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2011年4月

2011年4月30日 (土)

甲陽軍鑑 (佐藤正英 校訂/訳  ちくま学芸文庫) (その1)

甲陽軍鑑は、兵法の書として有名ですが、歴史書、処世に関する教えについても書かれていました。まず、品第二にある、武田信繁が嫡子に残した教え九十九箇条を書き記して起きます。この書の他の特記事項については、別途書き記します。

『主君に対し、未来永劫にわたって、謀反を起こそうとする心を抱いてはならない。

合戦場において少しでも卑怯未練なふるまいをしてはならない。 「呉氏」に「生きようとあがけば死し、死を不可避であると受け止めれば生を得る」とある。

油断することなく、つねに行儀を慎め。

武勇に心がけよ。

どんなときも嘘をついてはならない。  ...ただし、武略のときは状況に従うべきである。

父母に対し少しでも不幸な行いがあってはならない。

兄弟に対し少しでも疎略があってはならない。

自己の力量を超えていることは、一言も口にしてはならない。

諸人に対して少しでも無作法をしてはならない。

弓術、馬術に励め。

学問を怠けるな。

歌道を嗜め。

もろもろの儀礼を怠りなく実修せよ。

風雅、芸能に深入りしてはならない。

ものを尋ねた対手に疎略に応対してはならない。

何事にも堪忍の二字を心に留めておけ。

大事、小事を問わず、主君の命令に背いてはならない。

主君に向かって知行地や米銭を望んではならない。  「春秋左氏伝」に「武功なくして賞を受けるのは不義の富であり、禍の基となる」とある。

愚痴をこぼしたり、とりとめのないおしゃべりはやめよ。

家中の郎従に対し、慈悲をもって対せ。

家来が病気になったとき、たとえ手間隙がかかろうともよくよく指図を与えよ。

忠節な家来を忘れてはならない。  「三略」に「善悪の働きを同じに扱えば、功ある臣はやる気をなくす」とある。

他者を中傷する者を許容してはならない。ただし、内密に事情を聞き届け、事実を確かめることは道理に叶っている。

諫言に逆らってはならない。

家来の者が、心構えはあるものの思うようにならず困窮しているならば、とりあえず米銭を与えよ。

私の用事で主君の屋敷の裏御門に出入りするな。

友人にうちとけられなくても仁を心がけよ。

毎日の伺候を怠るな。

深く知り合った親密な仲であっても、人前でみだりに取り留めのない雑談をしてはならない。

座禅に心がけよ。  古言に「座禅に秘訣はない。死が身近に迫っていることを思え」とある。

なんどきでも帰宅の際は前もって使者を遣わせ。万一留守の者の行儀に油断があるならば叱責せざるを得ないであろう。些細なことを問い糺していては際限がない。

主君がどのように理不尽な扱いをしようとも不服不満を口にしてはならない。

召し使う者の処罰について、小さな悪事のうちに叱責せよ。大きな悪事を犯すようになれば主人の身の破滅をもたらすことになる。

褒美について。大事・小事を問わず直ちに褒めそやし、物品を与えよ。

自国・他国の情勢や動向をめぐっては、ことの善悪にかかわらず、力を尽くして、こと細やかに情報を入手せよ。

農民に対し、定められた夫役以外の、道理に反する役務を課してはならない。

他の家中の者に対し、自らの家中の悪事を決して語ってはならない。

人を召し使うに当たっては、当人の才能・能力に応じて用事をいいつけよ。  「帝範」に「すぐれた大工は材木を捨てず、すぐれた大将は過信を捨てない」とある。

武具を怠りなく準備し、整えておけ。

出陣にあたっては、一日たりとも大将に遅れないこと。

馬は心して手入れしておけ。

敵勢に相対したとき、備えが固まっていないところを攻めよ。

合戦のとき、敵勢を深追いしてはならない。

勝ち戦になったときは、手綱を引かず、そのまま一気に馬を駆けさせよ。ただし、敵方の同勢が崩れていない時は、備えを立て直せ。

戦いが近づいたときは、士卒を手荒く扱え。士卒は憤りを敵にぶつけて奮戦するからである。

敵方が多勢であるとか、備えなどがよろしいようであるなどと、人前で語ってはならない。

諸卒は敵方に対し、悪口をいってはならない。   「三略」に「蜂をつついて怒らせれば、竜のように激しく突き進んでくる」とある。

たとえ懇意な親類や家来であっても、柔弱な様子を見せてはならない。

好むところをあまりに心のままになしてはならない。

敵陣に対して不意打ちをかけるときは本道を避け、脇道を選んで仕掛けよ。

たいていのことは、ひとからたずねられたとき、知らないと応答するのが無難であろう。

家来の者が一度誤りを犯しても、事情を問い糺し、その後心を改めるならば、それに従って宥恕せよ。

父は心がけが悪く成敗したとしても、その子がとりわけ忠節に励み秀でているならば、怒りを忘れよ。

軍勢の数を整えるときは、和議すべき敵か、撃破すべき敵か、征服すべき敵かの別を考慮することが肝要である。

なにごとについても争ってはならない。  

食べ物がよそから贈られたときは、眼前に伺候している人々に少しずつ分けよ。

すべてのことに功績がなければ、立身は難しい。

たとえ自分にどれほど道理があっても貴人に対して理屈をたてにとっていいはってはならない。

自分の過ちについてさからってはならない。今後過ちを犯さないようにつとめることが肝要である。

心中深く思い定めていたことであっても、どうしようもない意見にぶつかったならば、その意見に従え。

貴賎を問わず、年老いたものを侮ってはならない。

合戦場にでるときは夜中に食事をし、陣屋を発つときから直ちに敵と遭遇する態勢で出立し、帰陣するまで少しも油断してはならない。

行儀の悪いひとと近づきになってはならない。

他人に対してあまりに疑心を抱いてはならない。

他人の過ちをあれこれとあげつらってはならない。

嫉妬は非難されるべきことであり、堅く禁ずる。

口先がうまく、ねじけた心根をもつな。

主君に召しだされたとき、少しも遅参してはならない。

武略をはじめ内密にされていることをむやみに口外してはならない。

夫役に従うものに情けの言葉をかけよ。

神や仏を信じよ。

味方が負け戦になったときは、いっそう奮戦せよ。

酒乱の者に取り合ってはならない。

ひとをえこひいきしたり、不公平に扱ってはならない。

よく斬れる刀を用いて、決して鈍刀を帯びてはならない。

宿泊するときや宿の外を歩くときは、前後左右に気を配り、油断してはならない。

ひとの命を奪うことは決してあってはならない。

隠遁したならば子の力をかりてはならない。

鷹狩にあまり熱中してはならない。時間を費やし、奉公を怠る因となるからである。

見物のとき、夢中になって自他の別を失い、油断してはならない。

下人に対し、寒暑風雨の際に、憐れみをかけよ。

千人で敵の正面に向かうより、百人で側面から攻めるがよい。

自分が戦場で戦ったさまを世間話として語ってはならない。

剣法の極意や秘伝については、あまり知らなくても知っているかのように振舞ってもよい場合が多い。

下々の者の批判にはよく耳を傾け、たとえどれほど腹が立っても怒りをおさえて、内密に修養を重ねよ。

主君が帰陣するとき、少しも先に帰ってはならない。

総じてどれほどねんごろにしていただいても、奥方のところへたびたび出入りしてはならない。

多くの人のいる前で、食べ物や売り買いの世間話をするな。

たとえ親しい友人であっても用事を頼むことはよく考えてせよ。

ことをもくろみ、仲間をつくってはならない。

たとえ心を許した交わりであっても、みだらな色欲に関わる世間話をするな。もし話しかけられたならば、目立たないようにその座を離れよ。

多くのひとびとのいる前でむやみに他人の悪口をいうな。

書を心がけよ。

内外の費用は、一部は自分の所有地から、また一部は知行地から支出せよ。すべてを知行地に依存するならば必ず足らなくなる事態に陥るであろう。

たとえ敵方が多勢であっても備えが薄かったならば攻めよ。少勢であっても備えが厚いならばよく考えよ。

敵方を欺く合戦でないならば、異様な姿かたちでふるまい、行動すべきでない。

何事にも油断してはならない。

何事にも気力をなくし怠ってはならない。』

2011年4月29日 (金)

できる人の超速勉強法 (安河内哲也著 中経の文庫)

本日も自己研鑽のための方法論の本です。これまでに掲載した本の内容と重なっている部分も結構あると思います。

『「時間帯効果」を常に意識して勉強する。そのためには、常に「速くやる」を意識する。

短時間で勉強の結果を出していくには、とにかく脳を休ませないこと→20~30分 1クールでメニューを変えていく 1クール終わったらちょこっと休む。

1日5分でも続ければ、5年後、10年後にはエキスパート  いきなり100を目指さず、一歩一歩着実に進む。

本で興味のないところは飛ばし読みでOK

ネットは目的を明確にした上で使う。 テレビのダラ見もしない。

暗記=時間を節約できる。暗記と思考は車の両輪。しつこく繰り返す。少なくとも30回、理想は50回 ものによっては100回 やり方を変えて反復すると効果アップ

なぜなら→なぜなら→なぜなら・・・とネットワーク化すると暗記力を高め、思考力も鍛えられる。

「忘れかけたところで反復」(=メンテナンス)の繰り返しが必要 30回は繰り返すこと

ノートに書いたらしっかり覚えること  』

2011年4月26日 (火)

