脳がさえる15の習慣 記憶・集中・思考力を高める (築山節著 NHK出版 生活人新書)
既に実践していた部分は自信になりましたし、新たに知った部分は実践していこうと思います。
『多くの現代人がいつの間にか脳の力を衰えさせているとき、駆けているのはたいていの場合、ごく基本的なことです。ただ、そのことに自分では気づかず、脳をはたらきにくくさせる方向に進んでしまっている。
人間はどこかで、会社なり学校なり、自分以外の誰かに動かされている環境を持っていなければいけません。何も強制されていない環境におかれると、人間はいつの間にか、脳のより原始的な機能である勘定系の要求に従って動くようになってしまいます。その結果、生活リズムを失い、面倒なことを避けるようになり、環境系の快ばかり求める生活になる。脳は基本的に怠け者であり、楽をしたがるようにできています。
運動系の機能を使うのが思考系の活性化のためにも有効なのは次のように考えてみてもわかりやすいかもしれません。足や手や口を動かす運動系の機能は、脳の表面中央付近に分布しています。その脳領域を十分に働かせるということは、そこに至る脳の血流を良くすることとイコールです。特に足を動かすための機能は、頭頂部に近いところにある脳領域が担っているので、よく歩いているうちに、血液が脳の高いところまでくみ上げられます。
音読が脳によいというのは、最近よく打言われていることですが、これは目と口の運動であるだけでなく、脳の入力→情報処理→出力という要素が連続的に含まれているからです。
脳の基本回転数を上げるには、時間の制約が必要です。距離と時間から遠さを算出する式がありますが、それにたとえて言えば、距離は仕事の量や問題の量です。いつまでにこれだけの仕事をしなければならないという状況が与えられていないと、速さsである脳の基本回転数は上がりません。
次に重要なのは、一度脳の基本回転数を上げると、その状態がしばらく続くということです。
脳も筋肉と同じように疲労し、その疲労は十分な睡眠をとらなければ回復されません。その理由だけでも、睡眠不足に陥っている人の思考が混乱し始めるのは当然といえますが、じつは、もう一つの直接的な理由があります。それは記憶の定着、思考の整理は、起きている間よりも、寝ている間のほうが進みやすいという理由です。
特にレム睡眠中には、思考系の中枢である前頭葉も含め、脳全体が活動し続けています。・・寝ているときには、それがほぼ遮断されています。しかし、脳は活動している。何をしているかと言えば、入力がない状態で、一時的に保存していた記憶をより永続的な記憶に変換したり、得た情報を取捨選択し、思考を整理したりしているわけです。しかも、ノンレム睡眠中には大脳も休んでいるので、起きた時には疲労が回復されている。朝、アイディアが浮かびやすいのは、そういう理由から説明できると思います。
・・夜の勉強は中途半端にやっておいて、睡眠時間を十分に取り、起きてから整理する穂が合理的だということです。
夜は思考系の中枢である前頭葉がつかれていて、感情系が優位に立ちやすくなっているので、冷静な話になりにくいからです。
脳の基礎体力は、日常的な雑用を面倒くさがらずに片づけることで鍛えられますが、現代ではその日常的な訓練の機会が減っている。・・脳にとって雑用は、スポーツにたとえて言えば、ランニングや筋力トレーニングです。公式戦のような格好よさはありませんが、それを毎日続けることで長く動き続けられる人になってくる。そのうえでテクニックも身につけられれば、もっといいわけです。
小さな雑用を毎日積極的に片づけていると、その程度のことなら面倒くさいとは感じなくなってきます。同時に、いらいらも抑えやすくなる。これは脳の中で、感情系に対して思考系の支配力が強くなったことを意味しています。
脳の力を最大限に発揮させるには、取り組む問題をできるだけ限定し、それに集中できる環境をつくることも大切です。
日頃の経験から「こうすればいいんじゃないかな」と何となく思っていることがあると思います。それを書き出して、実際にやっていて、有効性を確かめてください。ルールを決めたら、習慣として定着するまで紙に書いてはっておくとよいかもしれません。
人間の脳には「マジック7」と呼ばれる性質があり、同時に脳の中で保持したり、系列化したりできる要素は、多い人で七つ、少ない人で三つの5±2が標準的といわれています。それ以上の要素を一度に頭に入れようとすると、どうしても忘れてしまう。それを補うには、情報を書いて身に見える状態にしておくか、どこかでまとめをすることが不可欠です。
物忘れを訴える患者さんの中には、こういう人がよくいます。カバンや机の引き出しに何が入っているのかを質問してみると、明確に答えられない。それは記憶力に問題があるからではありません。しまう時に、自分で意識して整理していないからです。
ある程度立場が上がってくると、必ず個人の限界を超える範囲の問題を見なければならなくなってきます。
思考は、できるだけベーシックな段階からファイル化していかなければ、より高いレベルでの整理はできなくなるものです。そこを蔑にしていることが混乱の原因になっていると思われる方が外来にいらした時、私は次のように提案しています。「忙しい時ほど、身の回りのものを整理することを優先させてください」
机やカバンの中身が機能的に整理されているということは、優秀な管理者を上司に持っていることと同じだと考えてください。仕事がたくさんあるときでも、上司が「今日はこの仕事に集中しなさい」 「今はこのことだけ考えればいいよ」と言って、資料をまとめて渡してくれたら、安心してその仕事に取り組めるじゃないですか。
ある程度は他人が見ても分かるようにファイリング、ラベリングすることが大事です。
