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2011年7月

2011年7月30日 (土)

漢字廃止で韓国に何が起きたか (呉善花著 PHP研究所)

韓国の漢字廃止の悪影響については、以前から聞いていましたが、元韓国人による著作により、よく分かりました。日本でもごく一部に漢字廃止を訴えている人がいますが、絶対にノーです。むしろ英語だけでなく、漢字の旧字を復活させるなど、日本語の教育も充実させていくことが重要だと思います。いずれにせよ、今後韓国は日本以上の少子化に加えて、思考力の低下により、国力がどんどん下がってくることが予想されます。何の目的があってか分かりませんが、「韓流」を盛り上げようとする勢力に乗せられることなく、我々は冷静に対応していくことが必要でしょう。

『韓国の学校教育で、漢字廃止・ハングル専用政策がとられるようになったのは、1968年春からのこと。

総じて書き言葉の世界に、語彙の恐ろしいまでの貧困化がもたらされた・・・とくに文学の面では、散文でも詩文でも、伝統的にあった豊かな漢字表現の大部分を失ってしまった。そのため、現在の韓国人が書く文章は一般的に、簡潔、単純、直接的という傾向が強く、言葉の奥行きが極めた浅い。

ハングルというのは、「大いなる文字」あるいは「一つ(唯一)の文字」という意味だが、これは日本統治時代に一般化された呼び名で、もともとは「訓民生音(民に教える正しい音)」といった。つまり、漢字を読み書きできない一般大衆のために朝鮮語の音を正確に書き記すことのできる文字として作られたもの

漢字ハングル混じり文が本格的に用いられたのは、福沢諭吉の発案で日本で鋳造したハングル活字を用いた李朝の「官報」の役割をも果たしていた新聞「漢城周報」(明治19年)が最初である。そして、日本の手で学校制度が敷かれてから、一般の人々の間にまで広く普及したのである。

日本の中国専門家であり、漢字学者である白川静氏は「漢字は国字である」といったが、それは日本が漢字を日本化していったからである。日本人にとって漢字は外国語を表記する記号ではない。漢字を国字としていくなかで、漢字が持つ意味の歴史的な深さ、文化的な概念やイメージの広がりを自らのものとしてきたのだし、さらにそこへ日本独自の文化性や意味を付与していったのである。そうではなかった韓国には、漢字は国字だという考えがなかった。だから廃止することができたのである。

韓国語の語彙は、日本語以上に漢字語の影響が強く、一般の文書で使われている語彙の約70%が漢字語で、公文書になると90%以上が漢字語だといわれる。

私(著者)は、韓国人が漢字の廃止によって失ったもののなかでも、最大のものは、「概念を用いて抽象度の高い思考を展開すること」だと思ってきた。

民族文化に誇りを持つのはよいことだが、漢字論者にあってもハングル民族主義者と同じように、自民族優越主義、あるいは自民族中心主義の民族主義を高唱する者たちがすくなくない。こういう手合いによって、本来の漢字復活の意義が見えなくなってしまうことを恐れる。

漢字排斥がもたらした最大の弊害が、韓国語では日本語と同じように概念語や専門用語の大部分が漢字語であるのに、漢字の知識によってそれらの言葉を駆使することができなくなったところにある。そのため韓国人は、抽象度の高い思考を苦手とするようになってしまったというのが私の考えである。・・・新聞や雑誌や書物の中に、意味不明の言葉がたくさん出てくることになる。ハングル専用世代はしかたなくそこを読み飛ばす。そのため、実にいい加減な読み方しかできていないのが実状である。

「日帝問題」となると、韓国人は・・きまって感情論となり、世界的な水準から歴史を見つめた冷静な議論になることがまずない。それは通常、反日教育や固陋な小中華主義のせいだとされてきた。しかし、そればかりではない。そもそも現代韓国は、漢字を廃止したため、世界を論ずるにふさわしい抽象度をもって議論を展開するための言語的なベースが、ほとんど崩壊状態にあるのである。

国民一人当たり年間平均読書量0.9冊という、惨憺たる知的荒廃が生み出されている。「国民全体が文盲のどん底に陥った」というのは、決して大げさな言葉だとばかりはいえないのである。

日本人と韓国人のカソリックの尼さんに座禅をさせて脳波を測定すると、日本人はリラックスした心を示すが、韓国人では興奮気味になる、というデータがあると聞いたことがある。これは、よく分かるような気がする。韓国人の場合は、日本人のように「心静かに神に祈る」といった人よりも、熱心に神を求めていく気持ちを高めて祈っていく人が多いといえるからである。』

2011年7月22日 (金)

新聞記事から(【石平のChina Watch】「外宣工作」に用心せよ! 産経新聞 23.7.21)

皆さん、注意しましょう。中国はもちろん、国境を接している国に対しては。

中国政府の公式用語に「外宣工作(対外宣伝工作)」というものがある。日本でいう「対外広報」にあたるが、中国では、党の直接指導下で一種の国家戦略として展開されるような外国・外国人向けの宣伝活動を指している。

