40代からの勉強法 やる気・集中力をどう高めるか (和田秀樹著 PHP)
ずっと以前に読み終えましたが、書き残したい部分が多くて、掲示が遅れました。いろいろと参考になると思います。
『ここで勘違いしてしまってはいけないのは、見た目が若いからといって、生理学的な年齢まで若返っているとは限らないということだ。・・・外見上が若いからといって、何でもかんでも若返ってしまうわけではなく、局所的に見ると、年のとり方には偏りがある。ことに脳の年のとり方は、昔からあまりかわっていないのが実情だ。
・・島耕作的な若々しい中高年もいる一方、今の中高年は昔の同年齢と比べると、むしろ意欲の低下が顕著になっている人も少なくない。要するに意欲の点でも格差社会化しているのだ。・・意欲の低下は、加齢からくる前頭葉の萎縮が一つにはあるわけだが、もう一つ考えられる要因に動脈硬化がある。そして、この動脈硬化を引き起こす年齢も昔の日本人とあまり変わらないか、むしろ低年齢化している可能性がある。
現在は自分の容姿にかまうようになり、外見的な若さを保とうとする努力を一様にしているのである。それに比べて、脳の若返りに対する関心は取り残されているのではないだろうか。
脳がやや萎縮したぐらいで知能の衰えが顕著に現れるようなことは滅多になく、むしろ問題なのは感情の老化である。
人間は感情から老化するということであるから、まず感情を隆起させるために前頭葉に刺激を与える勉強をすることだ。
結果、IQとは異なる能力として、①自分の感情を知る、②自分の感情がコントロールできる、③自分を動機付ける、④他人の感情を認識する、⑤人間関係をうまく処理する・・・という五つのインテリジェンスが成功する秘訣だということがわかった。・・基本的にEQ能力は、年齢とともに成長していくものであり、十代より二十代、二十代より三十代とその能力は高まっていくという。・・ただし、ゴールマン氏はそこで、「年齢とともにEQは高まるが、放っておくと四十代がピークだ」と言っているのである。
中高年になって意欲の低下を防ぐために勉強しようというのであれば、どのような勉強をするかという前に、自分に快体験を多く与えること、すなわち、遊ぶことが脳を若々しく保つコツということになるだろう。
実は、年をとるほど脳に強い刺激が必要になるのだ。
自分の夢だったことを実現するためのツール、環境は、昔と比べて飛躍的に向上している。そういった時代に生きていることのメリットを活かさない手はないだろう。
未知の体験をすることで、新しい発見があり、また、苦労の中から新しい可能性を見出すことができたのである。これは、感情の高ぶりを引き出すとと同時に、わたしのなかにあったスキーマ(無意識のうちにしてしまう見方や考え方)を壊すことにもつながった。
過労自殺が中高年以降に多い理由の一つには、セロトニンが若いころより減っているために、無理をするとうつ病になりやすいことがある。体力的には徹夜仕事をこなすことができても、何かのきっかけで心が折れやすいのだ。
中高年になれば勉強時間も限られるし、記憶力も落ちるのは確かである。その反面で、少ない時間で効率よく勉強する方法を編み出す知恵もあるだろうし、あるいは、社会的な立場や経済力がある分、使える手も増える。
100メートルを全力疾走してタイムを競えば、それはどうしたって若いころのようにはいかない。けれど、歩くスピードなら、七十代、八十代になっても若い人とそうかわらない。・・それでは、老化の決定的な側面とは何かというと、使わない際の差である。・・つまり、若いころとの決定的な違いは、使わなかった時の落ち方なのである。逆に言えば、からだにしても脳にしても、使い続けている限りは、年をとっても対して機能は衰えないことを意味する。
前頭葉の萎縮の進行を止めることはできなくても縮んだ前頭葉を使い続けることによって感情の老化を予防することは可能なのだ。
もちろん、病的状態の場合話が別で、認知症は一定以上に神経細胞が減少するだけではなく、生きている神経細胞も病的であり、脳の老化だけではなくやはり一つの病気ののである。したがって、脳を使っていれば認知症にならないというわけではない。ただし、使わないでいると、認知症に似た症状が起こることがある。
