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2015年6月14日 (日)

ITビジネスの原理 (尾原和啓著 NHK出版)

しばらく更新を怠けていました。失礼しました。「ITビジネス関連の教科書的な本」との書評を読み購入しました。なかなか勉強になりました。

『私はネットワークやITは、「自己実現を加速するもの」であり、「人を幸せにするもの」だと思っていますが、現在のIT環境は進化が早すぎるゆえの歪みも抱えている一つの踊り場に入りつつあるのではないかとも感じています。

・・同じものでも場所によってその価値が全く違ってきます。この「場所によって違う価値の差」をお金に換える、これが商売の原点です。

インターネットの最大の特徴は、空間<距離>的、時間的な制約なしに世界中を結ぶ、ということです。つまり、二つの場所が空間的にどんなに距離が離れていようが、相手の事情が手に取るようにわかってしまうのです。

インターネットは「価値の違いを金に換える」ビジネスをやりにくくしてしまいましたが、それでもまったくできなくなったわけではありません。やや様相を変えながらではありますが、インターネットのビジネスとしても残っています。

・・この「点在する情報を一か所に集める」という作業は、インターネットが非常得意とするところでもあります。これが、インターネット上のビジネスでは基本的なスタイルの一つになっています。

・・インターネットのビジネスというのは「ユーザを安く仕入れて高く売る」ものと言えるのです。

世界中に散在しているユーザを一か所に集めて、そのユーザを金を出してもほしいと思っている企業や人と結びつける、マッチングするのが、インターネットのビジネスなのです。

「あるキーワードについて、それを重要としているページからリンクされているページは重要である」

このページランク理論のベースになっているのは実は学術論文なんですね。学術論文というのは、他人の論文にたくさん引用されたものがいいのだという不思議な世界です。そこで他の論文から引用されるものを探すために使っていた論文検索の方法を、インターネットに応用したわけです。

・・言い換えると、ユーザのインテンションを読み取れる空間があれば、そればそのままビジネスの場になるというわけです。グーグルよりフェイスブックの換金化が比較的難しいのは、ユーザのインテンションが読み取りにくいことに起因しています。

1 ユーザのインテンションを先鋭化させて正しく把握する  2 そしてそのインテンションに基づいて最適なものを提示する という二つの仕組みがきちんとまわることが、インターネットのビジネスでは重要なことなのです。

こうした何のヒントや手がかりもなく、ブランド名などを思い浮かべることを純粋想起といいますが、この純粋想起をとってしまうのが最強なんです。まず頭に思い浮かんだ場所に行く、だから純粋想起をとったサイトに人は集まるのです。純粋勝機をとるために重要な要素の一つに、最初にブランドを確立することがあります。多くの人は、最初にブランドを構築した人を評価する傾向にあると思うのです。

収穫逓増とは聞きなれない言葉だと思いますが、これは生産規模が大きくなると生産がより効率的になって、収穫は規模の増大分よりも大きくなるというものです。・・この強いところがますます強くなっていくのが、収穫逓増の法則と呼ばれるものです。

課金ビジネスが成立するかどうかを左右する問題は、この探索コスト、支払いにかかるコストなどを含めたトータルコストが見合ったものになるかどうか、です。そして現状では支払いのためのコストが高すぎる。だからユーザはお金を払ってくれないのです。

・・日本の携帯電話は各キャリアが4桁の暗証番号を入れるだけで換金できるという体制を作ったおかげで、世界一のコンテンツ市場を生み出しています。

・・仕事を細切れにすることで、売れるもの、価値のあるものにできるのです。細かくした仕事の一つ一つは、0.1、0.01であっても、それをたくさん集めることで100の力、1000の力にすることができる。

このようにITやインターネットは仕事を細切れにすることで価値を生み出すだけではなく、その細切れを集めることによって新しい価値を生み出し、普段使われていない部分を有効活用することができる。

インターネットの特徴の一つが、こうしたタスクの細分化が起きやすいということです。これまでだったら全部をひっくるめてやらなければならなかったことが、プロセス単位に分解されるのです。

・・ブログでは、トラックバックにせよコメントにせよ、非常に簡単に、かつ手軽につけることができます。そのコメントに対する返事を書くのも簡単です。こうしてブログはコミュニケーションツールになったのです。・・ブログに似たメディアとして、CGM(Consumer Generated Media)というものがあります。ブログが個人のページであるのに対して、CGMはその名の通り不特定多数のユーザが作るメディアです。