 外宣工作の総元締めは党中央対外宣伝弁公室である。その責任者である王晨弁公室主任は今月5日、共産党機関誌の『求是』に寄稿して「外宣工作」について論じているが、その中で彼はいつものように、「外宣は党と国家にとっての大局的・戦略的工作である」と述べ、外宣工作の重要性を強調している。

 こうした「戦略的」重要工作の一例を挙げると、今月5日、党中央外宣弁公室は30カ国の駐中国大使館の武官六十数名を招いて「チベット平和解放60周年業績展示会」を観覧させたことがある。それは言うまでもなく、中国のチベットに対する「植民地支配」を対外的に正当化するための工作だが、そこに隠されている党と政府の「戦略的」意図は実に明確である。

 中央だけでなく、省や県などの地方行政区でも外宣工作は展開されている。去る6月3日、雲南省水富県の共産党宣伝部が会議を開いて「わが水富県の外宣工作の強化」を訴えたが、内陸奥部のこの「田舎町」が一体どのような「外宣工作」をやっているのかというと、それは主に、当該地域に訪問してくる外国人を対象にしているという。当然、全国の地方政府は同じことをやっているから、理論的には中国各地を訪問している外国人のすべてが、その「外宣工作」の対象となっているはずである。

 外宣工作の中心部分は海外で行われている。日本でおなじみの孔子学院も実は、こうした外宣工作の一環であろう。2009年7月31日に北京の孔子学院本部で開かれた会合で、中国教育部の平副部長(副大臣)は「孔子学院はわが国の外交と外宣工作の重要なる一部分である」と明言したことからも、「孔子学院」たるものの性格がよく分かってくる。

 外国での外宣工作となると、海外に住む中国人たちが協力者として参加する。2010年3月、中国政治協商会議が北京で開かれた際、政府は海外に住む一部の中国人を「特別代表」として会議へ招待したが、彼らは会議の中で、国家の展開する対外宣伝工作に対して多くの「建設的な提言」を行ったと報じられている。

 さらに驚くべきことに、党・国家と連携して、中国の人民解放軍も独自の対外宣伝工作を展開している。近年、解放軍は年に一度「全軍対外宣伝工作シンポジウム」を開くことになっているが、2010年9月に開かれた直近のシンポでは、「対外的に解放軍の良いイメージをいかに作り出すのか」が中心テーマとなったという。東シナ海や南シナ海での中国軍の暴走が周辺国の警戒感を高めた中で、軍がソフトなイメージを打ち出すことによってそれを和らげる必要があるのであろう。

 とにかく今の中国は、未曽有の勢いで対外的拡張を推し進めながら、孔子様や外国在住の中国人たちを巻き込んだ形で、中央と地方と軍による「挙国体制」の外宣工作を世界的に展開している。いわば「用兵の道は、心を攻むるを上となす」という諸葛孔明流の謀略マインドが、見事に貫徹されているのである。

 当然、日本も含めた周辺国の政府と国民は、今でも何らかの形でこのような下心見え見えの外宣工作にさらされているから、われわれとしては、それに引っかからないよう、常に用心しておくべきであろう。』

2011年7月18日 (月)

役に立たない自衛隊、だからこうする (関肇著 展転社)

元防衛官僚が書いた本です。しかし、肝心の「だからこうする」には残念ながら、あまり特筆すべき箇所はないと思いました。それでも日本の安全保障を考える上で覚えておきたい事項がいくつか記されていました。

『近隣の韓国、中国では反日感情が強いが、台湾では親日感情が強い。かつて来日したドイツのシュミット元首相は、「日本には友人がいない」といったことがある。しかし唯一友人があるとすれば台湾だ。

米国に日本の求めることをさせるには、バーゲニング・パワー(交渉力)が必要だ。例えば、従軍慰安婦の米下院決議が行われたとき、日本は米国で反対のキャンペーンを行ったが無視された。当時トルコの歴史上のアルメニア人虐殺といわれる問題に対して、同じような非難決議が米下院に出されていた。トルコは猛反発し米国との安全保障条約はあるが、イラクでの米軍の活動に協力しないとの意見も出た。空港利用を始めトルコ経由の輸送が停止すれば、米軍のイラクでの活動は決定的に不利となる。米国は下院でのトルコ非難決議を行わなかった。これは日本の米国に対する影響力の差ではないのか。

大綱制定にあたって、財政当局は経費をGNP1%内とするよう強く主張した。防衛当局は強く反対したが、当時の三木首相は安易に財政当局に同意し、GNP1%以下が閣議決定された。そして、大綱に部隊や装備の数量を書き入れて固定した別表をつけたことも、財政当局の強い意向によるものだった。財政当局には、部隊や装備品の増強による財政負担を避けたいという考えがあるだけで、・・・そのため防衛力は、その後の極東の戦略環境の変化に対応できるものではなくなった。

平成17年度大綱当時は、各国は軍事力増強を始めており、日本だけが削減している。それは、今日まで続いている。政治の無関心と財政当局の根拠のない削減要求がまかり通っているのだ。

