私本太平記3 みなかみ帖 (吉川英治著 青空文庫)
『こんなときの男女に、死 は常に、魅力的である。死と恋との、悩みの中における両種の物の攪拌は、一そう強い甘美な酒を醸成する。
・・阿弥陀仲間の強い生き方を一年ほど見て、「--人間何をしても生きようとすれば、生きられる」自信だけは習びえていた。
たれでも人は、少し逆境の波間を泳ぐと、世に自分ほど不幸なものはあるまいと思いがちだ。いずくんぞ知らん。苦患(くげん)の世は底なしだ。下には下に想像もつかぬ不幸な人鐚が埋(うず)ンでおる。
しかも、つねに心の底では。どこにどう生きているのか。倖せであれ。どう零落(おちぶ)れても、倖せでさえいるならば。と、折にふれ、ひそかな祈りを内にいだいていた正成でもあったのである。--すると、この春、弟の正季の口から、彼女が舟芸人の良人と共に、藤井寺の六波羅屯所へ曳かれていると聞いて、愕然としたものだった。』
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