たった3ヶ月で英語の達人 (志緒野マリ著 祥伝社 黄金文庫)

今日は自己研鑽関連の著作です。

『児童英会話講師 英検2級又はTOEIC650~730、成人英会話講師 英検準1級又はTOEIC830~850 あたりを応募条件にしていることが多い。

検定試験合格の極意  ①過去問の洗い出し、②過去問取り組みの手順 ・制限時間内に解く、・採点、解説読み、未知の単語やフレーズを単語帳に、・試験直前にはその単語を頭に叩き込む、③自分の実力をただしく認識し、教材選び計画立てる、④短期集中と強い動機が合格への近道 特に直前1~2ヶ月は全て準備にささげるつもりで

不合格はやる気の基

よい学校とは、先生と生徒の両方がよい

駐在員のスピーキングが伸びない理由は、インプットを怠っているから。浴びたシャワーを自分のものにしなければ進歩しない。

どんどん新しい表現に挑戦してそれらを頭に叩き込んで使いこなせる単語や表現の量を増やすしか伸びる方策はない

スピーキング力獲得の極意 ①自らが積極的に話そうとする、②言いたい事の2割をあきらめる、③インプット作業を並行して進める。

ぺらぺら話すコツの一つは、言いたい事の細部に固執しない。

成功する留学の法則 ①スタート時には最低英検2級、願わくば準1級の力が必要、②伸びるのはリスニングだけと認識しておく、③留学のもたらす効果は予想外に小さいことを認識しておく、④家にいるときにはテレビを見、新聞・雑誌を読みこなし、日記をつける。また、いい話し相手をみつけて積極的に話していく、⑤帰国後に資格取得を狙っているならば、対象の問題集を持参し意識して勉強する、⑥新しい語や表現をきちんと記憶していく

英語上達に沈黙は悪 』

2011年4月24日 (日)

日本海軍の戦略発想 (千早正隆著 プレジデント社)

今回も旧軍関連の本についてです。以前にも述べましたが、旧軍は日本の最先端組織でした。そこに存在した欠点は今日の日本の組織にも存在していることは間違いないでしょうし、それを克服することは現在においてもかなり難しいであろうことは想像に難くありません。しかし、・・・ということで、今後も旧軍関連の本についても読み続けます。

『この時点で日本海軍の当局者は、二つの極めて重大な誤りを犯した。・・・その第一はそのような輝かしい戦勝は、敵側が不意をつかれその備えが十分にできていなかったことに主として因るものであったことにあまり思いをいたさなかったこと。・・・さらに自己を過信、・・・敵を過小評価し、ひいては軽侮するようになった。その第二は、彼らが戦前から長く研究し、踏襲してきた海軍作戦のシナリオの基盤がそれまでの戦争の経過から見て完全に覆っていることに少しも思いをいたさなかったこと

四隻の空母全部を失って初めて空母兵力こそが海上作戦の主兵であり、海上兵力はいかに圧倒で優勢であっても扇の要のなくなったも同然であることを痛烈に思い知らされた。・・そこで初めて日本海軍は空母の急速建造及び航空兵力の増強策に乗り出した。・・・が、航空第一主義に全面的に転換するにはまだ到らなかった。

日本海軍の戦略、戦術は日本古来の兵学を踏襲し、・・秋山真之中将及び佐藤鉄太郎中将によって体系付けられたといえる。が、その戦略の概念は極めて狭義であった。それに反して戦術の面では、徹底的に先制と集中攻撃を尊び・・・。戦争がどんな様相で戦われるであろうかということに関する徹底的な研究とこれに対する対策を怠った・・・

今にして思えば責められるべき幾多の要素  徹底的な検討を欠いた研究に基づいた、術力過大視の弊風もその一つ

開戦時に日本海軍が所持していた液体燃料は558万リットル(日本全体の80%)  必要とする石油量の見込み 1年目280万リットル、2年目270万リットル、3年目250万リットル 実際 1年目485万リットル、2年目428万リットル (戦時の所要量=平時の所要量×2.5の仮定であったが、実際は大きくこれを上回った)

時の米海軍長官ノックスがいった。「日本は近代戦を理解しないか、あるいはまた近代戦に参加する資格がないかいずれかである。」

日本海軍は戦争の一場面に過ぎない戦闘を、戦争全般と混同し判断したものといわざるをえない

・・・徹底的に日本海軍の実力を低下せしめるによって力あったのは、実に米軍の作戦速度の速さであった。・・・敵連合軍が日本の戦力の低下を見透かして、その対日侵攻作戦を当初の計画よりも早めたため

日本海軍の伝統的ともいうべき悪癖に基づいて、一つの形式以上にでることができなかった。そして、そのいずれの場合においても結局は敵側に対抗策を講ぜられて、その効果を失うようになった。

戦場心理を考慮することなく、巧妙なアウトレンジ戦法のあまりに重点を置いた日本海軍の砲術戦は、実践においてはその効果を発揮しなかったばかりでなく、かえって害毒を流したといわざるを得ない。

・・・日本海軍の戦史で、追撃戦を最後まで徹底的にやった先例に乏しい・・・その原因は徹底性を欠く、日本の国民性にあると考えざるを得ない 』

2011年4月22日 (金)

明治天皇御製

御製をこのブログに書き記すのは恐れ多く、また横書きにすることは大変心苦しいのですが、生きる勇気と戒めをいただけるすばらしいお歌ですので、記させていただきたいと思います。(明治神宮 「大御心」より)

目に見えぬ神にむかひてはぢざるは 人の心のまことなりけり

かたしとて思ひたゆまばなにごとも なることあらじ人の世の中   (むずかしいからといって、なすべき事を怠るようでは、人の世の中のことは、決して成功するものではありません〉

萬世(よろずよ)の国のしずめと大空に あふぐは富士のたかねなりけり

さまざまのうきふしをへて呉竹の よにすぐれたる人とこそなれ

世の中の人におくれをとりぬべし すすまむときに進まざりせば   (世の中は日進月歩で絶えず進歩しています。もしも日ごろの努力を怠ると、進むべきときに進まれず、世間から取り残されてしまいましょう)

たらちねの親につかへてまめなるが 人のまことの始めなりけり

しのびてもあるべき時にともすれば あやまつものは心なりけり

いかならむことある時もうつせみの 人の心よゆたかならなむ

さしのぼる朝日のごとくさわやかに もたまほしきは心なりけり   (空高く昇っていく朝日のように、いつもすがすがしく、明るくさわやかな心を持ちたいものです)

あらし吹く世にも動くな人ごころ いはほに根ざす松のごとくに

ならび行く人にはよしやおくるとも ただしき道をふみなたがへそ  (多くの人々と並んでいく世の中で、たとえ、他の人々には遅れることがあっても、あまり急いで、ただしい道を踏み誤らないで欲しいものです)

とき遅きたがひはあれどつらぬかぬ ことなきものは誠なりけり

あさみどり澄みわたりたる大空の 広きをおのが心ともがな

大空にそびえて見ゆるたかねにも 登ればのぼる道はありけり

器にはしたがひながらいわがねも とほすは水のちからなりけり   (水は円に四角に、さまざまな容器にしたがって逆らわないけれども、時と場合によっては、堅い岩石をも貫き通す、実に驚くべき力があります)

2011年4月21日 (木)

新聞記事から (畑村洋太郎氏 失敗学提唱者)

昨日、本日の産経新聞で失敗学会理事長 畑村洋太郎氏のインタビューが載っていました。参考にしたいと思います。プロフェッショナルであるならば、「想定外」を言い訳にしてはならない、という当たり前のことを再認識しました。

『--どうすれば教訓は生かされるのですか

 畑村 大事なのは起こってから考えるのではなく、起こる前に考えることだ。想像力を働かせることが重要だ。失敗学では起こらないと証明できるならば起きないだろうが、証明できないならばそれは起こる。

 --失敗学で東日本大震災を考えると

 畑村 海岸沿いにある福島第1原子力発電所は、津波で損傷すると考えない方がおかしいことになる。次にどのへんまで考えるかだが、ここで大事なことがある。見たくないものは見えない。聞きたくないことは聞こえない。自分たちが困ることは考えないための理由をたくさん並べて結局、考えない。「原発の津波被害を考えるべきだ」とだれかが言ってもだれも注目しない。東京電力は起こりもしないことを取り上げるのはおかしいと考えたのだろう。