専守防衛は、軍事用語の戦略守勢や専守防御と同じとしているが、これは間違っている。専守防御は戦前の陸軍で使われた用語で、大正2年、陸軍大学校「兵語之解」では「単に防支のみを目的とし、全力を尽くして一地を固守するにとどまる防御をを『専守防御」という。この方法では決して決定的勝利を得ることはできない』としている。・・・戦術用語というべきだろう。・・戦略守勢は戦略用語で、・・敵の攻撃を待ち受けて敵に勝とうとする受動的立場を言う。・・イニシアチブを取れないから、一般的に受動的で不利とされるが、準備や地の利をもって敵を挫折させる有利な面もあるとされる。

大東亜戦争末期、日本軍は攻撃能力を失いやむを得ず専守防衛と同じことになった。・・「相手の基地を攻撃することはできず、専らわが国土において防衛を行い、侵攻して来る敵をそのつど撃退する能力」しかなかった。日本は、・・思うままの攻撃を受けた。・・迎撃したが、次第に戦闘機の数も減少し、ジリ貧に陥った。・・大東亜戦争末期は攻撃能力を失ったからそうなったが、専守防衛は自らそのような状態を作ろうというものだ。

同盟国に頼る核抑止はどの程度頼れるのか。核が恫喝に使われた例がある。エジプトがスエズ運河を国有化したとき、英仏はこれを阻止するためにスエズに出兵した。ソ連のフルシチョフ首相は、英仏に撤兵しなければ核の行使もあるといって恫喝した。英国に対する核の傘を保障していた米国は、アイゼンハワー大統領が英、仏のスエズ出兵に反対だった。ソ連の恫喝に対して米国は、ソ連が核を使用すれば対抗するといって英仏を守ることをしなかった。英、仏は撤兵せざるを得なかった。これが英国の核保有の契機となる。核は、恫喝に使われても核の非保有国にとっては武力行使以上の力となる。』

2011年7月 9日 (土)

失敗学 実践講義 (畑村洋太郎著 講談社)

かなり以前に新聞記事の抜粋で紹介した、畑村洋太郎氏の著作です。大変参考になることが書かれていました。

『実際には、原因があっても必ずしも結果は起こらない。逆に言うと、原因を取り除くことが失敗防止につながらないこともある。・・すべての失敗は、ヒューマンエラー(人的要因が主因となる失敗)から起こるといっても過言ではない。

(緑園こどもクリニック院長の山中龍宏さんによれば)日本では1960年から子供の死亡原因の第1位は病気ではなく「不慮の事故」だということ。こうした事故の多くは子供の強い好奇心から引き起こされる。

昔に比べると日本ははるかに安全な社会になった。しかし、その一方で安全に慣らされ過ぎたせいなのか、人間の危機感知の領域が狭くなったことで起こる事故が増えてきているように感じる。

(ベビーカーはもともと電車の乗降時に使うことを想定していないことから)「電車への乗り降りが安全にできるようにベビーカーの仕様を変更する必要はない」という主張は確かに正論でしょう。しかし、正論を主張することで一歩間違えばたいへんな事故になりかねない恐ろしい構造がそのまま放置されるのですから、むしろその方に危機感を覚えます。現実には多くの人が、メーカーが認めていない誤った方法でベビーカーを使用している以上、そして実際に事故まで起こっている以上、「間違った方法で使っているのが悪い」という主張には無理があります。 その後、この人気メーカーも見直しを行い、改良を加えて同種の事故が発生しないように対処したそうです。

30年の法則:過去に経験した事故や失敗とほぼ同じものが、30年後に再び繰り返されるというのが現実によくある

事故の数をゼロにすることは現実にはほぼ不可能。しかし、事故を起こさないための努力は続けながら、それでも事故が起こることを前提にして、「最悪の事態」だけは「絶対に」避ける備えをする、それが「本質安全」という考え方。「制御安全」という考えも大切だがあくまでも補助的なものでなければいけない。

六本木ヒルズの事故の根本原因は、技術思想が伝えられる過程で「衝突力低減のためには軽量化しなければならない」という重要な知識が忘れられてしまったことにある。なぜそのようになったかは、製品を設計・開発するものが「技術の来歴」の調査をまったく行わなかったことにあると私は見る。

思いつきにくいが考えれば思いつくというパターンの事故にしても、いずれ必ず起こる。この主の事故の発生を防ぐには、どのようなシナリオで事故が起こるかをしっかりと想定し、それに対する備えをきちんと行う必要がある。

人が注意しなければならないことには階層性がある。階層の一番上は、何をおいても注意しなければならない「絶対に必要なこと」。次はそこまで重要でないものの「普通に必要なこと」がくる。一番下には、必要ではあるものの「できればあるほうがいい」程度のこと。

人間の注意力や集中力には限界がある。一番大切なことから細かいところまですべてに同じように注意力と集中力を注ぐのは、現実にはほぼ不可能。・・・注意されたことに全力で取り組まず、本当に大事なことをおろそかにしないように気をつけながら「要求されたことに適度に対応する」のが正しい対処の方法。

マニュアルの問題点:マニュアルに含まれている「試行錯誤を行いながら得られて知見」の本来の意味が次第に失われ、一部のことしか反映していない非常にやせ細った知識を基にした作業が行われるようになる。

たいていのマニュアルでは一項目ずつチェックすることになっているが、・・・全部の作業が終わってから一気にチェックの印をつけるようになり、建前と実態が乖離し、最後にチェック漏れが起こる。