要するにスキーマがあることで、能率アップにつながるのである。・・ただし、そうあって経験則が積みあがっていく反面で、長い間にスキーマが強固になり、崩せなくなってしまうという弊害もある。・・年をとれば必ずスキーマにとりつかれてしまうわけではない。年をとってもすごい人は、やはり、感情が老いていないのである。
年をとったらなおさら、自分の興味があること、体が動くうちにやっておきたいことをすべきであり、自分からみて快体験であるなら、まよわずチャレンジすべきである。その刺激が前頭葉にとてもよい影響を与えるのだ。
感情の老化を自覚したら、いきなり難しい資格にチャレンジしたり、新しいスポーツを始めたりといった難易度の高いことを考えないで、チャレンジすることのハードルをぐっと下げるのも一つの手だ。
日本の場合はとくに、教授になると途端に勉強しなくなる傾向があり、このために感情が老いて老害と呼ばれるような年寄教授がたくさん出てきてしまう。アメリカなど他の国ではそんな傾向はない。教授になってからのほうがむしろ競争が激しいので、みんなはつらつとしている。
感情の老化予防にとって意外に大事なポイントは、「こいつには何を言っても許される」という相手を見つけておくことである。・・自分の考えを修正したり、新しい視点を見つけることができる。こうした頭の訓練が老化防止につながるのだ。
年をとって感情が老化してくると、何でもかんでも「くだらない」と思えてくる
自分が楽しいと思えるようなことを、ちょっと試しにやってみることから始めるという時に、一つだけ注意したいのが、依存症に陥らないことである。代表的なのがアルコールやギャンブル、最近ではインターネットやゲームも依存傾向を引き起こしやすい対象として問題視している。
ゲームは一見刺激的だが、脳はほとんど活性化されない。自分が意図しなくても話が進行していくし、ビジュアルが完成されているために想像力を働かせることもない。
今の日本では、このような内発的動機が強い人に外発的動機として報酬を増やそうとし、その逆に、内発的動機の弱い子供たちに対してゆとり教育を推進するような愚をやってしまう傾向がある。動機づけ理論から見るとなすべきことと真逆のことを平気でやっているのだ。これは自分のやる気を喚起するときでも同じで、やる気の出るツボというのは、ムチとアメのバランスがあるし、人によっても異なる。そのことを理解していないと、動機づけにならないばかりか、かえって意欲の低下を助長する原因となるので注意したい。
・・・厳しい現実の話ばかり半年間もかけて手をかえ品をかえ教える授業なのである。貧乏を知らない彼等でも現実を教えると恐怖感に駆られ、この貧乏恐怖が彼らのやる気を引き出し、入り口は偏差値三〇台という低いレベルの学校でも立派な社会人となって巣立っていく。これが、金沢工業大学の本当の秘密だった。
・・理想的な高い目標を掲げるのではなく、現実的に「達成可能な目標を設定する」ことが、やる気を引き出すうえでより効果的だとわかる。・・やってみなけれあわからないことを目標に設定する時点で、挫折するための仕掛けを用意しているようなものだ。やればできる目標を設定するのが一つのコツだ。
自分のことになると短所ばかり気になるが、他人のことなると逆に長所ばかりが気になる傾向が人間にはあり、これは、特に初対面の場合、顕著に出る。
・・ピグマリオン効果というものがあり、期待されるというだけで実際に能力が発揮しやすいのであるから、「できるやつ」とみられていることで損をすることはほとんどない。自分の長所を自覚しておくのは能力を発揮するために非常に重要なポイントなのだ。
ある財務官僚(当時は大蔵省だったが)の実話だが、同期の出世頭だったその人は、任官時点ではけっしてトップだったわけではなかった。・・それでもトップを切って出世したのにはわけがある。というのは、彼は、上司に指示された仕事に自分の中で優先順位をつけて、得意な仕事、あるいは、放っておいてはいけない仕事に絞って目いっぱいの力を出すようにしていたのである。この結果、仕事にかかればクオリティの高い結果をだすので、一部ではすこぶる評判がよかった。その半面で、得意な仕事に全力投球しているから、苦手な仕事、必要性の感じられない仕事はどんどん溜まっていったその仕事を依頼した上司は、当然催促する。