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2014年12月18日 (木)

私本太平記 08 新田帖 (吉川英治著 青空文庫)

『「いくさは地ならし、そらがわれらの耕作というものだ。それすらができなんだら、いくさはしない方がいい」

ところが、彼には、その気がなかった。そしてそのことが後には逆に、野心満々な時人からは、物足りない人と見られて、やがては彼から人の離れて行く、一因にもなっていたかと思われる。

そこの川岸の里は地名を徳川といい、新田家の一支族、徳川教氏の住地だった。--この世良田徳川の子孫が、遠いのちに、江戸幕府の徳川将軍家となったのである。だから代々の徳川家は、祖先新田氏をおろそかにしなかった。

朝廷では、この人を、鎌倉の司権にすえておくことが、なんにつけても、都合がよかった。高時だと、諸事、言いなりになるからである。また幕府内でも、高時を外せば、その執権の職には、一族みな虎視眈々で、たちまち、内紛のおそれがあり、そのもつれは、今日までたびたび、繰り返してきたのである。で、たとえ、飾り物でも暗君でも、この君を立てておくしかないとされてきたのである。要するに四囲のためだ。政略、権力争い、すべて四囲の人間が、自分らの保身と、相手の擡頭をふせぐため ”うつうtなき人”高時は道具にされていたようなものでしかない。

戦いは戦いだけで終わらない。敵を消し去ると、すぐまた、味方同士、味方内の仮想敵を見つけ出す。それは政略という互いの腹の中で始まる。』

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