マニュアルは守るためにあるものだが、されどマニュアルは変えるためにあるという考えを徹底させるべき

真に意味のあるマニュアルにするための一番のお奨めは、マニュアルを使う人自身が自分で考えてマニュアルを作っていくこと・・マニュアルを作った人はその分だけ賢くなる。その積み重ねが全体のレベルアップにもつながる。

組織が大きくなり成熟すると、・・・次第に縦割りになりそれぞれの役割分担をはっきりさせるようになる。ところがそうなるとそれぞれの役割の間にできる隙間領域に関しては誰もが遠慮するようになり、「本当に大切なことなのに誰も手をつけない」ということが起こってしまう。

予兆が見られたときにすぐに対処すれば大きな事故の発生は簡単に防ぐことができるように見える。しかし、多くの場合、失敗の当事者には予兆が予兆に見えない。

安全というのは、一ヶ月やそこらの取り組みで作ることはできない。企業文化から変えるとなるとそれこそ何年もかかる。

「付加設計」とは条件などが変化して新たな要求が生じた際、設計全体を一から見直すのではなく、小出しに新たな機能を付け足していくことで対処する方法。付加設計は絶対に失敗する。・・状況が大きく変化した時には、新しく要求される機能や新しい制約条件、安全性などをトータルで見ながらまったくゼロから全体を組み立てなおすしかない。これが「トータル設計」の考え方。・・・一番簡単な方法は一度すべて捨ててしまうこと。その上で本当に使うものだけを拾いなおしてみると、自分が固執していたものの大半は、本当は使うはずのないガラクタだったことが分かる。

システムは全体で動かして見なければ、きちんとした検証作業ができない。

システムや製品などで本当に使えるものかどうかを検証作業するときに大変有効なのが「仮想演習」と「逆演算」。「仮想演習」とは想定されるさまざまな状況を考えながら頭の中で行うシミュレーションのこと。「逆演算」とは従来と正反対の方向から見ていくことで問題点をあぶりだす手法。眼に見える結果、予想される結果からスタートの反対方向に遡って考えることで重量見えていなかった失敗の原因を探ることができる。

世の中には「バカと専門家は細かいことを言いたがる」という大法則がある。その後ろには、「バカと専門家は細かいことが気になる」という法則がある。そして、こうしたものが背景になって、細かい議論や低次元なテーマの議論ほど長引くことになる。

10倍規模の大きさのタンクを作る場合、タンクの表面積は二乗の100倍になるものの、一方で容積は三乗の1000倍になる。・・これが「相似則」の落とし穴。設計者はよく小さなもので成功したことをそのまま大きなものに応用することがあるが、これは大きな間違い。小さなもので成功したことをそのまま大きなものの応用すると、そう自足の落とし穴によって必ず問題が起こる。

一見S塗ると完璧に対策したように見えても・・抜けはかならず発見される。それは、事前に考えていることと事後の対処法の間に「考えの壁」があるから。火災の例では、火事を起こさないようにするにはどうするかについてはみながよく考えるが、起こってしまった火事にどう対処するかについてはみなが考えたらず、とかく考え落ちになってしまうこと。失敗や事故というのはその考えの抜けを突くようにして起こり、予想している以上に被害が拡大してしまうもの。

「何か事が起こったらそのときに考えよう」という「直列思考」ではいざ事が起こると目の前で進行する事態に何とか対応しようとするばかりでどんどん傷口を広げることが非常に多い。一方「起こった後にどのように対応するか」をきちんと考えておけば、Aの場合はaパターンで対応、Bの場合はbパターンで対応という風に「並列思考」で対応することができ、結局は事故や失敗を未然に防ぐことにつながる。

「できないこと」は「できない」とはっきりいうこと。立場は悪くなるかもしれないが、それでも要求を呑んだために無理がたたって致命的な失敗を起こし、会社自体が存続できなくなる自体を招くよりもはるかにまし

「失敗と真正面から向き合う」と口で言うのは簡単だが、実際に改革するためには、結局は組織文化にまでメスを入れる必要が出てくるから、たいへん。それでも改革を進めようと思ってら、決定権を持つトップが強いリーダーシップを発揮することが求められる。

日本のロケット事故が特に多いという見方は間違い。アメリカは千数百回、ロシアはソ連時代を含めその倍のロケットの打ち上げを過去に行っている。日本の場合、・・・わずか数十回程度で世界のトップレベルの技術に押し上げたことは、客観的に見れば十分評価に値すること

「三現」で行動しなければ真実は見えない。「三現」とは、「現地」「現物」「現人」。意欲を持って現場に足を運び、直接現物を見たり、現場にいる人の話に真摯に耳を傾けること。・・・「見ない」「考えない」「歩かない」で行動しても多くのことを吸収することはできる。時間も手間もかからず一見効率よさそうだが、大きな落とし穴がある。伝言ゲームと同じで誰かを通した情報というのは、・・過ちや抜けに気づくことができない。