  《1号機から6号機まである福島第1原発は昭和46年から順次運転を開始した。建設当時、35年のチリ地震の津波を考慮して3・1メートルの津波を想定、国から設置許可を得た。その後、平成14年の土木学会の指針に基づき、想定する津波を最大5・7メートルに切り替えた》

 --3・1メートルの津波の想定で国が許可したにもかかわらず、東電は3倍以上の標高10メートルに原発を建設した。東電に問題はないと思いますが

 畑村 国が許可した以上のことをやったのだから俺たちは悪くないという考え方で、それはおかしい。だって事業主体は東電でしょう。

  《福島第1原発を襲った津波の高さは14~15メートル。標高約10メートルの原発の敷地から考えて4~5メートルの波が押し寄せたことになる。この津波で非常用発電機も故障し、冷却装置の電源がすべて失われた。その結果、炉心溶融や水素爆発が起き、放射能漏れにつながった。原子炉を停止してもウラン燃料は崩壊熱を出し続けるため、冷却装置は原発の生命線といわれる》

 --仮に原発を標高15メートルの敷地に建てて20メートルの津波が来たとしたらやはりアウトになる。そうなると想定とは一体何だろうと考えてしまいます

 畑村 東電が言う「想定外」は、自分たちには落ち度がないという言い訳でしかない。最低基準を満たしているからいいんだというのは言い訳だ。だから納得し難い。自分自身でこういうことが起こり得ると想定したらもっと違うことを考えたはずだ。原発を6基も同じ場所に並べなかったと思う。

 --しかし、人間は考えたくないことは考えようとしないのですね

 畑村 だから災害の対策を立てるときは守る側で考えるのではなく、攻める側に立って考えなくてはならない。どこをどう攻撃したら福島第1原発の機能を奪えるのか。自分が地震や津波、山火事になって考えなくてはならない。そうするとすきだらけなのがよく分かってくる。

 --福島第1原発の1号機運転開始から40年。その間、よく災害に遭わなかったと思います

 畑村 40年間は執行猶予の時間だった。その間、東電内に「危ないから造り直すべきだ」という意見もあったと思うが、起こって困ることは考えないということが結論となってそのまま来てしまったのだろう。しかし、千年以上たっても貞観地震のような大津波は起きる。分からないことは分からないということを前提にした設計思想が必要なのだが、いまの日本にはそれがない。

  《869(貞観11)年、三陸沖の巨大地震によって発生した大津波が陸奥国(東北地方)の多賀城まで押し寄せ、千人が亡くなった。これが貞観地震で東日本大震災との類似が指摘されている》

--想定外を失敗学の視点から捉えるとどうなりますか
 畑村 (繰り返すけど)起こると困ることは考えようとしない。(考えないから)それが想定外になる。

--そうすると、災害対策における重要なことは

 畑村 (1)自分の目で見る(2)自分で考える(3)自分で決める(4)自分で行動する。この4つが重要で、第三者が決めたことに従って失敗すると、「自分は悪くない」と言い訳をする。

 --それを東日本大震災の大津波のケースに当てはめると

 畑村 三陸海岸では小学校で津波に対する教育や訓練を日ごろから実施していた。しかし、あらかじめ町や村が決めた避難所に逃げたのに津波にのみ込まれてしまった惨事がある一方で、決められた避難所よりもっと高い場所に逃げないと危険だと自分たちで早く判断して逃げて助かった小学校もあった。

 --自分たちで判断するか、判断しないかが明暗を分けたわけですね

 畑村 はい。人間は想定だけでは生きられない。現実を見て判断することが大切だ。

  《ウラン燃料が発する崩壊熱を下げるため、原子炉圧力容器や燃料貯蔵プールへの注水作業は続けなければならない。だが、核分裂生成物がこの水に入り込んで放射能汚染が拡大する悪循環が起きている》

 --この悪循環を断ち切るには

 畑村 すでに悪循環を断ち切るための時間を失してしまった。東京電力にも政府にも時間のあるうちに考える人がいなかった。放射能汚染が広がる前に配管をつなげて新たな冷却システムを取り付ければよかったのだが、もう別のことを検討しなければならない。

 --どうして早くそれができなかったのですか

 畑村 東電が悪いというわけではないが、日本的企業の体質がそこにあると思う。国の基準を守っているから問題ないという東電の考え方は、緊急事態では機能しない。他者に下駄(げた)を預けるような企業文化がそうした考えを生む。今回の原発事故は起こるべくして起きた組織事故、いやもっと大きいから組織災害といった方がいいだろう。

 --今後、日本は原発とどう付き合っていけばいいのですか

 畑村 人類は原発を知り尽くしていない。だからこれからも事故は起きるだろうが、事故を克服して原発を使っていくべきだ。

                   ◇

【プロフィル】畑村洋太郎

 はたむら・ようたろう 失敗学の提唱者で、失敗学会理事長。昭和16年1月18日、東京生まれ。70歳。東大大学院修了後、日立製作所に勤務。その後、東大工学部教授を経て平成13年から工学院大教授。同年に畑村創造工学研究所を設立して代表となる。JR福知山線の脱線事故や六本木ヒルズの自動回転ドア事故など多くの事故を調査してきた。専門は機械設計。』

2011年4月19日 (火)

帝国陸軍の〈改革と抵抗〉  (黒野耐 著 講談社現代新書〉

旧軍には当時の日本にあっては最先端の組織でした。それを時代の流れに応じて改革していくことは現在の日本における各種改革と同様に困難があったようです。改革の成否がその後の日本の運命を大きく変えたといえるようです。

『(改革による近代陸軍建設の成果についての桂太郎の言) 明治18年より23年までの間に経営し、整頓した事業が日清戦争Iおける根底の基礎であった。 およそ社会の事物は日に一日よりも進化するものなり。ゆえに数年の後において当時のことを回顧するときはなんとなくけん焉たらざるの感あるべきはもちろんなり。

この桂の言葉は、世の中の進歩や発展、情勢の推移に応じて一旦完成した優れた組織や制度であっても、たえず改革していくことの重要性を指摘したもの

第1次大戦の調査・・・総力戦、激しい消耗戦。 南北併進策に中国本土への進出が加わり、国家戦略の対象地域は東アジア全域に拡大された。

大正10年頃になると、開戦初頭の攻勢により必要な地域を占領して、長期にわたる自給自足態勢を確立し、この間に所要の方面で決戦を重ねて最終的に勝利するという戦略に収斂された。

改革失敗の要因・・・・なおさら政府首脳との支持が必要であった。そのためには、改革の基礎となる国家戦略、国防像、改革ビジョンを政府・与党首脳と十分に話し合い、かつ説得し、それらを共有する必要があった。この点で宇垣は努力を怠った。

結局、昭和期の改革運動は、国外で満州事変という侵略戦争を起こして国際的孤立を招き、国内では皇道・統制両派の対立抗争の果てに2・26事件というクーデターを生起させて国内を混乱させ、政党政治を圧殺して軍部主導の政治体制を招いただけであった。

明治の陸軍改革は、明確なビジョンのもとにそれを実現する具体的な処施策を準備し、政官軍に絶大な影響力を持つ山県や大山がバックアップし、有能なスタッフが実行して成功させた。

改革には多くの痛みが伴う。痛みがあっても多くの人々の支持を得るためには、痛みの後に到来する改革完成後の組織体の姿を明確にしていくことがもっとも大事』

2011年4月16日 (土)

くじけないこと (アルボムッレ・スマナサーラ著 角川SSC新書)

スリランカ上座仏教長老による著作です。書店でぱらぱら読んでよさそうだったので購入しました。口述をまとめて文書にしているためもあるのでしょうが、私には矛盾していると思われる箇所や宗教家としては世俗に過ぎるのではないかと感じられる部分が散見されます。それでも、いくつかの箇所はなるほどと思いましたので書き留めておきます。

『実際、自分は今の瞬間だけ現実的に生きているのです。何をするにも今の瞬間にしなくてはいけないのです。今の1分より先の1分は存在しない、後の1分も存在しないのです。具体的に存在する、今の1分で、やるべきことをやるしかないのです。それを行わないで、過去のことでできなかったことに悩んだり、将来に関してやらなくてはいけないことを妄想したりすると、今の時間は無駄になります。今の時間を無駄にする人は、人生そのものを無駄にするのです。

「因縁」とは、現実であり、ブッダの教えの中心でもあります。・・・大事なのは過去の因縁ではありません。過去は変えられません。現在の因縁が大事です。それは管理できます。因縁とは、一切を把握している真理です。すべてを知り尽くすことはできないのです。しかし、何があってもそれに相応しい原因があって起きたものだと理解することで十分です。その原因の中でも、現在、目の前にある原因だけを発見すれば、人生を良い方向に進めるように制御することができるのです。

