出家とその弟子 (倉田百三著 青空文庫)
母がかなり昔に読んでいて、気にはなっていましたが、やっと読み終えました。しかし、この作品中の親鸞の教えにはキリスト教の影響が強く感じられ、私に言わせると、仏教の教えではないと思います。
『百の悪業に催されて自分の罪を感じている悪人よりも、小善根を積んでおのれの悪を認めぬ偽善者のほうが仏の愛にはもれているのだ。仏さまは悪いと知って私たちを助けれくださるのだ。悪人のたmねの救いなのだからな。
外から見れば念仏ほど簡単なものはありませぬ。ただの六字だねな。だが内からその心持に分け入れば、限りもなく深く複雑なものです。・・人生の歩みの道すがら、振り返るごとにこの六字の深さが見えていくのです。(だんだん熱心になる)それを知恵が増すと申すのじゃ。
人を愛しなさい。許しなさい。悲しいを耐え忍びなさい。業の催しに苦しみなさい。運命を直視なさい。そのとき人生のさまざまの事象を見る目がぬれてきます。仏さまのお慈悲がありがたく心に染むようになります。
四季のうちりかわりの早いこと。年をとるとそれがことに早く感じられるものだ。この世は無常迅速と言うてある。その無常の感じは若くてもわかるが、迅速の感じは老年にならぬとわからぬらしい。もう一年たったかと思って、恐ろしい気がする事があるよ。人生には老年にならぬとわからない寂しい気持ちがあるものだ。・・「若さ」の作り出す間違いがたくさんあるね。それがだんだんと眼があかるくなって人生の真の姿が見えるようになるのだよ。しかし若い時には若い心で生きていくよりないのだ。若さを振りかざして運命にむかうのだよ。純な青年時代を過ごさない人は深い老年期を持つこともできないのだ。
多くの弱い人は寂しい時に酒と女に行く。そしてますますさびしくされる。魂を荒らされる。不自然な、険悪な、わるい心のありさまに陥る。・・強い人はさおの寂しさを抱きしめて生きていかねばならぬ。もしその寂しさが人間の運命ならば、その寂しさを受け取らねばならぬ。その寂しさを内容として生活を立てねばならぬ。宗教生活とはそのような生活のことを言うのだ。
別れていて互いの幸福を祈る--すべての人間は隣人としてそうするのが普通のさだめなだの。人間はどのように愛し合っていても、いつもいっしょにいられるものではない。
』
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