事故を起こした企業は、犠牲者の死を「無駄死に」にするようなことをしてはならない。どんな状況でも批判は批判として甘んじて受けなければならない。そしてその一方で、事故という失敗から学んでそこからより安全な機械やシステム、さらにより安全な社会システムを作り出していくことが「遺族の思い」を昇華するための唯一の道であり、事故を起こした者の社会的な責任の果たし方ではないか。』

2011年7月 8日 (金)

新聞記事から (【石平のChina Watch】経済「硬着陸」の足音 23.7.7 産経新聞)

昨日の新聞記事からです。いつもこのブログに書き留めていますが、石平氏のコラムです。中国経済の失速はまもなくの様子です。しかし、世界経済へ与える影響も大きいことでしょうから、わが国への悪影響も免れないでしょう。また国外へ国民の目を向けさせようと、侵略に打って出ないか、注意しておかなければなりません。

さる6月24日、中国の温家宝首相は訪問先のイギリスで中国の経済問題に関する注目の発言を行った。今年の消費者物価指数を4%以内に抑える政府目標の達成が「困難である」と認めたのである。

 中国政府がこの数値目標を掲げたのは確か年初のことであったが、それ以来半年間、政府は「月1度」という前代未聞の高い頻度で預金準備率の引き上げを断行するなど、一連の金融引き締め策を実施してインフレの抑制に必死であった。しかしそれが「目標達成困難」となったなら、政府のインフレ抑制策は現時点では失敗に終わった、といえる。

 本欄がかねて指摘しているように、中国のインフレは過去数十年間にわたる貨幣の過剰供給の必然の結果であるから、短期間の金融引き締め策の一つや二つで収まるような性格の問題でもない。温首相は上述の談話で「今後のインフレ抑制は可能だ」とも語っているが、現実はそう甘くはない。6月の消費者物価指数は5月のそれよりも大幅に上昇していることが確実となった一方、「7月のインフレ率は6月よりもさらに高くなる」との予測が中国農業銀行からも出されている。中国人民銀行貨幣政策委員会の李稲葵委員に至っては最近、向こう10年間、慢性的なインフレが問題であり続けると暗澹(あんたん)たる見通しまで示している。

 その一方、今年から実施されている一連の金融引き締め策は深刻な副作用を引き起こしている。金融引き締めの中で各金融機関の融資枠が大幅に縮小された結果、多くの中小企業は銀行から融資をもらえず大変な経営難に陥っているのである。6月の中国経済関係各紙を開くと、「資金難、中小企業倒産ラッシュが始まる」「長江デルタ、中小企業生存の危機」「温州地域、中小が二割生産停止」などのタイトルが躍っているのが目につく。金融引き締め策実施の結果、国内総生産の6割を支える中小企業が苦境に立たされていることがよく分かる。

 中国経済の減速はもはや避けられないであろうが、実際、減速に対する懸念が中国国内でも広がっている。6月27日、前出の李稲葵氏も外国メディアからの取材の中で「減速の懸念」を表明しているし、経済学界の大御所で北京大教授の励以寧氏は同じ27日、金融引き締め策がそのまま継続していけば、中国経済は「インフレ率が上昇しながらの成長率の減速」に直面することになるだろうとの警告を発している。

 それらの懸念や警告はまったく正しい。このままいけば中国経済は確実に落ちていくのであろう。しかしだからといって、政府は現在の金融引き締め策を打ち切ることもできない。引き締めの手綱を緩めれば、インフレがよりいっそうの猛威を振るってくるに違いない。政府の抱えるジレンマは深まるばかりである。

 こうした中で、6月の北京市内の不動産物件の成約件数が29カ月ぶりの最低水準に落ちたなど、今年の春から始まった不動産市場の冷え込みが進んでいる。それもまた、政府による金融引き締めの結果の一つであるが、不動産市場の停滞がさらに続くと、大幅な価格の下落がいずれやってこよう。最近、社会科学院工業経済研究所の曹建海研究員という人物の口から、「2012年に北京の不動産価格が5割も暴落するだろう」との不気味な予言まで出されている。

 経済の減速と不動産バブルの崩壊が徐々に目の前の現実となりつつある中、国際社会でささやかれ始めている中国経済のハードランディング(中国語では「硬着陸」)は、いよいよその足音が聞こえてくる。』

2011年7月 3日 (日)

「うつ」は食べ物が原因だった! (溝口徹著 青春出版社)

今回も健康物です。うつ病は「心の風邪」ともいわれ、私の周りにも悩まされている人が多く、まさに社会的な問題となっています。食事に気をつけて、心身ともに風邪をひかぬよう気をつけたいと思います。

『オーソモレキュラー療法(栄養療法)という、日本ではなじみのない治療法。わかりやすく言うと、食事を見直し、サプリメントを用いて、うつ病や不安障害などを治療。・・基本になるのは「心(精神)のトラブルは、脳内に存在する物質のバランスが乱れたことによって生じる」という理論。

医学的に見ると、私たちの身体は常に”たったいまの状態”を維持しようとしている。・・私たちが生きるということは、今の状態を保つということ・・どうも心は、一定の状態を保つことが身体に比べて難しいように思える。

