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2012年3月

2012年3月 5日 (月)

SAS・精鋭部隊実戦訓練マニュアル アレグザンダー・スティルウェル著 角敦子訳 原書房

いろいろと学ぶことの多い書でした。

『中間目標を設定して、一つ一つそれだけを達成しようとすれば、大それた目標も現実味を帯びてくる。そうしれば、自信もつくというメリットもある。大きな目標は、いきなりそれだけみるとまったく手に負えないように感じられるが、この方法を用いれば、そういった弊害を克服できるのだ。

休息や気晴らしは目標設定に必ず盛り込むべきだし、この部分を避けて通れば逆効果になる。・・・適切な休憩時間を入れてもやっていることがつまらなく思えてきたら、目標にどこか間違いがあるのかもしれない。・・いったん自分が本当に意欲を感じているものがなにかをじっくり検討しなおす必要があるだろう。

THRは、心臓が循環系の強化と調整を最適な形で行っているときに出る心拍数だ。最大心拍数を基準にすると、THRはその70~80パーセントに当たる。トレーニング時の心拍数が、これよりも低すぎたり高すぎたりしたときは、循環系を鍛えるどころか、体に害を及ぼしている危険性がある。自分の年齢のTHRは、220から年齢を引いて、その数字の85%と70%の間の範囲となる。

訓練の目的からすると、走った距離よりはランニングに費やした時間のほうが重要だ。・・忘れてならないのは、訓練のしすぎも訓練不足もよくないということだ。

・・こういうときこそ、目標に立ち返るべきなのだ。終わらせなくてはならないことや、やりそこなったこともあるだろう。だが、ここでいったん立ち止まってとにかく休みを取って何を目標にしているのかを振りかえって見るとよい。・・練習メニューを動かせば、物事を把握しているという感覚とやる気がまたよみがえってくるだろう。こういったことがすべて、健全な姿勢を呼び起こすのだ。

偉人や偉大なる功績者は、えてして驚くほど謙虚に細部に気を配るものだ。そもそもそれが「偉大」たるゆえんなのだ。

陽気さは社交的な態度で人がかかわりやすい。そのため明るい人間ほどのチームでも貴重な存在となる。そしてほがらかでいると、個人的な問題はわすれてしまうものなのだ。また、創造性が刺激されて、物事にうまく対処できるようにもなる。

正当な怒りは、不当なものに対する前向きな反応で、自分や人を守るためにアドレナリンと力を出す。不当な怒りは侵入する際にしばしば勝手な理屈をもちこんで、ふだん冷静なときの論理的思考体系を置き換えてしまう。

感情と気分:・計画を「気分」や偶発的出来事のために変更しない。・成功する人間は、困難なことがあっても動じない。・何が起こっても、プラス思考の見方をする。・いなや気分は、エスカレートして自分がコントロールされる前にねじ伏せる。・休息とレクリエーションのための時間をとり、気分も新たに元気になって、取り掛かっている仕事に戻れるようにする。・自分の功績をよく覚えておいて、よくやったと祝う。・過ぎてしまったことは忘れる。・冷静で自制心のきいている状態を保てるようにする。

瞑想:瞑想のテクニックを用いると、目標をより明確に意識できて、雑念を払うことができる。・・一人になれる静かな場所を見つける。 背筋をピンと伸ばして座り、絶対に気を散らさないようにする。 規則正しく深い呼吸をして、体と心のテンポを落とす。 過去を悔やんだり、将来のことを計画したりするのをやめて、特定の言葉やフレーズに精神を集中させる。または、絵に集中してもよい。 努めて心を静めて、言葉や絵に約10分間集中し続ける。気をそらすような考えが次から次へと浮かんでも、何もしないでほっておく。・・翌日から数週間、一度に瞑想する時間を少しずつ延ばして、30~45分は座っていられるようにする。練習をつむにしたがって、集中力が高まり、自分が心の動きを制御しやすくなったと感じるだろう。それにより、意思決定力や行動力もついてくる。

ストレスがかかる状況でも、冷静さを保つ練習をしよう。とくに疲れたときには、できるだけ筋道たった考え方をする。選択肢は最小限に抑えること。くたびれて、神経集中が難しいときはなおさらそうだ。

調子を狂わせ、能力を発揮させにくくする出来事や反応の仕方は山ほどある。他の人間や天候、仕事のスケジュールなど、さまざまなことが関係してくる。落伍者はこういった要因に意欲をそがれるままにするが、一流の実績を残すものは、内面の強さを神経に集中させて、意に介さずに先に進む。それが両者の違いだ。自信をつけたいなら、やればできる、という考えでのぞむべきだ。弱気で消極的な態度でいるより、よほど結果が出やすい。もうひとつ大事なことは、自分に対しても人に対してもゆったり構えることだ。困難に出会うことを予想して、自分にプレッシャーをかけてはならない。・・自信のある人間は、自分の幸福な気分を人に伝染させる。いい気分になるのに誰かに賞賛してもらわなくてもよいのだ。

勇気をもって恐怖を乗り越える方法のひとつに精力的に動き回るというのがある。むやみやたらに、というのではないが、恐怖といい争わなければいい。人は行動の恐ろしい結果を考えれば考えるほど、呆然となって動けなくなってしまう。勇気をふるうということは、ある程度この恐怖の声を無視することでもあるのだ。そうすれば、行動を起こして、前進したいという意思のほうが優位につける。

・・ほとんどの場合は自信を持った意識的な行動が、なによりも勇気を示すのだ。爆発的なエネルギーは、その時点では勇気のようにもみえるが、すぐに消えてしまう。

勇気はしばしば、未知の領域に入るとき、また恐怖を感じることを実行するときに必要となる。困難な状況にじっと耐えるという、消極的な我慢強さも、また逆戻りせずに険しい道を進み続けることも勇気なのだ。後者のタイプの勇気は、粘り強さでもある。