現実的に、存在するのは何なのでしょうか。それは、今の瞬間のことのみです。ということは、私の人生は、『今の瞬間』という一点に絞れます。今の瞬間のことなら、現実的で具体的なものです。この80年間という概念は、実在するものではなく、頭の観念に過ぎないのです。・・このように思うと、80年間の悩み苦しみも期待感も消えて、人生は極限に楽に変わってしまいます。現実とは今の瞬間のみだと知っている人には、悩みに値するものはないのです。失敗する恐れがあることも、やり遂げられない難しいことも、ないのです。

・・自然に守るならば、道徳的な良い人間になるはずだったのに、それが法律になったところで、人間が束縛されて道徳性も失ってしまうのです。嘘をつかないことは道徳です。嘘をついてはならないと法律で定めると、罰則も入るし、道徳性も消えるし、脅しにもなるし、心の自由もなくなるのです。よい人間になるチャンスを国や自治体が奪ってしまうのです。

人間が作るものは、何であっても矛盾が出てくるものです。人間には、矛盾のないものを作ることはできないのです。・・これが積み重なって、社会は今、矛盾にあふれています。「じゃあ、打つ手なしじゃないか」と開き直ってしまうと、先に進むことができません。何をやっても無駄だと判断し、無気力になってしまいます。・・なぜ人は、いつでも綱渡り人生を送っていることを意識できないのでしょう。それは「自分の考えに執着しているから」です。・・人はもとから、危険な綱渡りで生きていると知ることです。そうすれば無知な安心感、保守主義的な気持ちに執着しなくなりますし、心穏やかに判断できるようになってきます。綱渡り状態でいると知ることは、むしろ落ち着いた心理状態を作ることになります。そして、落ち着いた心の状態を作れた人が、人格者なのです。

すべては流れて消えてゆく、はかないものです。それを素直に認めましょう。それに上手に慣れるようにしましょう。自分も流れて消えてゆく。世の中も流れて消えてゆく。世界は無常です。・・無常に納得すれば、楽しみを見出すことも安穏な気持ちでいることもできるのです。・・無理に楽しさを留めようとするのは、変化に逆らうことです。すると、苦しくなります。・・無常には逆らえません。

無常を認める人にとっては、衰えて死んでしまうことも楽しい出来事です。・・すべてが無常であることを知り、楽しみがその瞬間ごとのものであることが理解できれば、すべての変化を受け入れられるようになります。無常を知る人は決してくじけません。

毎日はゲームそのもの・・人生は、やらなければならないゲームだから参加するのです。重要なのはどこまでゲームを進められるかに挑戦すること。ゲームには制約はありません。新しいステージがどんどん現れるエンドレスゲームです。・・人生ゲームには完全クリアはありません。自分が死ぬまでステージを一つずつクリアして進むことです。・・・ゲームは進めば進むほど簡単になるようなものではありません。進むたびに複雑になるのです。・・人生というゲームの場合も、過去のことに足を引っ張られると、今のことができなくて大失敗をする。将来のことに期待を寄せると、また今の人生は大失敗する。過去の経験を生かしているのだから、過去を思い出す必要なないのです。』

2011年4月15日 (金)

人を見抜く技術 (桜井章一著 講談α新書)

プロの雀士の著作です。人を見る目を養う上で参考になる点があると思い、読んでみました。

「情報や知識といったものを詰め込みすぎた人間は、精神が肥大化。 待っているのは精神の破裂。そうならないためにも、ゆっくりと時間をかけて消費していく。量は腹八分で抑える。現代を生きる人間にはそういった自己制御力が必要とされている。

無駄な力みで両手の親指がそる。 大自然の中で生きる人にはいわゆる「癖」が少ない。

性格ではなく、癖を直すべき。(癖の方が直しやすい。癖を直すと悪い性格も徐々に減っていく。)

一部分ではなく、全体を見つつ、過去の動きの残像と照らし合わせて違和感をあぶりだす。それには、まず全体を捉える視力を磨かなければならない。

人を見分ける力、人生において正しい選択をしていくためには、固定観念に縛られること名k、全体を見て判断しなければならない。そういうことを繰り返していくことで人の性格のみならず、ものごとの本質が見えるようになっていく。

緊張感やプレッシャーに弱いということは全て「焦り」からきている。 焦る気持ちをコントロールできるようになれば、緊張感やプレッシャーというのはかなり軽減できるはず。

やわらかい動きは、同じ力を出すにしても、余分な力を必要としないために効率が良く、スタミナ切れもしくにい。 やわらかい動きは次の動きにも入りやすいし、相手の変化にもついていくことができる。

気配を消せば相手の隙をつける。

人間が昔の厚みを取り戻すには、何よりもまず、「額に汗すること」が大切。 手間隙を惜しまず、損得勘定も抜きにしていろいろな物事や人と相対してみること

「縦の線」だけで生活していると、信頼関係がなくなってくる。

ボランティアは自分を救うためにやっているようなところがある。

上に立つ人間にこそ、譲りの精神がなければならない。 譲るべきところは譲ってやる。上に立つ人間はそれをごく自然にできるようにしないといけない。

「無茶」と「無茶苦茶」は違う。 「無茶苦茶」になってしまうと、人様に迷惑をかけたり一人よがりとかいったことが多くなってしまう。 「無茶」をすると普段の自分にはない「火事場の馬鹿力」みたいな力がポット出てくることがある。

「格好をつける」ことは大切なこと。 だが、それだけにとらわれず、内面の格好をつけることも忘れてはならない。

人の気持ちというのは、潮の満ち引きのように満ちたり、引いたりを繰り返している。 人には熱くならなければいけないときと、冷たく冷静にならなければいけないときがある。 どちらがよくて、どちらが悪いということではない。精神のバランスをとることが大切なように心の熱さ、冷たさもコントロールすることが大切。

存在感の幅を広げるには日常生活の中で何事に対してももっと「当たり前」という感覚を持つことが必要。そういう感覚を持ち続け、自分の人間としての間口を広げて対応できる心構えをつくっていけば、存在感というものは自然と滲み出てくるものなのだ。」

2011年4月14日 (木)

わが祖国、中国の悲惨な真実 (陳恵運 著  飛鳥新社)

中国関連本です。経済成長著しい中国の負の部分が垣間見れます。わたしは、中国の隆盛は長くは続かないであろうと思っていますが、破れかぶれとなって日本に害を及ぼさないよう、注視していく必要もあると考えています。

「中国共産党は、裕福な生活とともに、中国の環境、歴史、道徳が全て壊滅という危機を作出した。

文化大革命後復帰した幹部の子女「太子党」の権利濫用が腐敗の始まり

一役人がいくつものパスポートやIDを持ち、横領などで集めた資金を海外へ送金し、犯行がばれたら海外へ逃亡

恐ろしいことに「三峡ダム」についても「中国青年報」は「おから工事」があるという。中小のおから工事は、中国全土にあふれている。

中国では壊れて使えなくなった真っ黒な革靴を原料として、革のかけらなどを混ぜて真っ白な牛乳を合成する「発明」があるのだ。

ホルマリンは死体の保存などに使われる薬品だが、中国では食品をきれいに見せるために使われる。

女真国もモンゴル帝国も清国も、中国の大量の国民を虐殺し、残忍かつ横暴な手段で中国を占領した。現在中国政府は、こういった国が行ってきた侵略を偉業であったとして、大家族の一員に加えた。異民族のこういった侵略と虐殺を認めた共産党は、日本の侵略に対して文句を言う資格がない。

鄭成功が中国人男性と日本人女性から生まれた子供であったことについて、中国政府は公の場では述べない。中国の戸籍の慣例は、子供の戸籍は母親に従う。したがって鄭成功の国籍は日本人なのである。さらに言えば、鄭成功は自分の父親が清国に降参したため、親子の縁を切っている。

康熙帝の孫の乾隆帝時代(1736~95年)に編纂された「欽定大清一統志」にも台湾は「古より荒服の地であり、中国と通せず、・・・日本に属す。」とある。

中国の裁判所は、政府から独立していない。政府の言うとおりに判決を出す。

都市計画のもう一つの被害は、文化財の破壊。もともと共産党は伝統破壊を好む。

人民警察は、改革解放後は一転して「警匪一家」という悪名を被り、暴力団や盗賊と同じと国民にののしられ、強く非難されている。」

2011年4月10日 (日)

野村ノート (野村克也著 小学館)

先日記録した「エースの品格」の前著(約3年前にかかれたもの)です。「エースの品格」の方が良く整理されている感がありますが、こちらの方にもやはり原点ともいうべき考えが熱意をこめて述べられていると感じました。

「一流と呼ばれる人間で親を大切にしないものはいなかった。親孝行とはすなわち感謝の心である。この心こそが人間が成長していく上でもっとも大切なものである、というのが私の持論。