(現在のうつ病などの治療は)投薬を主体にした治療が圧倒的に主流・・理由はカウンセリングのトレーニングを積んだ医師やカウンセラーの不足にある。

たとえば「やる気がない」といううつ病症状を訴えているケース・・その原因のひとつとされるのは、脳のなかでセロトニンという神経伝達物質が不足していること・・セロトニンが不足していると、・やる気の起こらない状態が続く。そこで一般の治療ではSSRIという薬を使って・信号伝達をスムーズに行わせようとする・結果として「やる気がない」といううつ症状は改善されるのだが、セロトニンが再吸収されないからシナプス小胞のセロトニンの量はどんどん減っていくことになる。SSRIを使っているうちに、効きが悪くなり、量を増やしたり、種類を変えたりしなければならなくなるのはそのため。  栄養療法の考え方はまったく違う。セロトニンの材料となる栄養素、たとえばアミノ酸や鉄、亜鉛、ビタミンB6などを身体に取り入れることにって、セロトニンそのものを増やすのである。

心や感情が安定している状態では、興奮系の神経細胞と抑制系の神経細胞、調整系の神経細胞から分泌される神経伝達物質がそれぞれ適量でバランスが取れている。・・ところが脳の中で神経伝達物質のバランスが崩れると、心や感情に変化が起きる。

3つのうちもっとも種類が多いのは、興奮系の神経伝達物質。ノルアドレナリン、ドーパミン、アセチルコリン、グルタミン酸など。不足すると元気がなくなり、気分が落ち込む。 抑制系神経伝達物質の代表が、GABA(γ-アミノ酪酸)。脳が興奮した際のブレーキ役。不足すれば興奮が鎮まらず、時に痙攣を起こしたりすることもある。 調整系の神経伝達物質の代表的な物質はセロトニン。セロトニンは通常、興奮系の神経物質に分類されるのだが、行動に対しては、それを抑え鎮めるなど抑制的に働く。セロトニンの不足は、抑うつ感情をもたらす。

脳に送られたアミノ酸は、L-グルタミン、L-フェニルアラニン、L-トリプトファンの形で脳内に入り、その後、いくつかの反応を経て神経伝達物質に合成される。注目すべきは、興奮系のグルタミン酸から抑制系の神経伝達物質GABAが合成されること。つまり興奮系のグルタミンが増えれば、自動的に抑制系のGABAが増えるという仕組みがきちんと出来上がっている。

神経伝達物質の合成がうまくいかなくなるのは、ビタミンB6が十分にない場合。たんぱく質とビタミンB6は神経伝達物質の二大重要アイテムといってよい。

セロトニンの材料となるトリプトファンは、動物性たんぱく質に多く含まれているアミノ酸の代表格。大豆などの植物性たんぱく質に含まれているトリプトファンは動物性に比べて少ない。

脳の毛細血管にだけ、特殊なシステムが備わっている。「血液脳関門」がそれ。脳の毛細血管はその壁を作っている細胞の間が狭くなっていて、脳の中に入ってくる物質を制限している。・・それぞれの関門には選択性があり、ある関門からは入れる物質が別の関門からは入れないという風になっている。また関門を通過できる量も決まっている。ある物質をたくさん脳のなかに入れたい場合は、脳内に入れる他の物質の量を減らして、入れたい物質の比率を高めればよい。したがってたとえば、うつ病症状を改善するために、セロトニンの材料であるトリプトファンを増やしたい場合には、トリプトファンの比率をあげるような食べ方が必要になる。

「やる気がないときに甘いものを食べるとやる気が出る」のは、糖質をとることで血糖値があがり、インスリンがでて、インスリンがセロトニンを増やすことに一役買うため。インスリンには身体のたんぱく質を作る働きがあり、このためにアミノ酸が使用され、結果的にトリプトファンの比率が高まり、脳内のセロトニンが増える。これが甘いものでやる気がおきるメカニズムのひとつ。しかし、トリプトファンの量が増えているわけではないので、一時しのぎにはなっても継続性や、うつ症状の改善にはつながらない。

GABA入り食べ物をとっても、GABAは血液脳関門でストップをかけられてしまうので、脳には届かない。脳で作用する物質は脳内で作るというメカニズムがあるから。

たんぱく質をドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、GABAなどの神経伝達物質に作り変えるのになくてはならない働きをするのが、ビタミン。なかでも超一流の働き者がビタミンB6。・・ビタミンB6がなくては、酵素は何の働きもできない。・・興奮系の神経伝達物資であるドーパミン、ノルアドレナリンには、ビタミンCの存在が欠かせない。・・ビタミンCはストレスを跳ね返したり、ストレスに耐えたりする決め手といっていい。・・変化の上流ではナイシアンが活躍している。ナイシアンはかつてはビタミンB3と呼ばれたビタミンの仲間。もうひとつ、ビタミンBの仲間である葉酸も初期段階の反応で補酵素の役割を果たしている。・・実際、葉酸をたくさん飲むとうつ症状が改善するという報告もあり・・・。ミネラルも見てみよう。変化の初期段階で働いているのが鉄である。・・鉄が不足することによって減少するセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質が欠乏することにって、うつ症状が生じる。

