勝海舟の人生訓 (童門冬二著 PHP)
勝海舟自身の言葉(考え)か、著者の言葉(考え)か分かりにくい部分がありましたが、読み返したい部分を書きとめておきます。
『行いは自分が、批評は他人がする 行蔵は我に存す。毀誉は他人の主張、我に与らず
死んだ学問よりも生きた世間を重視するという考えを持っていた勝は、よく町を歩いた。これは、長崎の海軍伝習所にいた頃、オランダの教官から教えられたことである。「時間があったら市中を散歩して、どんなことでも見て覚えたおけ。いつかは必ず役に立つ。兵学をする人はもちろん、政治家にも、これは大切なことだ。」
座禅と剣術とがおれの土台となって、後年、たいそうためになった。幕府が倒れたとき、万死の境を出入りして、ついに一生を全うしたのは、まったくこの二つの項であった。いままで、たくさん刺客やなんかに襲われたが、いつも手捕りにした。この勇気と胆力とは、畢竟この二つに養われたのだ。
天下(社会)は生き物だ。区々たる没学問や、小知識ではとても治めていくことはできない。世間の風霜にうたれ、人生の酸味をなめ、世態の妙をうがち、人情の微を究めて、しかる後、ともに経世の要務を談ずることができるのだ。小学問や、小知識を鼻にかけるような天狗先生は、しかたがない。
「聞くべき意見」と「聞かない意見」とを分けた。分ける基準は、「その人物が一流であるか、二流であるか、あるいは三流五流であるか」である。一流の人物の意見は、無条件で聞いても、二流三流の人物の意見は、黙殺した。無視した。それが彼を鍛えた。・・人間にも一級品もあればガラクタもある。ガラクタのいうことをいちいち真に受けていたではきりがない、というのが、勝の人生態度であった。
勝は、・・恩人への恩の返し方は、「その人たちが期待する人間になることだ。季節季節の変わり目に、物を届けたり、お礼を言いにいくことではない」と思っていた。
今日したことの評価を今日求めるな
人の評価は上がったり、下がったりする。 (そんなことをいちいち気にしていたら、生きていられないと考えていた。)
勝は、「世の中に役立つ人間として、出世していく」ということを念願していた。彼にとっては「社会に役立つこと」が先であって、「出世や名声、あるいは富」は、その社会に役立つことを成し遂げたことによって、付加的に、自然についてくる、ということである。
「トップたる者は、、必ず自分の部下の生活を保証しなければならない。それがトップに課せられた当事者能力の最大のものである」という考えを勝は終始持ち続けた。勝を、老練な政治家だ、とだけ見るのは誤りである。むしろ、彼は経済を重視した経世家である。
世の中には機運というものがある。 勝は・・維新の三傑といわれた連中が幕末維新という機運に乗ったから、彼自身が閉口するほどの働きをした、とみるのである。逆にいえば、機運が静まれば、偉かった人間の偉大さも次第に色褪せてしまうということである。
家庭の心配事が志気を失わせる。元気を減らすのに一番力のあるものは、内輪の世話や心配だ。
すぐ腹をたてては大事業はできない
周囲の反感を買ったら沈黙せよ。 思うところ有るをもって、敢えて一言も発せず
芯のない人間関係はめだかの群れだ 勝の人生態度は、「まず、何でもいいから一つのことを修行し、それを極めて専門家になることだ。その上で、一般の社会に応用すべきだ」ということだった。「よきゼネラリストになるためには、まずよきスペシャリストでなければならない」という考えである。
有能な若者を闘争から遠ざけよ。攘夷派青年を北海道開発に従事させよ。・・・このことは、何も彼らを国政から遠ざけるという意味ではない。北海道という遠隔の地から、京阪の政局を客観的に見て、自分たちが何をすべきかを改めて考えさせるとことにある。
かつて勝は薩摩の重役たちといろいろな話をした。そのとき西郷の名を出した。すると重臣たちは「え?あの吉之助めのことですか?あれはまだまだ青二才です」といって一言のもとに西郷を切り捨ててしまった。が、二束三文に振り落とされてしまった青二才の西郷は、勝に、「こういう男こそ、将来を語るにたる人物だ」ということを感じさせた。そのきっかけをつくったのは名君島津斉彬であった。斉彬が、西郷を勝に紹介したのである。勝は言う「こういうわけで、平生、小児視している者の中に、存外非常の傑物があるものだから、上に立つ者は、よほど公平な考えをもって人物に注意していないと、国のため大変な損をすることがある。」』
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