フェイスブックやツイッターに代表されるSNSには、二つの軸があります。一つは友人関係を強化するためのプラットフォームという側面であり、そのひとつは情報取得ツールとしての側面です。

自分からツイーとするのはハードルが高いと感じる人でも、RTだけなら気軽にできる。ツイーとしなくても、勝間和代やホリエモンをフォローしておけば、いろいろ情報が手に入る。発信するにしても、いいものをリツイートするだけであれば、発信コストがものすごく低いわけです。ワンクリックでリツイートできる、そして、その情報面白いね、と承認される。そういう情報取得メディアとして、ツイッターは爆発したのです。

リーンフォワードのツールでは、目的を持って使っていますから、目的外のものは邪魔になります。だから排除することになります。しかしリーンバックのメディアにおいては、目的性が低く、何となく見ていることも少なくありません。その状態では、対して意味のない情報が垂れ流されていても、さほど気にならないのです。受け取る側が気にしないので、発信する側もまあいいかと垂れ流す、つまり情報のフロー性が高まるのです。・・ツイッターやフェースブックのようなソーシャルメディアの出現によって情報のフロー化が進んだので、そのフロー化した情報をまとめてストックするためのキュレーションサイトが次々にできてきたということになります。

・・・情報を探す単位がサイトからページに変わったことになります。より小さな単位で、私はこれを「情報の粒度」と呼んでいますけれど、情報の粒度が小さくなった。小さくなることで、これまでは拾いきれなかったような情報も拾えるようになった。これは一つの革命です。

・・なぜ、人は情報を発信するのでしょう。その理由の一つは、情報発信コストです。情報を発信しようとするときに必要な経済コスト、心理的コスト、そして物理的なコストを、インターネットは大きく軽減しました。

メールのようなメディアを、非同期的なメディアと言います。共時性はない。参加者は自分に都合がいい時だけ参加すればいいから、発信者、受信者ともにコストが低い。だから参加者が増えるのです。

不正をしている者、していそうな者は、誰もが監視できて、不正が見つかればだれもがタレこむことができる。ネット社会とは、そういう社会です。

・・アメリカというのはローコンテクストの国なので、外資系企業ではミーティングでも自分の前提条件や背景を言葉にして説明しようとします。前提条件プラス自分の主張を述べて相手を説得させようとします。ところが日本人は、その前提条件をしゃべらないですね。・・日本人はハイコンテクストだから、言わなくても分かるんです。言葉にして説明するのが苦手というよりはむしろ、言葉にする必要がないのです。

私はインターネットというのは、ハイコンテクストなものとハイコンテクストなものをダイレクトに結びつけることができるものだと考えています。本来そういう性格を持っていたものなのだけれど、それは不幸なことに、ローコンテクストの国、アメリカで生まれてしまった。

・・現実には、英語は世界で最大の人口をもっている言語ではありません。文部科学省がまとめた「世界の言語別使用人口」のデータでは、世界でもっとも使う人の多い言語は中国語だということです。2番目が英語で、その次がヒンディー語、スペイン語、ロシア語、アラビア語と続きます。・・グローバル社会は英語だ、これからは英語が重要だということを言う人がおおけれども、本当にいけてるグローバル企業は英語よりも非言語化を重要視しているのではないか、というのです。その証拠にナイキやスタバのロゴからは英語表記が消えた。英語という言語ではなく、アイコンだけで非言語のコミュニケーションを志向しているのではないか、という話です。

これから起きるインターネットの革命、それはギガビット・インターネットとウェアラブルである、と私は考えています。

・・グーグルグラスはユーザの視線の先にあるものを認識して、そこからインテンションを読み取る。そして、そのときどきに必要な情報を表示してくれるんです。

・・いま目の前にある情報から新しい情報を引き出す時に、たぶんこの情報が必要であると的確に判断するのが必須で、これをアンディしべーしょん・コンピューティングというのんですが、この技術はかなり進んできています。

もともとインターネットは、こういったハイコンテクストな快楽を補強するものでした。が、テクノロジーの進化するスピードが追い付いておらず、現在、必ずしもこれが実現しているとは言えません。』

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