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2011年7月18日 (月)

役に立たない自衛隊、だからこうする (関肇著 展転社)

元防衛官僚が書いた本です。しかし、肝心の「だからこうする」には残念ながら、あまり特筆すべき箇所はないと思いました。それでも日本の安全保障を考える上で覚えておきたい事項がいくつか記されていました。

『近隣の韓国、中国では反日感情が強いが、台湾では親日感情が強い。かつて来日したドイツのシュミット元首相は、「日本には友人がいない」といったことがある。しかし唯一友人があるとすれば台湾だ。

米国に日本の求めることをさせるには、バーゲニング・パワー(交渉力)が必要だ。例えば、従軍慰安婦の米下院決議が行われたとき、日本は米国で反対のキャンペーンを行ったが無視された。当時トルコの歴史上のアルメニア人虐殺といわれる問題に対して、同じような非難決議が米下院に出されていた。トルコは猛反発し米国との安全保障条約はあるが、イラクでの米軍の活動に協力しないとの意見も出た。空港利用を始めトルコ経由の輸送が停止すれば、米軍のイラクでの活動は決定的に不利となる。米国は下院でのトルコ非難決議を行わなかった。これは日本の米国に対する影響力の差ではないのか。

大綱制定にあたって、財政当局は経費をGNP1%内とするよう強く主張した。防衛当局は強く反対したが、当時の三木首相は安易に財政当局に同意し、GNP1%以下が閣議決定された。そして、大綱に部隊や装備の数量を書き入れて固定した別表をつけたことも、財政当局の強い意向によるものだった。財政当局には、部隊や装備品の増強による財政負担を避けたいという考えがあるだけで、・・・そのため防衛力は、その後の極東の戦略環境の変化に対応できるものではなくなった。

平成17年度大綱当時は、各国は軍事力増強を始めており、日本だけが削減している。それは、今日まで続いている。政治の無関心と財政当局の根拠のない削減要求がまかり通っているのだ。

専守防衛は、軍事用語の戦略守勢や専守防御と同じとしているが、これは間違っている。専守防御は戦前の陸軍で使われた用語で、大正2年、陸軍大学校「兵語之解」では「単に防支のみを目的とし、全力を尽くして一地を固守するにとどまる防御をを『専守防御」という。この方法では決して決定的勝利を得ることはできない』としている。・・・戦術用語というべきだろう。・・戦略守勢は戦略用語で、・・敵の攻撃を待ち受けて敵に勝とうとする受動的立場を言う。・・イニシアチブを取れないから、一般的に受動的で不利とされるが、準備や地の利をもって敵を挫折させる有利な面もあるとされる。

大東亜戦争末期、日本軍は攻撃能力を失いやむを得ず専守防衛と同じことになった。・・「相手の基地を攻撃することはできず、専らわが国土において防衛を行い、侵攻して来る敵をそのつど撃退する能力」しかなかった。日本は、・・思うままの攻撃を受けた。・・迎撃したが、次第に戦闘機の数も減少し、ジリ貧に陥った。・・大東亜戦争末期は攻撃能力を失ったからそうなったが、専守防衛は自らそのような状態を作ろうというものだ。

同盟国に頼る核抑止はどの程度頼れるのか。核が恫喝に使われた例がある。エジプトがスエズ運河を国有化したとき、英仏はこれを阻止するためにスエズに出兵した。ソ連のフルシチョフ首相は、英仏に撤兵しなければ核の行使もあるといって恫喝した。英国に対する核の傘を保障していた米国は、アイゼンハワー大統領が英、仏のスエズ出兵に反対だった。ソ連の恫喝に対して米国は、ソ連が核を使用すれば対抗するといって英仏を守ることをしなかった。英、仏は撤兵せざるを得なかった。これが英国の核保有の契機となる。核は、恫喝に使われても核の非保有国にとっては武力行使以上の力となる。』

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