すると、彼は、「どうやっていいのかわからなくて、まったく進んでいません。どうするばいいんでしょう」などととぼけていたという。このために彼の評判は、「できるやつ」と「できないやつ」にある時期まで二極化していたのだが、時を追うごとに「できる」という評判が断然高くなっていった。なぜかといえば、彼が「これは放っておく」と決めていた仕事は、次第に彼のところにまわってこなくなったからだ。・・この結果、自分にまわってくるのは得意な仕事だけになり、「できない」という評価はやがて消沈し、「できる」という評価ががぜん高くなっていったというわけだ。このように、できない仕事、やりたくない仕事は無理に引き受けないで、「自分には荷が重い。できません」と素直に言ってしまうのもの手だ。その結果、「使えないやつだ」という評価が一時的に下されるのは仕方ないといった開き直りも必要なことである。
予定が狂うことで他の仕事にしわ寄せがいったり、なかなか結果が出にくくなったりして、やる気がなえてしまう。だから、予定を狂わせない方法論をもつことが重要である。この場合の秘訣は、勉強にしても仕事にしても、一週間の中で量的目標を設定することだ。・・やるべき勉強量をなるべく具体的な数値に置き換えて設定する。・・土曜日は予備日として使う。なぜなら、自分で立てた量的目標は、能力よりも高めに設定してしまいがちだからである。・・残った日曜日はどうするかというと、土曜日にこなしきれなかった分の消化にあてる。もちろん、余裕があれば休養日にしてもいい。なぜこれが大事なのかというと、計画が予定通り進むことほど、やる気を維持する力になるものはないからだ。ちゃんと予定通り進んでいる、できているという成功体験が、次の訓練に自分を向かわせるモチベーションになる。
時間効率の大切さでよく語られるトヨタのカイゼン活動も、ストップウォッチで計って作業工程をコンマ一秒単位で削っていくといったことである。休憩時間を減らしたり、昼休みを短くすればもっと大幅に時間を作ることができそうだが、意外にそういうものではない。休憩を減らすと集中力が落ちて、かえって生産性が落ちてしまうのである。
無駄な時間の発見方法として効果的なのは、とにかく記録をすることである。・・改めてスケジュール帳などで細かく記録してみるとかなりの時間を無駄に使っていることに気付くはずだ。その無駄に使っていた細切れの時間を集めることで、・・意外と簡単にまとまった時間が作り出せるのである。
日本人は基本的に勤勉なのだが、こと勉強については、社会に出るとほとんどやらなくなってしまう傾向がある。活字離れが叫ばれ、しかも、ビジネス書が売れないということそれ自体が、とりもなおさず日本のビジネスマンがいかに勉強をしていないかの現れである。つまり、特別に難しい試験にチャレンジするとか、あるいは、大学に入りなおしたり、新しい仕事を始めたりしなくても、ビジネス書を一通り読むだけでもライバルに勝てるということになるのだ。・・どんな形にしろビジネス誌を読む人はせいぜい三〇人に一人しかいないわけだ。勉強しないと馬鹿になるという恐怖心では自分の心が奮い立たないなら、このように、「勉強した時点で勝ちなんだ」と考えればいい。ライバルたちがほとんど勉強していない状態なのだから、その中で一日一時間でも時間を作って勉強を続けていれば、大きな三位なる可能性が大きいのである。勝ち組、負け組という言い方をあえてするなら、勝ち組になることは実際にはそれほど大変なことではないと私は思う。
勤務時間中に勉強時間を一時間なり二時間なりつくり、その間も給料を支払い、あるいは勉強の材料を提供するというように、環境を用意したうえで、やらない人にはペナルティを課すという考え方に変えるべきだろう。そういう意味では、日本経済がまだ元気であったころには、ビジネスマンは日常的に勉強をしていたように思える。
問題はどうやって自分を暗示にかけるかである。・・簡単なのは、「自分が心からそう思えることを目標にする」ということだ。・・「それは、本当に自分のやりたいことなのか」と、自分に対して問いかけて、これこそ自分の糧になるはずだということに思い当たるまで続けるとよい。
合理的に考えるより、思い込んでしまっていることの方が、実際の効果は高い。・・やり方は多少不合理でも思い込んでしまった人のほうが勝ちなのだ。