監督としてやっていく上で、5原則に従って職務を遂行

①「人生」と「仕事」は常に連動しているということを自覚せよ。(仕事を通じて人間形成、人格形成をしていくということ)、②人生論が確立されていない限りいい仕事はできないということを肝に銘じておくこと。人間はなぜ生まれてくるのか。それは「生きるため」と「存在するため」である。すなわち価値観と存在感である。その人の価値や存在感は他人が決めるものだ。したがって他人の評価こそが正しいということになる。‘評価に始まって評価に終わる‘と言われる所以である。、③野球をやる上で重要なのは、「目」(目の付け所が大事)、「頭」(考えろ、工夫しろ)、「感性」(感じる力を養え。それには負けじ魂や貪欲な向上心、ハングリー精神がポイント)の3つである。、④技術的能力発揮には「コツ」(感覚を覚える)、「ツボ」(マークすること)、「注意点」(意識付けしておくこと)の3点が重要、⑤無形の力をつけよ。技量だけでは勝てない。

以上を実行するためには、、猛練習でもって基礎体力作りや技術力レベルアップに励み、気力が充実していることが前提。だから、プロフェッショナルは「当たり前のことを当たり前にやる」ということになる。

不確定要素の高いスポーツにあって常に安定した成績を残すためには、やはり原理原則に基づいた実践指導が何よりも大切。だからこそ監督には選手の意識を買える、教育という大きな仕事が求められる。

プロフェッショナルなのだから、野球の専門家になるべき。技術論だけではだめ。ルールも知っていなければいけない。

選手に優位感を持たせることも監督の仕事の一つ。一度選手に植えつけることができれば、それは長くチームの財産となり、その積み重ねが信頼関係を育むことになる。

戦いは「試合」だと強い方が勝つが、「勝負」だとギャンブル性ゆえに弱者でも勝てる要素がある。

技術でどうにもできないときは、心理戦で優位感がもてるようにデータチェックや癖の発見などで作戦を立てること

技術だけで対応しようとした選手を叱ることもあるが、勝負しにいって裏目となったときには絶対に叱らない。管理するものは、絶対に結果論で部下を叱ってはいけない。根拠もなく勝負して負けてくるような選手には、「そんなのは勝負とは言わない。ヤマ勘だろう」と叱ることもあるが、しっかりした根拠があれば何もいわない。相手があることだから、結果が出なくても仕方がない・・勝負=賭けに出ることのない戦い方では、それこそ戦力の差がそのまま結果となり、弱者はいつまでたっても勝つことはできない。

配球の最も大事な要素、それは意識付け。バッターに何かを意識付けする。

(イチローの)「かっこよく野球をやりたい」という意識は、立派な進歩の始まりであり、問題はそれに中身が伴っているかどうか。・・最初は格好が先行していたが、努力することで中身が備わってきて今のイチローに行き届いた。

チーム優先主義というと「譲る」「我慢する」ばかり前面に出されるが、「おれがエースなんだから最後まで投げる」「勝つためにはおれが投げ切る」と自己主張するのも立派なチームスピリットである。

組織の中、チームの中で生きていく以上、自己中心というのは致命傷となる。・・どの道をとったか、何を選んだかという小さな選択肢が、周囲に影響を与え、その人間の評価につながり、そして最終的にはその者の人生を運命付けていく。

仕事をする上で必要なこととして3つの能力、「問題分析能力」「人間関係能力」「未来創造能力」がある。・・チームというのは生き物である。日々変化していくチームの未来をどうやって作り上げていくか。そこを無視してしまうとチームはいつか崩壊することになる。

いい選手を9人集めるのではなく、9つの適材適所のあわせて選手を集め育成する。そのスタート時点が誤っていてはいいチームは作れない。

監督業というのは、こうやって人を作り、何かを気づかせ、そしてそれが組織に反映されるのを待つしかない。成長がなければ、やはり人間の根本の部分に欠点があるわけだからもう一度人間教育を繰り返す。結局この繰り返しでしかない。

(トレードの交渉のため)指定された赤坂の料亭に行くと、座敷に長嶋がいて驚いた。川上さんからは「彼はいずれ巨人の監督になるから、トレード交渉というのはどういうものか見せてやりたい。だから同席させてくれないかね。」といわれた。もちろん私は了承した。当時の巨人はそういった継承がしっかりできていた。それが巨人の伝統であり、だから他球団が入り込む余地がないほど強かった。

不思議なことに、ある球団で4番らしい活躍をしていた選手でも、巨人のような4番打者がずらりと並ぶチームに移籍して3番を打たされたり、5番を打たされたり、6番、7番に下がったりしていると、だんだんその程度の打者に変わってしまう。まことに不思議であるが、まさに「地位が人を作る」である。

指揮官、リーダーについて、常に以下を念頭においている。①リーダーいかんによって組織全体はどうにでも変わる。②リーダーはその職場の気流にならなくてはならない。(まさに自分が率いる人間を巻き込むことができるかどうか。ひとりひとりに仕事の意義を感じさせ、奮い立たせる。)③リーダーの職務とは「壊す、作る、守る」(信長〔旧価値社会の破壊〕・秀吉〔新価値社会の建設〕・家康〔既存の事業のローリングによる維持管理〕の3つの作業を組み合わせられるか。)リーダーは「目的意識、達成意識をみんなが持ち続ける」まとまりにチームが機能する軸をおかなければならない。」

2011年4月 9日 (土)

経済ニュースが10倍よくわかる 日本経済のカラクリ (三橋貴明著 アスコムBOOKS)

今日は、経済関連の書籍について書き留めます。

「○なぜ今日本は円高か

世界中で投資家が買うもの、投資先がなくなった。・・相対的に円を買う魅力が増している。・・日本ではデフレが続いているため、金利はほとんどつかなくとも「お金の価値」は上がり続けてしまう。・・日本のような大きな経済規模でこれだけのデフレになれば円の価値はどんどんあがっていく。・・表面上は低金利の日本円が、実質的には金利が高いことになってしまう。

為替介入→国の借金を増やすこと・・・効果を求めるならば、そもそも各国との協調介入でなければならない→無駄撃ちの為替介入などせずに財政出動して国内に金を回すべき・・・政府は借金をして需要を呼び起こし、インフレにしてごまかし続けるのが仕事だといってよい。

結局、昨今の急激な円高の本当の原因は、日本のデフレ。少子化の根本的な原因もデフレ(給料が上がらず、将来的にもあがる見込みなければ結婚・出産のインセンティブは働かない)。社会保障、とりわけ年金問題の根本も過去に経済成長率を高く見積もりすぎたこと。3~4%の経済成長が実現できれば、国の借金も、デフレも、少子化も、社会保障問題も、そして円高も解消できる。

「日本は破綻する」などのミスリードにまんまと引っかかる理由は、企業や家計と、政府を一緒くたに考えてしまうことにあると思える。・・政府には通貨の発行権がある。また、永続する存在である、死んでしまう個人の家計とは異なる。→問題解決には、金利とインフレ率を見ながら国債を発行すれば済む話。デフレにおける顕著な現象は、本来的に日本経済が持つ供給能力に対し、需要が少ないこと。→単純化したデフレ対策は公務員を増やすこと。

民主党の政策は経済成長を前提においていない。一回限りのものばかり。社会主義とも異なる。一方的に国民にお金を配るだけというのは、選挙対策に過ぎない。・・・デフレの今もっともしてはならないのが増税。

○日本の競争力は落ちているのか

国家経済の目的は、国民にモノやサービスを滞りなくいきわたらせるための生産能力や供給能力を、未来永劫維持すること。・・・国同士のモデルが異なるのだから、比較などそもそも不可能だし、無意味。・・格付けなどというものは定量的には説明できない。経常収支黒字国と赤字国では同じ借金でも全く違うことを理解しておくべき。・・ギリシャはユーロに加盟しているため為替の問題が発生しなかった。これが現在のユーロが抱えている最大の問題でもはや解決不能。

アメリカはガリバー国家だから、基幹技術をまるごとなくすということができた。残っている自動車産業にしても自動車を売ることで儲けていたのではなく、自動車ローンの金利で商売していたに過ぎない。

自動車、家電、半導体、通信、建設、原子力、こうした産業がすべてそろっている国、機関技術が企業ごと残っている国は世界に日本しかない。

本来の企業の競争力とは、ある程度の市場規模がある国内で、企業同士が地獄のような競争をして質を高めることにより作り出されていくもの・・日本の企業の競争力は非常に高いはず・・これから商品本来のスペックで競争し、各社がオリジナリティで勝負しなければならず、それを得意とするのは日本企業

日本の本来の問題は、国内の投資不足。稼いだお金を使うところがない結果、ひたすら貯蓄が膨れ上がってしまった→公共投資をすれば、経済は成長する。・・・本来政府の公共投資に効率や利益を求めてはいけない。利益が出ることは民間がやればいいだけ・・公共投資について、みんなが必要だと思うか、将来の日本国民の幸福につながるかどうかだけが問題・・・(一案)リニアモーターカーをぜひ実現して欲しい、その事業あるいは資産から、ものすごいビジネスが生まれる。・・・利権をむさぼるのは悪事、しかし、公共事業そのものは悪でもなんでもない。・・そもそも国家が心配しなければならない『国の借金』とは、対外負債、外国からお金こそが本当の「国の借金」

欧州の緊縮財政は誤り。アイルランドなどのバルブの国々は、財政黒字が多いという事実。バブルが崩壊し、民間の投資が急減速する中で、政府まで緊縮財政をとってしまえば、GDPは急降下するに決まっている。・・ユーロ安は輸出国ドイツの経済にとっては千載一隅の機会。ドイツは貿易黒字を積み重ねる一方で、ギリシャなどの経常収支赤字国には、赤字(対外負債)がどんどん積み上がっていった。・・ドイツは緊縮財政至上主義国→欧州経済全体に大きなマイナスとして働いている。

○グローバル化は歴史の必然か?

