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2012年6月20日 (水)

新聞記事から(【「こころ」と「かたち」】福地茂雄 「うちの会社は別」ではない 24.6.20産経新聞朝刊)

私の所属するあらゆる組織が気づかないうちに衰退し、ついにはつぶれてしまう、ということがないように、気をつけたいと思います。

『日本経済を牽引(けんいん)してきた家電メーカーが巨額の赤字を計上した。創造性あふれるモノをつくり出し、世界を席巻した日の丸家電メーカーも、海外勢の台頭に加え、急激な円高や高額なインフラコストなどにより苦戦を強いられている。

 一時代を築いた企業がもがき苦しんでいる様子をみて、ジェームズ・C・コリンズ氏の著作「ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階」を読み直してみた。非常に示唆に富む内容であり、企業は「成功から生まれる傲慢」からはじまる5段階を経て衰退していくと書かれていた。

 そこで考えた。他の企業が業績不振にあえぐ姿を見て「うちの会社は別だ」と思ったならば、その時点で既にその企業は転落への序章がはじまっているのではないだろうか。

 私がNHKの会長に就任したとき、不祥事のあとの危機の真っただ中であり、改革は待ったなしであった。2冊の本を携えて幹部職員への就任あいさつに臨んだ。1冊は1998年に発売された「アンダーセン発展の秘密」。世界の五大会計事務所の一角を占めていたアーサーアンダーセンがいかに発展していったかという軌跡を描いている。そして、もう1冊はそのわずか5年後、2003年に発売になった「名門アーサーアンダーセン消滅の軌跡」。アーサーアンダーセンは、米エンロン社の粉飾決算に端を発した問題で、あっという間に消滅したのだ。

 「うちの会社は別」ではない。沈まない船はない、ということだ。タイタニック号は絶対に沈まないとされていたが、船の設計者は「鉄でできている以上、沈みます」と言っていたそうだ。

 「ビジョナリー・カンパニー-」には、「規律なき拡大路線」が衰退の第2段階であると記されている。企業として拡大路線を取ることは決して間違っていない。チャレンジをしない組織は活力を失うからだ。とはいえ、やみくもに拡大路線を取ってはいけない。そこには規律が必要なのだ。規律とは、自らの事業領域をはみ出した事業には手を出さないということだ。そして撤退基準を定め、兵力の逐次投入は避けなければならない。道に迷ったときは原点回帰に尽きる。

 衰退した企業が全て復活しないままかというと、決してそうではない。「スーパードライ」発売前のアサヒビールも非常に厳しい時期があり、一時は企業存亡の危機にも立たされた。しかし、最高のタイミングでスーパードライを発売することができ、窮地を脱することができた。天の時・地の利・人の和が理想的にかみ合い、スーパードライは成功した。どれが欠けても、ここまではうまくいかなかった。

 「運が良かった」とも言えるが、神様は運とツキを公平に与えている。それをつかめるか、逃すのかが問題だ。運とツキをつかむためには、やるべきことをしっかりやること、そして謙虚な姿勢であり続けることだ。運が良かったことを否定して、自分の実力だけで成し遂げたと勘違いしてはいけない。それは「成功から生まれる傲慢」である。

 コリンズ氏はこうも書いている。「真に偉大な企業は困難にぶつかっても回復し以前より強くなって帰ってくる」。ものづくりの国・日本の底力に期待したい。』

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