片づけは手をよく使う運動でもありますから、脳のウォーミングアップに組み入れるのがベストでしょう。
時には視覚的情報を遮断した状態で、耳から情報を得る訓練も必要だと思います。小さな平面を見ている時間が長い人は、情報の入力を目に頼りすぎている場合が多いからです。
効率化ばかりを考えていると、そんなものを書いたり書かせたりするより、たくさん仕事をさせた方がいいという発想になりがちですが、そういう生活を続けていると日々接している情報が流れていくだけになってしまい、物忘れをしやすくなります。
・使える記憶を増やすには、出力することを意識して情報をとることが大切 ・その出力の機会を増やすために、報告書やブログを活用しよう ・会話する機会が少ない人には、書き写しや音読が有効なトレーニングになる
表現力豊かに話そうとすることは、脳機能を高めるうえで非常に有効です。どんな事物でも、いろいろな側面から見て説明ができるものだと思います。
自分の思考パターンを離れて、相手の身になって考えることは脳に揺さぶりをかけ、前頭葉を鍛える有効な訓練になります。
たとえ話の中には、脳の高度な働きがすべて含まれていて、私の外来での診察経験から言っても、たとえ話をよくする人は、何歳でも聡明で、「この人はぼけにくいだろうな」と感じます。
脳は酸素とブドウ糖を唯一のエネルギー源としていますが、高血圧になると、それを血液から十分に取れなくなり、思考が長く続けられなくなったり、感情を抑制できなくなったりする。
エネルギーの需要を発生させるというのは、要するに体を動かすことです。適度に運動をしていれば、体内の糖や脂肪分は燃焼されますし、特によくつかわれる部分で血管も発達します。血管が発達すると、エネルギーが供給されやすくなって、体を動かすのも楽になる。それだけ代謝も活発になるということです。
無意識に物を置いてしまう場面が多いということは、意識的に整理する習慣がかけているということです。身の回りの物の整理には、思考の整理が端的に現れます。
脳が一度に系列化できる情報はごく限られています。その弱点を克服するには、情報を出力する、つまり書き出しておくことが重要です。書いてそれを見て、読んで耳からも情報を入れなおすことで、情報が二重三重に脳に組み込まれますし、忘れてしまっても、出力された情報が目の前にあるわけですから、それを見て再び思い出すことができます。情報を組み合わせるときにも、書きながら考えることが有効です。書いたり、消したり、カードに書いて並べ替えたりという過程を通して、情報同士の関係性や重要度の違いが見えやすくなります。
その才能は、仕事だけを一生懸命やっていても磨かれていかないものです。仕事熱心であるのはよいことですが、同時に、日頃から活動を多角的にしてみる必要もあります。
アイディアを生み出しやすくする方法として、裏技的なことを一つ書いておくと、・・「水イン中の整理力を利用する」ということの応用です。寝る前に情報を蓄え、アイディアを大雑把にでも考えておくと、寝ている間に思考が整理され、翌朝、アイディアがすっきりとまとまっていることがあります。それを書き留めておいて、日中は仕事をし、夜になったらまた情報を蓄え、大雑把に考えて寝る。そういう生活を続けていると、よく練られたアイディアを生み出しやすくなると思います。
・・本章で提案したい習慣を改めて書いておきましょう。それは、人を好意的に評価する。また、時にはダメな自分を見せるということです。好意的に評価するというのは、お世辞を言うことではありません。相手が何か行動した時に、その結果の良い面を認めてあげるということです。そうやって人を評価するには、まず人をよく見なければいけません。そのため、積極的に人を褒めようとしていると、周囲の状況をよく見るようになってきます。その意味で、この習慣は頭の使い方を改善させる直接的に有効な手段になりますが、じつは別の効果も期待しています。それは、人から評価されやすい人になるということです。
・意欲を高めるには、自分の行動と結果を誰かが評価してくれることが重要 ・人を好意的に評価することは、自分が評価されやすい環境を作ることにつながる ・生活のどこかにダメな自分を見せる場面があると、意欲を高めやすくなる
運動系の機能を使うのが思考系の活発化のためにも有効なのは、次のように考えてみてもわかりやすいかもしれません。足や手や口を動かす運動系の機能は、脳の表面中央付近に分布しています。その脳領域を十分に働かせるということは、そこに至る脳の血流を良くすることとイコールです。特に足を動かすための機能は、頭頂部に近いところにある脳領域が握っているので、よく歩いているうちに、血液が脳の高いところまで汲み上げられます。
脳の言語中枢の中で、聞く方と話す方がバラバラにあるわけではなく、解釈するという部分を挟んで一連の流れになっているからで、日本語でもスムーズに出てこない語彙は、聞き取ることも難しくなります。
昨今、小学校教育で、国語の時間を減らして英語の時間を増やすことの是非が議論されていますが、これが問題になるのは、特に幼少期の教育では、日本語で思考するための基礎力をしっかりと固めておくことが重要だと考えられるからです。私の外来でも、長期間海外で遊学していた人が、日本語の言語体系における概念化の能力や語彙力が下がってしまっているために、うまく認識・記憶・思考ができなくなっているケースが何例かありますが、そういうことが起こる可能性がある。しかも、一度身につけたものであれば回復もさせやすいですが、幼少期に十分に身につけさせないというのは、問題としてより大きいと思います。
社会性のない生活を送っていると、人は意外と簡単にぼけてしまうものなのです。』
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