り近似した内容を迅速に伝える能力を要求されますから、頭の回転が速くなければなりません。語学能力としては、日常会話で使われるこなれた言い回しを自由に使いこなせることも必要ですが、それ以上にフォーマルな場で通用する外国語を使えないと一流の通訳とは言えません。
・・よい語学教師とはどのような人物か、・・このようなことを考えるのに避けて通れないのが、学習者がどのようなタイプで、何を望んでいて、その人に自分が持っているどのような練習方法を採用あるいは応用するのかということをどの程度考えられるか、という点です。
・・情報収集を兼ねて翻訳学校で翻訳が一通り学べる講座をとってみて、講師に実力を判定してもらうとよいでしょう。そこで、太鼓判を押されれば、営業活動を始めるだけです。自分が確実に実力不足だと感じる人は、当然のことながら、実力を磨くのが先決です。
・・語学だけでなく、日本の地理、歴史、政治、経済などあらゆることに関心をもって、日頃から広く教養を磨いておくことが必要です。また、少なくとも自分の先行する言語を使用している国々の常識を身に着けておくことも重要です。
・・語彙に関しては努力すれば増やすことができるとして、問題は作文力でした。作文力は独学ではなかなか向上させることが難しいのです。作文がきちんとできる人は、解釈においても、読み誤りが少ないので、そのまま精進していけば、必ず一次試験をクリアできます。少なくともその素地を十分に持っていると考えられます。
・・潜在的には、外国語を教える優れた日本人教師にはかなりの需要があるのです。
・・私の経験では、高校時代から英語がとても得意だったり、帰国子女で日本語もよくできたりという人は別として、語学力を生かす仕事で成功した人はどこかである時期、一心不乱に努力した時期があるものです。ですから、まずは志を高く持って、一年間でもいいですから禁欲的な気持ちになって徹底的に自分を追い込んで語学の勉強に励んでみてください。
・・主婦の場合、最も心しなければならないのはハングリー精神の欠如です。
・・私の経験では、熟年者が翻訳の仕事を目指す場合、気を付けるべきことがいくつかあります。一つは、道楽半分にやらないこと。・・もう一つは、時代の流れに対応できていること。例えば、パソコンとインターネットを操れることは、翻訳業界では必須条件です。
・・プロとしての語学力とはなにかと一言でいうと、二つの言語間の翻訳能力です。・・通訳をやとう側からすれば、カッコよく話すのは二次的な問題で、それよりその会社の扱っている商品の知識や、外国の法律や商習慣などをよく心得ていて、場合によっては適切にアドバイスをはさみながら、会話の腰を折らないように要領よく口頭翻訳してくれる人にこそ、価値があるのです。
・・翻訳家を目指そうという人に、意外と(あるいは意外ではないのかもしれませんが)基礎的な文法知識が不十分な人が多いということです。ここで私が言う文法とは、日本語にない類の文法をもきちんと使いこなす力です。言い換えればその言語の文章を、とりあえずネイティブスピーカーに理解してもらえるレベルの言葉に置き換えるのに必要な知識を、情報検索の能力と定義できます。
・・これから投資すべきなのは、まずパソコンとインターネットを操るのに必要な機器です。・・次に必要なのが辞典類です。
・・語学力を武器に仕事をするということは、広い意味で外国文化を日本に導入することです。ですから、双方の国の人々にとって常識的なことは知ったうえで臨まないと、良い仕事はできません。・・こうした常識を培う一つの効果的な方法は、新聞、雑誌などの他に、学習している言語の国の小学生が使っている教科書、参考書のようなものを読んでみることです。特に、社会と理科の本はおもしろいうえ、よく役立ちます。
・・微妙な表現上の視点の違い、というものを面白く観察し、そのパターンを自分の頭の中の辞書にインプットしていくことが、語学センスの洗練に結びつくのだと思います。
・・訳読法は一字一句を自国の言葉に置き換えていくメソッドで・・手っ取り早く外国語の文献を読めるようになりたいという学習目的の人には、最善の方法だと思っています。・・ただこのメソッドで学習する場合、語学教師の質によってその成果が大きく左右されます。・・大手企業の海外赴任者向けの語学研修プログラムを担当した時には、この方法で文法体系を理解してもらってから会話の演習を導入して大きな成果を出せたと自負しています。