日本メーカーの場合、1億3000万人近い人口がいる巨大な国内市場でもまれにもまれ、叩かれに叩かれて磨き上げた製品だからこそ、海外でも売れたのだ。・・企業の儲けの源泉は差別化であって、標準化ではない。また、日本企業の強みは、同じ言語、同じ価値観で社員が密なコミュニケーションをとれること。・・グローバル化で平均給料が減るというのは、世界的な流れ。日本も例外でない。これこそがグローバル化の最大の問題。→グローバル化など大間違い。・・国民が幸せになれないのならば、グローバルスタンダードなど捨ててしまえばよい。→大国の進む道は保護主義化しかない。その兆候は、すでに現れている。→(日本の場合)消費者が自らの知恵で市場競争を維持し続ける。「世界最悪」な市場でもまれた技術を育て、保存し、より高める努力を続けなければいけない。・・・結局、経済とはモノ作りであり、サービスの提供。供給能力を研ぎ澄まし、拡大することが国民経済の本質。

銀行は国内からお金を集め、国内の企業に貸し付けることこそが仕事。銀行のお金とは、要するに国民の預金、資産。

現在、外国人が東京市場で閉めている保有割合は3割に満たないが、売買ベースでは6~7割になってしまっている。彼らの多くは、企業業績とは関係なく、為替差益目的で、円高になったら自動的、機械的に売るような投資をしている。

サービス業にはグローバル化する価値がある。最も競争力があると考えられるのは宅配便。進出する国の水にあうと思うのなら、グローバル展開すればよい。

農業もグローバル化するべき。日本の農産物輸出は、競争力がないとか、知名度がないという以前に、全く未開拓、未踏のフロンティア。・・・農村部の人口が減ってしまうという反論する人もいるが、労働人口が減るとその地域の生産性がますます高まるだけ。根本的な問題は、農業に産業としての魅力があるか、儲かるかどうか。

○本当にサムスン、現代に学ぶべきか?

ガリバー企業が得をしているということは、誰が損をしているのか。それは、安い給料で使われている従業員であり、高いモノを買わされている消費者、すなわち韓国国民である。日本では、競争が激しく、それゆえに消費者が得をする社会。・・・韓国は、国民一人当たりのGDPも人口も日本の半分以下で市場規模が小さいため、国内市場だけでは食べていけないため仕方がない。しかし、市場の構造が全く異なる日本が、韓国のまねをする必要などどこにもない。

企業の国際競争はオリンピックではなく、企業の繁栄は、国民の幸福と関係ないケースが少なくない。・・・ガリバー企業が栄華を極める中で、韓国国民はいまだに豊かと言えない。国民一人当たりのGDPは日本の半分以下。韓流スターは国内では食べていけないから日本に続々と進出。さらに過激な例では、東京の鶯谷などに韓国デリヘルと称する風俗店が山のようにあり、そこで働く女性には、激しい受験戦争を勝ち抜いた大卒の人が多い。・・韓国は表向きはともかく実質的な失業率が高い(12.6% 聯合ニュース(2010.1.6)→韓国メーカーがグローバルで戦うということは、決して韓国国民を幸せにはしない。

韓国の輸出依存度は43.64%、輸入依存度は38.79%。ウォン安は輸出企業には確かに追い風だが、国民はたまったものではない。この点、日本は輸出入依存が低い。(輸出依存度10.71%、輸入依存度9.86%)。日本の輸入の中身は半分が工業用原料、つまり資源。資本財は自国で作ってしまう。これに対し、韓国は日本製の部品や工作機械などの資本財を輸入。

韓国が資本財を作れない理由や、ガリバー企業が生み出された理由は1997年のIMFショック。経営が悪化した財閥グループが解体される過程で、真ん中の部分が抉り取られてしまい、残されたのは最上位の輸出メーカーのうちごくわずか。韓国政府は生き残りをかけ、彼ら輸出企業の育成に力を注ぐしか選択肢がなかった・・・気がつけば、韓国内の資本財メーカーは完全に弱体化してしまった。

日本は血に染まったレッドオーシャンにおける戦いをやめてはいけない。世界一厳しい日本市場で切磋琢磨し、オリジナリティあふれるものを作り出す。その上で評判の良いものを輸出するという流れでなければならない。

日本の内需はまだまだ伸びる。フローに回らないお金が多い以上、内需が拡大の余地、伸び城がまだある。お金を使いたくなるような状態になればいいだけの話。政府はそのために環境整備をするべき。

○日本の生産性は低いのか?

アメリカ経済は今も昔も不動産で成り立っている。。今回のバブルは、不動産と金融工学が癒着したことが原動力。

BRICS諸国でまともなのはブラジルだけ。中国・インドは人口が多すぎ、食べさせていけなくなるので期待できない。ブラジルの経済はバランスがいい。貿易黒字、内需が強く、資源もある。問題点は国内が多様で日本のような単一マーケットでないこと、貧富の差が極端に激しいこと。

日本の物流効率は世界トップクラス。地味だがとても大切な要素。→都市部に製造業が残っている。・・・都市部に製造業が残る国は繁栄し、都市部から製造業が逃げた国は衰退することは歴史が証明・・地方は、東京には不可能なこと、その土地でしかできない産業を自ら開発するべき。

アメリカのホワイトカラーは金融産業によるレバレッジのカラクリで生産性が高く見えただけ。見かけ上、日本のホワイトカラーの生産性が高かろうが、低かろうが気に留める必要なし。

○なぜ人民元は買えないのか?

中国には、温家宝首相が認めたとおり、2億人の失業者がいる。

中国の先行きは暗い。まず、人口が多すぎる。国内には複数の勢力争いがある。食料品などは安いものの、資源価格が跳ね上がっている。

不動産バブルを起こさずに経済成長するには個人消費の拡大が欠かせないが、そのためには人件費をしっかり上げる必要がある。また、人民元高を認めなければいけないという二つの重しがある。

問題の本質は、いうまでもなく、中国の人民が相変わらず貧乏なこと。・・中国は袋小路に入りつつある。国民所得が低く、国内における技術や産業蓄積が少ない。なにしろ中国の輸出のうち、外資系企業によるものが50%を超える。今後の中国は中途半端に歪んだ成長を達成し、国民の所得が高まらないという厳しい条件下で高齢化社会を迎えなければならない。高齢化の影響は、早ければ2013年くらいに出てくるだろう。中国はまるで明治維新から平成までの日本経済を4倍のペースで駆け抜けたかのようだ。そして、中国は先進国になれないまま、高齢化という袋小路に突き当たっていく可能性が高い。

今後、公共投資で何とか成長させつつ、失業者を押さえ込み、ごまかしながらやっていくしかない。

中国もグローバル経済のわなにはまってしまった国の一つ。国が豊かになることによって個人消費が増えるのではなく、むしろ投資の比率だけが増えている。高成長を求めるあまり、歪んだ成長を遂げてしまった。」

2011年4月 7日 (木)

黒川伊保子女史

本日は、(株)感性リサーチ代表取締役の黒川伊保子女史の記事から何箇所か書き留めます。人間の脳は、50歳代半ば以降が最盛期という、中年にはとても励みになる考えです。私自身、女史のお話は正しいのではないかと思って、励みにしています。

「ヒトの脳のピークは、50代半ばにやってくる。知力の大団円である、連想記憶力が最大限に使えるようになるからだ。連想記憶力は、本質を見抜く力、人の資質を見抜いたり、トラブルを未然に防いだり、戦略に強く関わる能力である。

実は、50代の脳というのは、世の中の事象のうち、自分の脳に適合する事象にしか反応しない、いわば「手抜き脳」なのである。ただし、手抜きこそが本質にいきなりたどり着くために欠かせないことなのだ。

50代の脳は、長いプロ人生を過ごすうちに、「とっさに良く使う回路が厳選され、より洗練された状態」になっているのである。

ヒトの脳は、15歳から20代終盤までが、単純記憶力の最盛期だ。さらに、動物的な直観力の最盛期でもある。この次期は、外からの刺激に俊敏に反応でき、とにかく、たくさんの情報をキャッチできるし、長くキープしていける。