ミネラルで忘れてはならないのが、カルシウムだ。・・神経伝達物質が神経細胞から放出されるためにはカルシウムが絶対に必要なのだ。・・カルシウムイオンの濃度差によるカルシウム・チャンネルという「扉」が必要に応じて開きいろいろな酵素が活性化される。カルシウムが不足するとこの濃度差を保てなくなる。・・カルシウムが存分にその機能を発揮するためにはマグネシウムがなくてはならない。

あらゆる栄養素について、「だけ摂取」は意味がない。栄養素は単独で働くのではなく、いろいろなパートナーシップの元で機能を発揮している。

食べた物がそのままの形で身体のなかに入るわけではない。大事なのは、食べた物がどう体内に吸収されるか、にある。吸収のされ方は食べ物によって違う。・・でんぷんなどがゆっくりと分解され、緩やかに吸収されるが、身体にとってはこの方がはるかに有益である。・・栄養は、その食べ物に含まれている量よりも、それを体内でどれだけ吸収できるかという点を意識しなければならない。

食べ物は「食べる」のが基本。つまり固形を口に入れてよく噛み、よく飲み込んで、消化させるというプロセスを経るのが、最良の食べ方。咀嚼は、次に行われる胃や小腸の働きを刺激し、消化酵素を分泌する準備をさせる。また、一度に大量の食材が胃に流れることを防いでいる。

すばやく吸収されたほうが身体にいいようなイメージがある。しかし、吸収が早いということは本来、私たちが持っている機能を正しく使わずにバイパスしているということ。血糖値がどのくらいのスピードで上がるかが分かる指標に「GI」がある。ブドウ糖を100として場合のそのぞれの数値を示したもの。精製の度合いが進んだ食品ほど数値が高い。・・血糖値が速いスピードで上がると、それを下げるためにインスリンがどんどん分泌され、たんぱく質を作るためにアミノ酸を使うとともに、ほかにも脂肪酸をつくって肥満を促し、交感神経を刺激してイライラ感や緊張感をもたらすことにもなる。うつ症状をじょちょうするといってもいい。 主な食品のGI値。餅85、精白米84、胚芽米70、玄米(5分)58、食パン91、ライ麦パン58、全粒粉パン50、うどん80、そうめん68、スパゲティ65、そば59、肉類45~49、魚介類40前後、豆腐42、納豆33、チーズ35、卵30、牛乳24、プレーンヨーグルト25、ジャガイモ90、サツマイモ55、とうもろこし70、バナナ55、トマト30、きゅうり23、キャンディ108、チョコレート91、アーモンド30、ピーナッツ28、コーヒー16、緑茶10、紅茶10、白砂糖110、黒砂糖99、蜂蜜88、みりん15

食生活を見直すというと、肉類を控える方向に行きやすいが、これはまったく誤った方向。心身ともに健康に保つにはたんぱく質が欠かせない。

カロリー=栄養ではない。低カロリーでも脂肪は作られる。その一番の原因は糖質の種類ととり方。高GI値の糖質をたくさん取ればカロリーは低くてもインスリンが過剰に分泌されて脂肪が合成される。・・カロリーを考えるときのポイントは、摂取したカロリーをエネルギーとして消費できるか、燃やして使えるかという点。燃やすにはどうしたらよいか。鍵を握っているのは筋肉の量。最大のエネルギー燃焼工場である筋肉の量が多ければカロリーはどんどん燃える。筋肉が増えるということは、そのまま基礎代謝(寝ていても消費されるカロリー)が上がるということ、つまり、太りにくくやせやすいということ。その筋肉はたんぱく質で作られる。

うつにならない、心も脳も健康でいるために必要な栄養素の量は、一概に言えない。年齢、性別、体格、栄養状態、食事傾向、ライフスタイルで違ってくるから。

栄養療法の基本は、食事を変えること。現代人の食生活はあきらかに危険ゾーン。ある中学校では給食の白米を玄米に変えただけで暴れる生徒の数が減り平穏な空気に変わっていった。栄養療法の二本柱は、食事とサプリメント。サプリメントも患者一人ひとりの状況によって変えている。

低血糖症:チェックリスト ①甘いもの、スナック菓子、清涼飲料水をほぼ毎日取る。②空腹感を感じおやつを食べることが多い。③夜中に眼が覚めて何かを食べることがある。④夕方につよい眠気を感じたり集中力が落ちる。⑤体重の増減が激しい。⑥体重が増えてきた、またはやせにくくなった。⑦イライラや不安感が甘いものを摂ることでよくなったことがある。⑧頭痛、動悸、しびれなどが甘いものを摂ることでよくなったことがある。⑨安定剤や抗うつ剤を服用してもあきらかな症状の改善がない。⑩血縁者に糖尿病の人がいる。 3つ以上にチェックがついた人は低血糖症の危険性が高い。じつはこの低血糖症こそ、一番うつに間違えられやすい栄養のトラブル。

血糖値が安定して脳に十分なブドウ糖が供給されていると、精神状態はとても安定したものとなる。この状態を維持するには、食事をした後、血糖値が緩やかに上がって、空腹のレベルから下がりすぎないことが前提となる。血糖値が緩やかなカーブを描くようにするにはインスリンの分泌が少なくてすむような食生活を考えればよい。GI値の低い食品をとることが血糖値をコントロールする最適な手段。