トヨタ自動車がなぜ強いのかといえば、「カイゼン」や「TQC」といった技術的な理屈ではなく、要するに、職場そのものが個人に対して強く動機づけを促す雰囲気になっているからである。末端の若い社員の提案でも積極的に採用していく風土が、「自分にもできる」というチャレンジ精神を掻き立て、その中にいることでみんながみんなやる気になるということだ。
中高年になると集中力が持続しにくくなるのは、セロトニンの分泌量とも関係していると考えられるわけだ。それでは、セロトニンを増やすためにはどうすればいいのかというと、大事なのは肉類の摂取だ。肉の中に含まれるトリプトファンというアミノ酸がセロトニンの原料になる。
大人の勉強のいいところは、忙しくて時間がなかなか取れない反面で、幾つものことを同時進行で行えるところにある。学生のころは、使うお金も限られるし行動半径も狭いので、気晴らしの方法も限られるが、大人になれば飲酒なども含めていろいろな手が使えるし、仕事や趣味などの分野で適当に憂さ晴らしも可能になる。
・・一つの仕事で行き詰っても、次の仕事に切り替えることでいいリフレッシュの機会になるからだ。つまり、勉強に行き詰ったら、仕事に集中することでいったん勉強のことは忘れる。
・・蔭山英男氏でも、あるいは私も、勉強法をテーマに研究していると同じ意見になるのが、勉強を好きになる一番いい方法とは、「いい点を取ることである」ということだ。
大人になってからの勉強で、なかなか理解が進まないことの大きな原因の一つが、実は、復習をちゃんとしないことにある。・・大人になって自分で勉強するときには、意識して復讐の機会を作らないと、一回本を読んだだけで「もうわかった。大丈夫」と思い込んでしまいがちになるのだ。
一カ月の間で最低二回繰り返して頭に入れることで、「必要な情報」だと脳が認識し、知識が定着していくのである。逆に言えば、一度頭に入れて覚えたつもりでも、一カ月の間に繰り返し情報が入ってこなければ、いずれは「無用な情報」として脳がどこかに片づけてしまうのだ。
・・若い人たちと接する機会も多いほうだと思う。そうした中で最近とみに感じるのが、若い人たちのストレス耐性の低下だ。ちょっとしたきっかけで挫けてしまってそこから這い上がれない若者が多く、嫌なことからすぐに逃げようとする傾向が本当に強い。
・・ちょっとやそっとではへこたれない強い精神をもった子供が大人になり、会社に入ってからは終身雇用と年功序列に守られていたのである。メンタルヘルス的に見たら、これは極めて理にかなった正しいやり方である。ところが、だれが言い出したかわからないが、いまは、そのまったく逆をやってしまっている。
自分でやりたいこと、興味があることを進んで学ぶように促すといえば聞こえはいいけれど、現実の世の中はどうだろうか。好きなこと、やりたいことをするためには、嫌なこと、つらいことを乗り越えなければならないのである。
内発的動機型の教育で、すきなもの、やりたいことをやらせれば伸びる。だから、それだけをやらせればよいというのは、学校での教育期間の間はまだしも、現実社会に出ると全く通用しない。実際には、長い修業期間の中でやりたくないこと、つまらないこと、つらいことを乗り越えてやっと念願がかなうである。そういった訓練を経ないまま大人になっても、目の前にやりたい仕事が転がっていることは実際にはない。
もうアメリカは、ほとんどの製造業が壊滅状態といっていい。みんながサクセスストーリーを夢見て、ただでさえ低い収入を投資に振り向けることでかろうじて経済が回っているようなありさまだ。結果として、ITを除けば、株の業界だけがもうかるという極めていびつな社会構造になっている。
自らの所属する組織がいつ消滅しても不思議ではないし、これからもリストラは増えるだろう。すると、いつもそういう危機感をもって勉強なり、仕事の訓練なりをしておかないと、いざという時になって意欲がすっかり衰えてしまい、再び日の目を見ることなく失意のまま老いていくことになりかねない。・・意欲さえ失わなければ、人生は何度でもやり直しがきく。』
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