このため、20代の職能教育は、「四の五の言わずに、これをやれ」と押し付けてやるのが最も親切で合理的。

30代の脳は、混迷を極める。ものごとの裏も表も見通せる、物事を見る視点がとりそろった30代の脳。しかし、その「見え方」には優先順位がついていない。つまり、選択に迷うし、いったん選択しても「他に、もっといい手があったかも」とまだ迷う。この決定打が腹に落ちてこない感じは、神経系を疲弊させる。

30代に、あれこれ経験しつくして痛い思いもし、くたくたになって絶望しなければ、惚れ惚れとするような50代にはなれないのである。30代に逃げ癖、あきらめ癖をつけると、後の人生でそのつけを払うことになる。

30代を生き抜くこつは、「逆境や失敗にめげないこと」である。自分の脳が失敗体験を積むために生きていることを知れば、かなり楽になるはずだ。

40代の脳は、すべてが見通せて優先順位のつかない30代の脳から、必要なものしか見えない50代の脳への移行期にあたる。少しずつ見える範囲が狭まってくる。

物忘れの進行とともに、迷いが減り、生きるのが楽になってくる。本人は、タフな働き盛りを実感するはずだ。」

2011年4月 6日 (水)

新聞記事から

今日は、過去の産経新聞に載っていた、インタビュー記事の中から心に残ったものを書き留めます。まず、江崎グリコの桑原さんのインタビューです。こちらは、年齢をとってからでも、身体を鍛えれば進化させられることを知り、勇気をもらうとともに、トップアスリートが常に前向きであることを知り、自分も見習おうと強く感じました。若手レーサー小林可夢偉さんについては、恥ずかしながら全く知りませんでしたが、このインタビューを読み、やはり只者ではないと感じました。特に平常心についてのコメントは、私も武道を嗜んでおりますので分かる気がしますが、正に彼のいうとおりであろうと感じました。若いのによくここまで到達しているものだと感服しました。

「江崎グリコ・スポーツフーズ営業部長 桑原弘樹さん
くわばら・ひろき 昭和36年4月生まれ。59年、江崎グリコ入社。平成11年に同社のサプリメントブランド「パワープロダクション」を立ち上げ、全商品の企画、開発に携わるほか、講演会や雑誌の連載など幅広く活動。全日本プロレスのコンディショニングコーチや日本水泳連盟の栄養担当講師なども務める。名古屋市出身

 そんなとき、病床のテレビで、今通っているジムの会長で、日本人で唯一ミスターユニバース(ボディービルの世界選手権優勝者)に輝いた杉田茂さんという方が「30代、40代はまだひよっこや」と話しているのを見たのです。筋肉は40代半ばから本当に強くなるという意味だったのですが、その言葉がうれしくて。「ああ俺もこれからだ」って思えた。でも、いきなり門下生になる勇気はなくて、最初は近所のジムに行って身体を慣らして。再入院したこともあり、杉田会長のジムに入れたのは38歳ぐらい。本格的にボディービルを始めたのはそこからですね

 年齢のせいかもしれないけど、昔より今の方がやさしくなったような気がします。ガリガリのころは、向こう気だけが強い若造だったという印象がありますから。

 ウエートトレーニングって、常に自分の限界と向き合っている世界なんです。100キロのバーベルが上げられるようになったとしても、110キロは上がらない。だから、謙虚にならざるを得ない。でも、100キロが上がったときの喜びは間違いなく自信になる。謙虚さと自信、本来は二律背反するものを同時に学ぶことができる。若い人にはぜひ勧めたいですね。

 筋肉は何もしないと加齢とともに落ちていく。でも、一定の負荷を加え、きちんとした栄養、休養をとれば、50、60歳でも進化する。僕も40代最初の年と最後の年では今の方が全然上。この流れは止めたくない。年をとるんじゃなくて、年を重ねる、と。

 今後の人生でどうありたいかというと、70、80歳になったとき、「50代が桑原の肉体のピークだった」と思いたい。それが51歳か59歳なのか分からないが、かならず50代のうちにピークを作る。49歳の僕はまだまだなんです。

 僕と同年代のほとんどの人は、これから自分が衰えていくと感じていると思うんです。でも「そうじゃないんだよ」って。僕がかならずそれを証明します。勢いだけでなく、自信もあります。

 (トップアスリートとの交流で学んだことを聞かれて)

 桑原 超一流と一流、一流と二流、あるいは技術、実力は一緒でもチャンピオンになる人、なれない人には何か差があります。言葉ではうまく表現できないのですが、一つ言えるのは、超一流の人はポジティブな人が多い。楽観的というか。調子が悪かったり、悲しかったり、どん底の時に何を言うか。超一流の人からは「俺だったらこうは言えないな」という言葉が出てくるんですね。

 朝ご飯をいかにたくさん食べるかというのは結構大事。僕の立場から言うと、一杯だけでも朝食後にプロテインを飲むとさらに充実する。さらに、晩ご飯を絞ると、グッと一日の食生活が改善します。

 その上で、日々の中で、楽しい言葉を口にするのをくせにする。一流のアスリートには、そういう人が多い。言葉は力を持っている。自分が吐いた言葉は自分が一番そばで聞いている。無理矢理でも明るい、楽しい、前向きな言葉を発していれば、人生が変わるような気がします。」

「小林可夢偉

 こばやし・かむい 昭和61年、兵庫県尼崎市生まれ。24歳。9歳でカートを始め、平成12年、全日本ジュニアカート選手権チャンピオン。17歳で渡欧、GP2など国際レースで活躍。一昨年、F1デビュー。昨年からBMWザウバーの正ドライバーとしてF1にフル参戦。

--最終周で7位をもぎ取った第9戦ヨーロッパGP、ヘアピンカーブを利用して5回も追い抜きを見せた第16戦日本GPなどは、ファンの目をくぎ付けにしました。前に車がいると燃えますか?

 可夢偉 いいえ、まったく。平常心です。逆に平常心じゃないとできない。

 可夢偉 集中しようとすると失敗するんです。平常心。映画なら1、2時間、集中しようなんて思っていなくても勝手に入ってくるでしょ。同じです。なんで集中力が切れるかというと、集中しようとするから。そのエネルギー自体が無駄です。

--結果の悪いレース後、気持ちの切り替えは?

 可夢偉 飲みます。思いっきり楽しむ。冷静になったときに「こんだけ遊んだから仕事、頑張らなあかん」って思うわけです。

 --2年目の今年は真価が問われますね

 可夢偉 大事な年。僕にとってもチームにとっても。F1では「才能」「実力」はあって当たり前。あとは…「お金」という人もいるけど「運」かな。全てがそろわないと生き残れない、厳しい世界です。

 --24歳。まだこれからです

 可夢偉 これからは僕らの世代が活躍していかなければならない。まず、自分の意志に自信を持つことが大切。格好悪いとか思うんじゃなくて。「当たり前」なんてことは、この世の中にはないんです。何でも変えられる。結果を出せばいい。結果を出す勇気があるかないかの問題だと思う。

 --よく「子供に夢を与えたい」と語ってますね。「偉」大な「夢」を「可」能にしている先輩から、子供たちにメッセージを

 可夢偉 自分の好きなことを「やりたい!」って主張して、実行してほしい。それに「最近の子供は夢がない」なんて、子供のせいにしたらいけません。チャレンジできる環境を、大人がつくっていかなければ。子供に夢を与えることが、本当にこれから日本が元気になっていく道だと思います。」

2011年4月 5日 (火)

新聞記事

本日は、朝日新聞の記事で目に留まったものを記録します。米軍の無人機についてです。日本も少子
高齢化でこれからは、無人機、ロボット兵器を導入していかなければならないと感じています。
その流れの中で、国際法がどのように整備されていくかですが、おそらく、米国は自分たちが無人
機による攻撃を受けるようになるまでは国際法改正には乗り気でないでしょうから、改正はされな
いでしょう。日本は無人機・ロボットを導入する際には、真剣に国際法整備を考えて、米国との関
係を維持しつつ国際社会に訴えていくことが、国際社会における今の地位を維持し、大きく貢献で
きる道となるでしょう。


米ブルッキングス研究所 上級研究員 ピーター・シンガー氏へのインタビュー

『-米国の無人機は、どのように操縦されているのか。
「米本土からの遠隔操作だ。モニター室に操縦者ら2人が座っている。操縦者は戦闘機などの実戦
経験者だ。上層部も画面を見て指示を出せる。」
-無人機導入で軍人の負担に変化はあったのか。
「無人化で戦争が簡単になったと考えがちだが、そう単純でもない。米本土で遠隔操作する操縦者
も、戦地の兵士と同様か、より深刻な心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患うケースもある。」
-それはなぜか。
「無人機は長時間飛行が可能で、操縦者は工場のようなシフト勤務だ。勤務後、息子と学校の話を
しながら夕飯をとり就寝する。翌朝は戦闘に戻る。妻は夫の任務を知らず、平時のように接する。
戦闘と家庭、この両極対の繰り返しを一日で体験する。人間は急激な変化に耐えられないようだ。」
-無人兵器導入に当たり、何が必要なのか。
「国際法を修正する必要があるだろう。ジュネーブ諸条約など現行の戦時国際法は、人間同士の戦
いが前提だ。無人機が標的ではない人を誤って殺したら、責任の所在は操縦者か、指揮官か、導入
した政治家か、プログラムミスをした科学者か。
また、人的リスクが減れば、国家の軍事介入のハードルも下がるのではないか。政治、倫理、力の
概念・・・。新技術は、人類に新しい難題を突きつけている。」


