空飛ぶ広報室 (有川浩著 幻冬舎)
防衛省の広報室を題材とした小説です。新しい視点を得ることが出来ました。
『「外部とツテを切るときは空自として切ることになります。自分のことならかまいませんが、隊の看板を背負っていると思うとなかなかあっさり切れないものですよ。なんだかんだとマスコミの広報力は大きいですし」
ちょっと踏み込んで知ろうとすればすぐ分かるが、そのちょっとを踏み込む時間が惜しいのが現代人の心情である。
「しかし、我々は自衛官ですから、どんな状況であっても支援する側に回るのは当然の義務です。被災したことは同じでも、我々は有事の訓練を受けております」「でも・・・・隊員にもこちらに家族のある方がいるでしょう。心配じゃないんですか」「尋ねたリカに、広報班長は「もちろん心配です」と頷いた。愚問だったと頬が火照る。「ですが、自衛官はみんな妻や子に言い聞かせていると思いますよ。もし何かあっても俺は家にいないから何とかやってくれ、とね。それが自衛官と所帯を持つと言うことです」大きな災害があったとき、一家の大黒柱は被災地に急行する。たとえ家族が同じ被災地にいたとしても、見知らぬ他人を助ける任務を優先するのだ。
「有事に果たすべき義務があるということは、それだけで拠り所になります。辛いことがあったとき、自分にできることがあるだけで人って救われるでしょう。だから僕たちは被災者を支援しながら、自分自身を救っているんです」
自衛隊をモデルに今までいろんな物語を書いてきましたが、今回ほど平時と有事の彼らの落差を思い知らされたことはありません。ごく普通の楽しい人たちです。私たちとなんら変わりません。しかし、有事に対する覚悟があるという一点だけが違います。その覚悟に私たちの日常が支えられていることを、ずっと覚えていたいと思います。』
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