プラス志向の考え方をするだけで、なんでも望みが叶うというのは、他の要因も関わってくるので正しくない。ただ確実にいえるのは、プラス志向は体に活力を与え、マイナス志向は活力をそぐ、ということだ。いったん習慣化すると、それほど苦労せずにプラス思考を維持できる。

・・プラス志向は、心と体を同調させていついかなることが降りかかっても反応できるように準備を整える。ところが、マイナス志向の考えや不安は、体に悪影響を与えて効率性を悪くしてしまう。つまり、結果は考え方によって変わる、ということだ。

ポジティブな結果を思い浮かべるイメージトレーニングは、一流のスポーツ選手や精鋭の兵士を訓練する際に使われている。・・想像力は非常に威力にある武器で、意思の力より効果を発揮する。人に何かを無理やりやらせるのと、納得してやってもらうのと同じような差が出るのだ。無理強いするよりは、納得してもらうほうが、仕事がはかどるだろう。最初は簡単なイメージを思い浮かべて一日10分かけて、心の中で毎日の練習や一連のトレーニング、テストなどをイメージする。そしてその手順を自分がうまくやり遂げる様を想像する。イメージトレーニングになれてきたら、目標をさらに高くして、最高の成果を思い描いてもよい。天候や、装備品の感触や重さなど、周囲の環境をできるだけ詳しく細部まで思い浮かべよう。空腹やのどの渇き、疲労やリュックが食い込む肩の痛みを想像してもいいが、絶対にあきらめない、という決意を固めておく。

もっともな理由で恐怖を感じることはよくあるが、理不尽な恐怖症というのも山ほどある。

SASのモットーは、「危険を冒すものが勝利する」だ。リスクを冒すことによってSASの連隊はつねに敵を出し抜く。では、SASはどのような危険を冒すのかを踏み込んで考えてみたい。彼らは、西部劇のガンマンのように、人がごった返している建物に乱入したりはしない。むしろリスクを可能な限り小さくするために、準備や分析、訓練を行う。SASは襲撃予定の建物の実物大模型の中で、敵のあらゆる動きを想定した訓練をすることが知られている。リスクを細かく計算してから突入するのだ。

冒険を阻む最大の障害物は、失敗を恐れる気持ちだろう。リスクを侵さない者は、人に失敗するのを見られたくないか、自分の惨めな姿を見たくないかのどちらかだ。完ぺき主義者は何もかも絶対的に正しくなければ気が進まない。だが、そのくせ最初の障害物も動かせない場合が大半なのだ。

失敗の可能性がある場所に身をおいたとしても、もちこたえて勝利をつかむ-おそらくそれが、危険を冒す上でもっとも基本的なスタンスだろう。・・成長の機会を自分に与えて、前進する。そうすればたとえ失敗したとしても、次に行かせる何かを学んでいる。そして将来もう少し準備が整った段階で、またトライすることになるだろう。

バナナの成分には、カリウム(心臓によい働きをする。)や、ビタミンC、繊維が含まれている。科学者が完璧な果物を作ったとしたら、バナナに近いものになるだろう。

のどの渇きは、脱水症状の正確な目安とはならない。のどが渇いたと感じた時点では、脱水症状がかなり進行している可能性がある。体内の水分量を知りたいなら、小便の色を観察するのが一番だ。黄色の色合いが変わっているなら、水かスポーツドリンクを飲む。小便の色が濃くなればなるほど、水を飲まなくてはならない。水分補給は、少しずつこまめに、という原則を覚えておきたい。ただし、少しといっても少なすぎては駄目だ。

睡眠は軽んじられやすいが、トレーニング量を増やしただけ食物を多く摂取するのと同様に、ぐっすり眠って休みをとるパターンを維持すれば、体も心も緊張に耐えやすくなる。・・軍のトレーニング・プログラムの中では、睡眠剥奪は適性テストの一環として行われる。本当の性格を評価しやすいからだ。この訓練はまた特殊部隊の候補生に、実戦任務で睡眠のパターンを著しく変えなくてはならない場合に備えさせるという意味もある。

・・頭に袋をかぶせられて、何時間も座らされるかもしれない。尋問も受けるだろう。こんな状況でも、特殊部隊の兵士は平静を保たなくてはならない。たとえ屈辱的な目にあっても、何度も同じ質問をくりかえされたとしても、だ。そんな時尋問訓練をパスする候補生は、精神状態を「じわじわ燃える怒り」に切り替えられるようだ。自分が誰で何者なのかという、心の奥深くの核を失わずにいながら、外見はほとんど怒りを感じさせずにいる。

展望についていえるのは、信念とペアにしなくては意味がない、ということだ。自分が予見した筋書きに自分も参加している、という信念を持つ必要がある。・・本気になって信じなければ、展望は薄っぺらな二次元のままで終わる。そして自分の役を誰か違う人物が演じることになるのだ。信念を見直して強化すれば、それを現実のものにできる。

どんなことも習慣化するまでは、少なくとも30日間はかかるという。考え方を変えよう、と心に誓うだけでは駄目だ。前向きな肯定をなんども繰り返す。そうすればやがて、意識も無意識もそれを新しい現実として受け入れるようになる。

前もってありえる不測の事態のための心構えをしておけば、それで絶体絶命になる可能性は低くなるだろう。こうすることによって、不意をつかれて気持ちを乱される代わりに、冷静さを保って目標に集中しやすくなる。未来をのぞける者はいない。だから思いもよらない失敗を受け入れる余裕が必要なのだ。』

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