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2011年5月 1日 (日)

飛行機の操縦  機長はコックピットで何を考えているのか (坂井優基著 PHP新書)

すこし、マニアックかもしれませんが、航空機の操縦に関連し、興味深かったところを書き記します。

『高い高度を高速で飛ぶために最適な翼は、離陸や着陸のときに十分な揚力を作り出すことができない。・・一方、離着陸のときに十分な揚力を作り出せるような翼は高速の飛行に耐えられない。この2つの矛盾を埋めるために生み出されたのが「フラップ」という装置

ジェットエンジンが、普通の自動車のエンジンと一番大きく違うところは、往復運動部分をもたないこと。エンジンが回るのは全て回転運動だけ。このため無理なく回転数を上げられ、故障もずっと少なくなる。
ところが、吹き出す空気と飛行機の速度の差が大きいほど燃費が悪くなります。ターボジェットエンジンの燃費の悪さを解消するために作られたのがターボファンエンジン。ボーイング747では1対5以上。

現在のパイロットに一番求められているのは、判断力。今のオートパイロットはまだまだ不完全。
なぜ飛行機の操縦は難しいのか。…空気は前後、左右、上下に動く。パイロットはその動く空気の中を飛びながら、動かない滑走路に着陸しなければならない。そのためには、風の変化に合わせて機首を上げたり、下げたり、またエンジンのスラストを変え、飛行機が飛んでいる方向と、傾きを調整しなければならない。

管制に使っていよい言語は、英語、フランス語、スペイン語、ロシア語、中国語の5つ。…外国の飛行機がいくと英語で対応してくれるが、パイロットにとっては他の飛行機の指示がフランス語や中国語で行われるために周りの状況の把握がとても難しくなる。

飛ぶ場所のQNH(高度計規制値)を補正しながら飛ぶと、障害物との高さの差や飛行場からの高さは良くわかるが、違う空港の違ったQNH補正をした高度計で飛行機が飛んでいるとお互いの垂直間隔が少なくなってしまうことがある。そこである程度の以上の高さになると全ての飛行機が高度計補正値を29.92インチ又は1,013ヘクトパスカルにセットし、同じ値で飛ぶ。しかし、国によってどの高さで切り替えるかが異なる。

パイロットの仕事の中でも一番重要なのが、ディスパッチ段階。天候や航空情報などその日のフライトの要点をえ、飛行経路、高度、燃料の搭載量を決定。・・雲の一番上と一番下は、雲の中よりも揺れる。トロポポーズという対流圏と成層圏の境目もよく揺れる。・・気温が上がると空気の密度が低くなるために、機体に働く空気力が小さくなり、同じ大気速度を得るためには物理的に加速しないといけなくなる。また、ジェットエンジンも温度が上がると性能が低下する。
ヨーロッパでは同じ空気の塊が国から国へ異動。いろいろな微粒子をたくさん含んでいるので、それを核として霧も発生しやすく、高気圧に覆われた晴れた日ほど霧が出る可能性が高くなる。

(離陸準備で)特に重要なのがFMSと呼ばれるフライト用コンピューターへの入力。現代の旅客機はフライト用コンピューターに従ってフライトする。入力の大原則は、必ず一人が入力し、別の人間がそれをチェックすること。

プッシュバックで注意すべきことは、ブレーキペダルを絶対に踏まないことと、エンジンがかかった状態のままトーイングガーで前に引っ張らないこと。

ヨーロッパにおける青は静脈の色であり、本来危険を意味する。

誘導路の走行速度は、通常時速約50km。雨、雪など滑走路の条件が悪くなるほど遅い速度で走る。

空港周辺の管制圏の中では、200ノット(時速約370km)以下のスピードで飛ぶことが決められている。通常管制圏は、半径5マイル(約8km)、高度3000フィートまでだが、実際は空港ごとに異なる。

富士山のような形の単独峰に強い風が吹くと、非常に強い空気の渦ができる。富士山山頂の風速が50ノット(時速約90km)を超えると非常に危険。
パイロットにとって何よりも怖いのが、翼の上に積もった雪や翼に薄く張り付いた氷。翼の上に雪が積もると翼の断面の形が変わってしまい、…空気がスムーズに流れなくなってしまい、飛行機の浮く力がなくなってしまう。
防氷液は雪が降る強度によって有効時間がある。…ほとんどの旅客機は翼の上に黒く塗った部分がある…この黒く塗った部分の色の変化を機内から見て雪の積もり具合を確認する。

着陸する飛行機がILS(Instrument Landing System 計器着陸装置)アプローチを行っているときは、地上にいる航空機が滑走路に近づきすぎると、その航空機の機体にILSの電波が当たって電波をさえぎり、降下してくる飛行機が正しい降下経路を選べなくなる。これを防ぐため、離陸を待つ航空機は晴れた日よりも滑走路から遠いところで停止しなければならない。

逆転層:高度が上がるにつれ気温が急激に増加する層。地上付近の温度が低いときは、離陸直後に逆転層があることあり。このときはエンジン出力が急激に減少するので要注意

パイロットが嫌いなものは、積乱雲。…一般的には日中に発達するが、東南アジアでは昼間温められた海水の上の空気が夜間冷えることによってかえって夜間に発達する場合あり。また、海上では島の上に積乱雲がよくでき、レーダーで島と間違えて見落とすことあり。
アメリカ大陸にできる積乱雲は、中部の乾いた空気の塊にメキシコ湾からの大量に水蒸気を含んだ空気の塊が入ってくることでできるため、ものすごく巨大(直径200km近くある) 冬場の日本海にできる積乱雲の背はあまり高くないため、遠くから形を見分けにくい。

バードストライク(航空機が滑走路上で鳥に衝突した)の報告があった場合、ぶつかった後の鳥が滑走路上に残ってジェットエンジンに吸い込まれエンジンをこわさないよう、点検を行うが、所要時間は約15分

フレアー:着陸直前に段階的に降下率を小さくする操作。開始する高度は機種により異なる。

リバース:エンジンから吸い込んだ空気を前に送ってブレーキの補助とするもの。晴れて乾いた滑走路ではリバースの効果はそれほど大きくない。雪や氷などで覆われていることは効果あり。また、飛行機の速度が大きいほどよく効く。速度が著しく低下したところでこれをすると、エンジンの作動がおかしくなる。

滑走路の手前と置くには着陸の際にタイヤのゴムがこすりつけられている。定期的に機械で削り取るが全部とりきれない。このゴムがぬれるとかなり滑りやすく、着陸時にとまりにくい。

風の息:普通に定常的に吹いている風から急激に強くなる風のこと。

気象条件が悪いときにスムーズな着陸を狙うのは、上手なパイロットではない。…滑走路が雪や雨などで滑りやすい場合には、なるべく早くタイヤに大きな荷重をかけ、ブレーキが利きやすくなる(グランドモードにする)ようにする必要あり。マニュアルにも滑走路が滑りやすい状態のときは、意図的に「ドシンとつけろ」と書いてある。

ボーイング747のタイヤは一本300万円といわれている。』

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