・・私が考える理想的な外国語学習プログラムを紹介しましょう。・・ステップ1 文法体系の把握・・ステップ2 平易な現代文の精読・・実力が中途半端な人にとって、速読は百害あって一利なしです。精読のスピードがおそろしく速くなって、結果として速読になるのが最良だと思います。特に翻訳家を目指す人には、中途半端な速読は有害です。ステップ3 作文(和文外国語訳)演習 ・・基礎的な文章200題くらいを作文できるか試してみましょう。この学習プロセスを通じて、文法知識のウィークポイントをカバーするのです。・・ステップ4 会話練習(独習)・・会話例は最低100回ぐらいは聞きまくってください。ただし、集中して聞く必要はありません。・・BGMと考えてください。・・ステップ5 外国人との会話練習
・・正しい読解は、文構造の分析が第一歩です。・・フランス語、スペイン語のラテン語系言語を習得した人でも、英語しか学習したことのない人に比べると無意識に分を分析して読んでいる傾向が強いと言えます。
・・話す力の背景にあるのは実は作文能力です。・・話す能力をアップさせたいと思うならば、基本的には平易な作文をたくさん練習することが有効な方法です。・・日常よく使う慣用表現、つなぎ言葉、あいづちなどは気合を入れて丸暗記してしまう必要があります。
・・特に英語学習者には、ヒヤリング能力を向上させるには音声学を習って、まず自分自身が正しい発音ができるように訓練することを強く勧めます。注意してほしいのは、ネイティブの教師の場合、発音は「やってみせる」ことはできても、「教える」ことはできないということです。
・・しかし同時に当然その業界については、常に最先端のニュースを仕入れて、勉強していなければなりません。私の考えでは、翻訳と通訳の二刀流は、実際にはよほどの実力がないと難しいので、自分の向いているほうをメインにして、どちらか一方はサブにすべきだと思います。
・・あらゆる分野で、ドイツ語の実務翻訳能力のある人は、仕事に困らないと思います。
・・中国語の翻訳市場は広がる一方です。
・・研修や語学教師の需要は、残念ながらあまり多くないと思います。一工夫しないと、韓国・朝鮮語の語学力のみを商品にしてプロとしてやっていくというのはやや難しいかもしれません。
・・オランダ語と北欧三カ国語は、ドイツ語と英語の良くできる人が、用意周到に取り掛かれば、比較的習得しやすい言語
・・英語検定(実用英語技能検定)は1級取得者でも実務翻訳の能力に関しては、試験をやってみないとわかりません。しかし、印象的には、三人のうち二人は合格ラインに達しているようです。準一級の人は、難易度の高い通訳は無理ですが、翻訳家としてはよいセンスをしていて将来伸びそうな人を(3,4人に一人ぐらいのわりあいではありますが)、発掘できる印象です。・・TOEFL、TOEICの点数については、通訳を希望する人の場合にはおおいに参考にします。TOEFLの場合はおよそ550点以上、TOEICの場合は830点以上あたりで第1回戦クリアと考えています。しかし、実際は通訳スタッフに試験をしてもらわないと、さまざまな維持での適性はわかりません。いわば受験資格をもっている、ととる程度です。とはいえ、ともかくTOEICで900点以上を得点した人は、さすがに語彙、ヒアリング能力がずば抜けており、少なくとも語学能力的には、通訳としてやっていくのに確かな土台をもっている、と考えているでしょう。ただし、実務翻訳の能力をはかるという角度からは、いずれの試験もほとんど参考になりません。
・・気持ちよく仕事ができる人を一人でも多く開拓する必要があるということです。ですから、会社を離れて個人営業者として翻訳、通訳などをやっていこうという人の場合、人付き合いのうまさというのは大きな武器になります。・・人付き合いのうまさというのは、最終的には誠実であることです。
・・語学力があるのに仕事を失っていく人は次のような人です。・納期を守らない人 ・手抜きをする人(訳抜けがあったり、現行の処理が不親切であったりする) ・自分の実力に対して謙虚でない人
