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2014年3月 1日 (土)

山岡鉄舟 (二) (南條範夫著 文春ウェブ文庫)

『慶喜は才智は優れているが、確たる信念を貫く気魄を欠く人物である。旗本や会津・桑名の士たちに、はげしい言葉で迫られると、それを一喝して却ける力はなく、ずるずると引きずられてしまった。

「・・おれはあまり書物を読まんからむつかしい理屈は分からんが、この頃つくづく、時の勢いと言うことを考える。時の勢いに乗れば、勝てぬ筈の対手にも勝てる。時の勢いに逆らえば、負けぬ筈の戦にも負ける。鳥羽・伏見の戦いに、寡兵の薩長が、幕府の大軍を破ったのは、武器の差もあろうが、されよりも時の勢いに乗ったからだ。・・・」

「私は新選組、江戸市中取締りが任務、これも当然でしょう」 「しかし、近藤さん、新撰組は上様の恭順に大反対だと聞いている」 「むろん、大反対です。だが、それとこれとは違う。上様御一身の安全を守るのは、私の任務ですよ」 よくそう割切ってくれたと、鉄太郎は少し感心した。

「それにしても、愕いた。先生の眼から出るあの凄まじい奇妙な光は、なんですかなあ」 「剣の道を究めると、自然に出てくる光だ。目から光りが出るようにならなければ、一人前とは言われない」

勝は、鉄太郎の剛毅な精神を愛している。勝自身も、剛毅な性格なのである。だが、勝は同時に、融通無碍の才智を持っている。鉄太郎にはそれがない。むしろ、勝の眼から見れば、---愚鈍  に近い生一本の性格だ。

「・・・三河松平の家臣だった頃の状態に戻ればよいのですよ。茶畑を耕しても、武士の魂を棄てる訳ではありません。武士の魂をもって、百姓仕事をするだけの事です」 』

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