コレステロールは神経伝達をすばやく行うのにも使われている。コレステロールが脳内に少なくなると、セロトニンの機能が異常になる。・・低コレステロールとうつの関係を示したデータは数多い。

低血糖症になりやすい人:栄養摂取が乱れていることが多い。ダイエットをしてたんぱく質をシャットアウトしていたり、インスタント食品やスナック菓子を多く食べる人。また、腸の粘膜が弱い人。副腎が疲労していることも低血糖症を引き起こす要因のひとつ。

鉄欠乏チェックリスト:①立ちくらみ、めまい、耳鳴りがする。②肩こり、背部通、関節痛、筋肉痛がある。③頭痛、頭重になりやすい。④力が弱くなった。⑤よくあざができる。⑥のどに不快感(つかえ感)がある。⑦階段を登ると疲れる。⑧夕方に疲れて横になることがある。⑨生理前に不調になる。⑩生理の出血量が多い。 

レバーなどの動物性のたんぱく質に含まれているヘム鉄は吸収率が高い。供給源にするならヘム鉄がお勧め。

亜鉛欠乏チェックリスト:①風邪をひきやすい。②洗髪時、毛が抜けやすい。③食欲不振になりやすい。④肌が乾燥しやすい。⑤傷の直りが悪い、傷が残りやすい。⑥爪に白い斑点がある。⑦味覚や嗅覚が鈍い。⑧性欲が落ちた。⑨ネックレスなどで皮膚炎が起こる。⑩傷や虫刺されが膿みやすい。

ビタミンB群欠乏チェックリスト:①アルコールをよく飲む。②音に敏感だ。③イライラしやすい。④集中力が続かない。⑤記憶力が衰えている。⑥よく悪夢を見る。⑦テレビがわずらわしい。⑧本を読んでも頭に入らない、興味がなくなった。⑨寝ても疲れがとれない。とにかく疲れる。⑩口内炎がよくできる。

たんぱく質欠乏チェックリスト:①肉や卵などはあまり食べない。②野菜中心、あるいは和食中心である。③豆腐、納豆などの大豆食品をよく食べる。④ご飯やパン、麺などで食事をすましてしまう。⑤成長期である。⑥妊娠、授乳中である。⑦ステロイド剤を使用している。⑧スポーツをする、あるいは肉体労働である。⑨胃薬をよく使う。⑩腕や太ももが細くなった。

健康に気をつけた食事をしている人ほどたんぱく質が不足してしまう。・・チェックリストの「腕や太ももが細くなった」というのは、自分の筋肉をたん白源として利用してしまった結果を示す。

加工食品やスナック菓子の問題点は、非常に糖質の割合が多いこと。糖質の摂取が多くなると人間の身体はインスリンというホルモンをせっせと出して血糖値を安定させようとする。このときに使われてしまう栄養素が亜鉛。同様にビタミンB群も必要以上に消費されてしまう。食品添加物のリン酸もミネラル類の吸収を阻害する働きをもつ。

ストレスに対抗するべく朝一番に活発に働き出す臓器が副腎。副腎からは盛んにホルモンが分泌される。それがコルチゾール。このホルモンの原材料がコレステロール。また、コルチゾールが働く際にはビタミンB6が欠かせない。したがってストレスが増えると、ビタミンB6の消費量が増える。副腎の髄質ではアドレナリン、ノルアドレナリンも作られるが、この産生にもっとも重要なのがビタミンC。ビタミンCを与えられなかった動物の副腎はどんどん萎縮することが実験で確かめられている。・・ビタミンCは水溶性のために多くとっても排出されると考えている人は多いが、ビタミンCは体内の臓器によっては高濃度に含まれており、必要量が増えたときのために貯蔵されている。その機能を担っている臓器のひとつが副腎。

筋肉を落とすダイエットではやせ方はスピーディになる。しかし、基礎代謝が落ちた身体になり、こうしておこるのがリバウンド現象。

脳にいい食事のあり方のキーワードは「スロー」。GI値は野菜も含めて70以下のものがベター。

脳を正常に働かせているのは、安定した血糖値。食材の中に含まれている糖質をゆっくりと消化・吸収することによってのみ、その安定は得られる。

カレーライスとキャベツを、先にどちらを食べたかで血糖値の上がり方を比べた実験がある。キャベツ4分の1個を先に食べてからカレーライスを食べたときと、カレーライスを先に食べてキャベツをその後に食べたときとでは、圧倒的に先にキャベツを食べたほうが血糖値の上がり方が緩やかだった。この結果は、血糖値を緩やかにあげていくには野菜を先にとるのがいいということを示している。

もうひとつ大切なのは早食いはしないこと。よくかんで、ゆっくり食べること。

必要なたんぱく質の量は、体重1KGあたり、1~1.5グラム。

うつを遠ざける3つの生活習慣(食事以外にうつを遠ざける生活習慣として著者が指導しているもの):①運動、とくにお勧めは食後の散歩。②季節や天候に注意すること。自分で傾向をつかみ、食事内容、取り方、睡眠のとり方、生活リズム等に工夫して予防策を講じる。③とにかく外に出ること 』

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