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2015年2月17日 (火)

平の将門 (吉川英治著 青空文庫)

小さなころに大河ドラマで見たことを少し思い出した箇所もありました。この前は太平記を読んだのですが歴史の流れを感じました。

『・・その中枢の信仰者である王朝貴族たちは、自らの政治や私的生活の中に、その仏教を急激に腐敗堕落させる経路ばかりを追ってきた。藤原閥のここ一世紀余りにわたる栄華と専横は、その歴史でもある。

・・王朝の華奢に彩られた当時の貴族たちが、常日頃には、物の祟りだの、生霊だの死霊だののというものの実存を信じて、ほとんどが、神経質的な性格を帯び、中には、狂疾にすら見える者が生じたのは、栄華の独占が、必ずしも、幸福のみではなかった事の一証といっていい。

人皇第60代、醍醐帝の皇紀1590年という時代の日本のうちでは、畿内のそとはもう、”外国”といったものである。東国といい坂東といえば、まるで未開人種の国としか扱っていなかった。

泣くことに、そう、人前をはばからなかったのは、この時代---平安朝期の日本人のすべてであった・・

だが、考えてみると、あまりにも、吉事吉事のかさなりを思い上がって、人の世の中を、自らの意のままに、あまく見すぎていた結果の禍であったとも、貞盛は反省せずにはいられなかった。

・・この時代の曠野の人間は--いや、たしなみのある都人の間でも、喜怒哀楽の感情を正直にあらわすことは、すこしもその人間の価値をさまたげなかった。将門の部下は、むしろ、将門がだらしのないほど、哭いたり狂ったりするのを見て、心を打たれた。

全ての場合、人間が他の陥穽に落ち入る一歩前というものは、たいがい得意に満ちているものである。』

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