2011年4月 3日 (日)

エースの品格 一流と二流の違いとは  (野村克也著 小学館)

久しぶりに本棚から取り出して読みました。大変示唆に富んでいました。

○小事、細事が大事を生む。 逆説的には、小事が大事を失わせる。

○仕事を通じて人間は成長し、成長した人間が仕事を通じて「世のため人のため」に報いていく。それが人生というもの。この世に生まれてくる意味

○欲から入って、欲から離れる。人生最大級のチャンスが目の前にぶら下がったとき、その心の切り替えができるか否かで明暗が分かれる。

○勝負の世界は変化をいち早く察し、先んじて改革したものが圧倒的に有利。早期に小さな変化に気がつけば、やがて訪れる大きな変化に対応できる。

○他者と自己の「差」を認め、それをもとに独自の道を模索していくこと、そして変化することを恐れず、勇気を持って行動していくこと・・・これがプロの資質

○人を育てるということは自信を育てるということ。どのように接し、いかなる言葉を投げかければよいかは、相手次第。教えるということはある程度答えを出して導いてやらねばならない。人を教え導くための基本には愛情がなければいけない。愛情なくして信頼関係は生まれないし、信頼がなければ組織そのものが成り立たない。「情」をもって「知」を引き出し、「意」へと導く。その流れができてこそ教える側と教えられる側の理想的な関係が築き上げられる。

○コーチ:教える前にまず選手にやらせる。人は失敗して初めて自分の間違いに気づく。選手自身の知識欲、向上心が最高潮に高まったときを見計らい、コーチは集中的に指導を行うべき。さらにいえば、事前に選手たちをよく観察すること

○力には、体力、気力そして最も重要な知力がある。そのすべてが充実してこそ、真の力勝負というものが生まれる。

○センスは、「感じる」「考える」ことで磨かれる。監督やコーチは「気づかせ屋」であり、本人にその資質が認めれらた場合は、その努力に対してプラス思考のアドバイスを送る。

○「プロセス野球」結果よりも過程に重きをおく。結果が欲しければ欲しいほどそこにいたるまでの内容を第一義的に考えなければならない。

○思考が行動を生み、習慣となり、やがて人格を形成し、運命をもたらし、そして人生を作り上げていく。

○「背中が教えてるやろ。」ピッチャーの後姿を見つめながら、福本は一言こう言い放った。牽制してくるか、投球するのか背中をみていれば分かるというのだ。「頂点に立つものはここまで言えてしまうのか」と感心させられたものである。観察力を研ぎ澄ませば、人の感覚とはここまで鋭敏になる。 感性によって人の潜在能力は驚くほど引き出される。

○「個人成績をアップさせることがチームに貢献しているのだ」という考えは間違いではないが少しずれている。「チームの勝利に自分はどう絡めばいいか」が正しい。

○変化球はスピード不足とコントロール不足を補い、あるときは配給を複雑化して狙いだまを絞りにくくする。それがピッチャーが変化球を投げなければならない根拠。 配球には表と裏の2種類がある。これを臨機応変に使い分けることで相手を翻弄するわけだが、基本は表の配球にあることを忘れてはならない。

○(持論)「組織はリーダー力量以上に伸びない。」「中心なき組織は機能しない。」・・・「組織の中心となるべき選手」はチームの鑑でなければならない。人の手本となり、組織に強い影響を与えていくことは相当の覚悟を必要とする。損得でいうならば、それを損であると考える者もいるであろう。・・・しかし、人間の真の価値は損得を超えたところにある。「個」のわくを乗り越えたところにこそ、本当の生きる喜びがあると、私は信じている。

○「満足、妥協、限定」はプロ野球選手にとって三大禁句。 「限定人間」ばかりの世の中になったら日本という国も衰退していくばかりである。

○「世の中には、物が見えない人が千人いれば、見える人も千人いる。」(草柳大蔵)

○「やさしい、難しい、どっちも本当だ。しかし、難しい道を踏んで踏んで踏み越えて、真に難しい苦悩をした者だけが本物だ。」(吉川英治)

2011年4月 2日 (土)

雑誌記事の備忘

本日は、「ブルータス2011年2月1日号」の記事から印象に残ったものを書き留めます。

(前略)80歳を迎えて死を身近に感じ始めたのだろうか。
「まったく逆だね。若いときは死ぬことを考えたけど、年をとるにつれて死について考えなくなった。死を恐れなくなったんだね。人生は神から与えられたギフトのようなもの。自分の仕事を楽しめて、日々何かを学ぶことができたら、人生はそれでOKなんだ。引退なんて考えたこともないよ。大昔に友人が『70代になったら何でも好きなことができるぞ。他人がとやかく言うことも気にならないからな。』って教えてくれたけど、そのとおりになったよ。自分の人生に疑問を持ったり、悩んだりするのが馬鹿らしく思えてくるんだ。」
「男らしい男というのは、壁を殴って穴を開けたり、怒鳴り散らしたりしない。自分に自信がある男はタフさを人様に宣伝する必要がないんだ。自信を持つにはどうしたらいいか?自分でいることが心地よく感じられる『コンフォートゾーン』を20代から30代後半までに見つけることが第1歩。その後、40代以降の男盛りの時期に向かって成長していくんだけど、人生のいろいろなステージでさまざまなゾーンを発見していかなきゃならない。」
 ちなみにクリントが「男の中の男」と絶賛するのは50年代に活躍したボクサー、ロッキー・マルシアーノ。全盛期のヘビー級チャンピオンと握手したクリントは、そのソフトなタッチに驚くと同時に、「この拳でいつでもお前をノックアウトできるんだぜ」という暗黙のメッセージを感じたそうだ。クリントが言うところの「弱虫ジェネレーション」ではもはや存在しない男らしさなのかもしれない。
「今の時代を僕は、『弱虫ジェネレーション』と呼んでいる。いじめが問題になっているけど、メンタルやトラウマがどうのこうのと言うばかりだ。僕らの時代はいじめっ子に立ち向かったもんだよ。相手が年上で力が強くても戦意を見せれば一目置かれて、その後は放っておいてくれた。僕の13歳の娘はインターネットやSNSに夢中になっている。技術の進歩は素晴らしいけど、若い子達が人間的なコネクションを見失っているのは悲しいね。」(クリント・イーストウッド)

あと何年生きられるかを常に考え行動する(池波正太郎)

冠婚葬祭には万難を排して出ることにする(城山三郎)

着飾っても中身は骸骨、無差別平等なり(一級宗純)

交渉は厳しいときほどウィットに富んだ話で切り抜ける(吉田茂)

それほど面白くない仕事も、期待以上のものに仕上げる(阿久悠)無駄な抵抗に過ぎないとしても、彼は期待以上のものにすることを仕事の姿勢にして貫いた。

肉体労働はやめない。教授の椅子を用意されても。「魂は、同時に二つの方向に引っ張られることによって、生産的に働くのかもしれません。」(エリック・ホッファー 季節労働者として、あるいは港湾労働者として働きながら自分の生きる時代を分析しながら、「沖仲士の哲学者」)

強さを見せ付けて勝ち、「名前勝ち」ができるほどになる。(中部銀次郎)

服によって目立たないことこそ真のダンディズム(ジョージ・B・ブランメル)

2011年4月 1日 (金)

私の履歴書 安藤忠雄 日経新聞3・31

本日は新聞の記事の中で、心に強く残ったものを書き留めます。

 正しい価値観で物事を決めることができず、国際社会で立ち遅れている今の日本と子供の教育を取り巻く状況は決して無関係ではない。
 私は自分で生きる力を身につけなければならないという思いを人一倍強く持ってきた。だから、自分の意思が希薄で、人と直接ぶつかり合おうとしない、真の弱い今の若者や子供を見ていると、日本の将来に強い危惧の念を覚える。
 人間性を育む教育を行い、自分なりの価値観を持つ「自立した個人」をつくり、家族や地域への愛情をもった日本人の国民性を回復しなければ、未来は見えてこない。
 フランスの詩人ポール・クローデルは同じく詩人で友人のポール・ヴァレリーに「私はこの民族だけは滅びてほしくないと願う民族がある。それは日本民族だ」と話したという。その日本は存亡の危機にある。今こそ第3の奇跡(注)を起こすべく、日本は真に換わらなければならない。 (注:明治維新、敗戦後の復興に次ぐ第3の奇跡)

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