・・企業としてその業界に参入するときには、市場規模を考慮したり、参入にあたって障壁はないか、あるならどんなものかを十分検討する必要があります。・・ビジネスに見えは禁物です。見栄や虚栄心と本当の意味でのプライドとは似て非なるものです。
・・現代では「浅く広く」型のビジネスは主流ではありません。それはかつての大量生産型のビジネスの時代が終わり、個性豊かな商品が少量求められる時代になったからにほかなりません。
・・1996年からインターネットを導入し、徐々に会社をバーチャル化しています。「3Sのないグローバル・カンパニー」をというのが私の目指す会社です。三つのSとは、スペース(事務所空間)、スタッフ(雇用社員)、宣伝費の三つです。インターネットはそれを可能にしつつあります。
・・非常に苦労人だったのでしょう、英語を始めてからの勉強法がすごいのです。一日13時間勉強した・・まったくゼロからスタートして一年半でまず英検1級に合格、その一年後ガイド試験合格、そのまた一年後に商業英語検定1級(当時)をとって三冠王に輝いたころには、すでにガイドとして働き始めていました。彼が並大抵の勉強をしてきていないことは明らかでした。・・そのライフスタイルは徹底していました。月曜日から金曜日までは、どんなことがあっても友人の飲み会などの誘いには一切乗らず、家に帰って勉強三昧、ところが週末は一転してまったく勉強せず、リラックスして遊びほうけるのです。
・・こうした経験から導き出せる一つの法則が、「一般に、日本でやった机上の学習のレベルに比例して会話も上達する」というものです。
・・インターネットのすさまじい普及で、翻訳の仕事に関する限り、地方どころか外国に住んでいても、あまりハンディにならない時代が来ました。仮に地方に住んでいることに何らかの不利を感じている人は逆の発想で、地方に住んでいる利点を生かした「営業方法」なり、別の工夫なりをいろいろと考えてみてはどうでしょう。
・・同時通訳のような独特のスキルを要するものは別として、専門学校へ行かなければ語学のプロになれないということはありません。専門学校もなかなかいいところは少ないのです。・・私が考える良い教師とは、「自分で分かっていることとわかっていないことを分析できていて、それを自覚している先生」、「話が面白い(興味深い)と感じられる先生」、「自分が分からないことをわからないと答え、知らないことは知らないと言える先生」です。私が技術を盗ませてもらった優れた教師には、一様にそうした共通点がありました。
・・日本人学習者にとって、中国語の場合は漢字、韓国語の場合は語順の点で欧米人より有利
・・語学力の維持だけが目的だったら、毎年二か月ぐらいなどといったふうに小刻みに(留学)に行くほうが効果的でしょう。
・・私の経験では、多少の不景気には関係なく、一定の実力があって、プロとして自覚のある翻訳家や通訳は、仕事がないということは基本的にありません。ここでいう「プロとしての自覚がある」とは、納期を守るとか、わからないことは極力調べてみるなどの、語学力以外のことで、ともかくも仕事に対して誠実で、気配りのある態度のことです。また、どんな企業でも、個人営業種でも、営業活動をせずに仕事が空から降ってくるわけではありません。・・地方の人でも、翻訳であればインターネットの発達によってハンディはないといえます。知人で地方にUターンして毎日魚釣りをしながら悠々自適に暮らしている人がいます。
・・企業などで語学を使い続けてきた熟年層は、特にその専門分野において非常にすぐれた「ベテラン語学専門化」になる可能性があります。このような人で、語学スペシャリストを目指す人に考えてもらいたいのは、まず自分の語学力が「現場主義」の「無手勝流」にすぎないかどうかを正当に自己判断する必要があるということです。・・まずは原典に帰って一度アカデミックな裏付けをしっかりとることを強く勧めます。
・・現代は語学教育業界も十年一昔であり、どんどん新しい理論や優れた辞書が世に出されています。このような新しい情報に常にアンテナを張って、自分の中にどんどん取り入れていくフレクシベリティ必要です。
・・他の要素を考えず効率のことだけを考えていえば「1カ国語集中が良い」と言えます。』

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